15 / 23
学園生活+冒険者活動
12
しおりを挟む
ウカノが通されたのは、この冒険者ギルドのギルドマスターがいる部屋だった。
執務室である。
ギルドマスターは、受付嬢から話を聞き、ウカノを見た。
顎髭が特徴的な大柄な男性だ。
「ダークドラゴンを倒した、ねぇ?」
ジロジロと値踏みするかのような視線を向けられる。
正直に話した方がいいと判断して、ウカノは嘘をついた理由も含めて洗いざらい説明した。
説明が終わると、ギルドマスターから質問が飛んでくる。
「どこで、そんな強さを手に入れた?」
「……さぁ?
家の手伝いしかしたことないので、なんとも」
「ふざけてるのか?」
「本当のことです。
話すべきことは話しました。
嘘だと思うなら、そう思ってもらって結構です」
「…………」
「お話はしました。
もういいですね?
それじゃ、失礼します」
ウカノはさっさと部屋を出ていこうとする。
しかし、呼び止められた。
「まぁ、待て。
農業ギルドの方だとどうか知らんが、冒険者ギルドは基本実力主義なんだ」
「はあ?」
ギルドマスターの言葉の意味をはかりかねて、ウカノはそう返す。
「とりあえず、お前の実力を知りたい。
結果によっては、一気にAランクになることも可能だ。
受けられる依頼も増える」
「興味ありません」
そもそも冒険者として活躍したいとか、そんなことウカノは思っていなかった。
だから、Aランク冒険者になれるかもしれないと言われても、興味すらない。
「じゃあなんで、冒険者として登録してる?」
「身分証の予備としてカードが欲しかっただけです」
「馬鹿にしてるのか?」
「嘘を言っても仕方ないじゃないですか」
睨まれるが、ウカノはどうでもいいと思っていた。
あくまで身分証の予備が欲しかったのはその通りなのだから。
もしもこの態度が原因で、冒険者資格を剥奪されるならそれはそれで気にならない。
元々、冒険者として登録をするよう薦めてきたのはエリだった。
ウカノとしては、軽い気持ちでそれに従っただけだ。
「……冒険者活動は遊びじゃないんだ」
「知ってますよ。
稼がなくちゃいけませんもんね」
淡々と返した直後、ウカノの声が低くなった。
「だから、稼ぎにならない農家や村の依頼は、どれだけ出しても無視し続けられてきた。
いつだって、切り捨てられるのは弱い方ですからね」
声は低いけれど、その顔は笑顔だ。
「なにが言いたい?」
一気に剣呑な空気になる。
ウカノが、さらに言葉を続けようとした時、バタバタと部屋に駆け込んで来る者がいた。
ギルド職員だった。
「大変です!!」
部屋にいた三人の視線が、その職員へ注がれる。
「今すぐ、受付に来てください!!」
何かトラブルが起きたのはすぐに察せられた。
ギルドマスターと受付嬢は、部屋を飛び出していく。
それに職員が続いた。
最後に、ウカノが部屋を出る。
受付に行くと、さっきとは打って変わって騒がしかった。
受付台を背もたれに、カタカタと震えている人間がいた。
老婆と青年だった。
受付嬢達が話を聞いている。
「西にある街から来たらしいッすよ、あの二人。
なんでも、乗り合わせた馬車が、途中で盗賊に襲われたとか。
おばあさんは、孫娘を。
あっちのお兄さんは、婚約者をそれぞれ奪われたらしいっす。
二人は命からがら、逃げてきたとか」
そう説明してきたのは、ライドだった。
「……衛兵に通報は?」
「お役所は動くの遅いっすからねぇ。
それに、王都が襲われた訳でも貴族の馬車が襲われたわけでもないし。
それより、冒険者の方がフットワーク軽いっすから」
「なるほど、それで冒険者ギルドに駆け込んできた、と」
「賞金首を専門に討伐する冒険者もいるっすから」
「馬車を襲った盗賊は有名な賞金首なのか?」
「そこを今、受付さん達が詳しく聞いているところっす」
ちらり、とウカノはその場を見回した。
何人か、目を輝かせている冒険者がいた。
おそらくその者達が、賞金首を狩っている冒険者なのだろう。
「ふーん」
ウカノは適当に返して、入口へ歩いていく。
ライドがその背を慌てて追いかける。
「え、ちょちょ、どこ行くんすか!?」
「どこって、帰るんだけど」
「帰るって、この状況で?!」
「賞金首の討伐依頼受けられるのって、Cランクからじゃなかったっけ?
俺、Dランクだから」
「え、えぇ~??
ダークドラゴン倒したのに?
さっきギルマスと話してたのも、その功績を認められての昇級の話だったんじゃ」
想像力豊かな金髪だな、と思いながらウカノはパタパタ手を振った。
「違う違う」
「それだけ強いんだから、この依頼を受けてもいいんじゃ」
「まだ依頼出されてないでしょ」
「そうですけどぉ」
「それに、俺、やることあるし」
「やること?」
「除草剤と噴霧器買うの忘れてたから、買わないと」
「……はい??」
「あとキュウリも植えたいから、ネットも用意しなきゃな」
燻製も作りたいので、それ用のチップも買って帰らなければならないのだ。
執務室である。
ギルドマスターは、受付嬢から話を聞き、ウカノを見た。
顎髭が特徴的な大柄な男性だ。
「ダークドラゴンを倒した、ねぇ?」
ジロジロと値踏みするかのような視線を向けられる。
正直に話した方がいいと判断して、ウカノは嘘をついた理由も含めて洗いざらい説明した。
説明が終わると、ギルドマスターから質問が飛んでくる。
「どこで、そんな強さを手に入れた?」
「……さぁ?
家の手伝いしかしたことないので、なんとも」
「ふざけてるのか?」
「本当のことです。
話すべきことは話しました。
嘘だと思うなら、そう思ってもらって結構です」
「…………」
「お話はしました。
もういいですね?
それじゃ、失礼します」
ウカノはさっさと部屋を出ていこうとする。
しかし、呼び止められた。
「まぁ、待て。
農業ギルドの方だとどうか知らんが、冒険者ギルドは基本実力主義なんだ」
「はあ?」
ギルドマスターの言葉の意味をはかりかねて、ウカノはそう返す。
「とりあえず、お前の実力を知りたい。
結果によっては、一気にAランクになることも可能だ。
受けられる依頼も増える」
「興味ありません」
そもそも冒険者として活躍したいとか、そんなことウカノは思っていなかった。
だから、Aランク冒険者になれるかもしれないと言われても、興味すらない。
「じゃあなんで、冒険者として登録してる?」
「身分証の予備としてカードが欲しかっただけです」
「馬鹿にしてるのか?」
「嘘を言っても仕方ないじゃないですか」
睨まれるが、ウカノはどうでもいいと思っていた。
あくまで身分証の予備が欲しかったのはその通りなのだから。
もしもこの態度が原因で、冒険者資格を剥奪されるならそれはそれで気にならない。
元々、冒険者として登録をするよう薦めてきたのはエリだった。
ウカノとしては、軽い気持ちでそれに従っただけだ。
「……冒険者活動は遊びじゃないんだ」
「知ってますよ。
稼がなくちゃいけませんもんね」
淡々と返した直後、ウカノの声が低くなった。
「だから、稼ぎにならない農家や村の依頼は、どれだけ出しても無視し続けられてきた。
いつだって、切り捨てられるのは弱い方ですからね」
声は低いけれど、その顔は笑顔だ。
「なにが言いたい?」
一気に剣呑な空気になる。
ウカノが、さらに言葉を続けようとした時、バタバタと部屋に駆け込んで来る者がいた。
ギルド職員だった。
「大変です!!」
部屋にいた三人の視線が、その職員へ注がれる。
「今すぐ、受付に来てください!!」
何かトラブルが起きたのはすぐに察せられた。
ギルドマスターと受付嬢は、部屋を飛び出していく。
それに職員が続いた。
最後に、ウカノが部屋を出る。
受付に行くと、さっきとは打って変わって騒がしかった。
受付台を背もたれに、カタカタと震えている人間がいた。
老婆と青年だった。
受付嬢達が話を聞いている。
「西にある街から来たらしいッすよ、あの二人。
なんでも、乗り合わせた馬車が、途中で盗賊に襲われたとか。
おばあさんは、孫娘を。
あっちのお兄さんは、婚約者をそれぞれ奪われたらしいっす。
二人は命からがら、逃げてきたとか」
そう説明してきたのは、ライドだった。
「……衛兵に通報は?」
「お役所は動くの遅いっすからねぇ。
それに、王都が襲われた訳でも貴族の馬車が襲われたわけでもないし。
それより、冒険者の方がフットワーク軽いっすから」
「なるほど、それで冒険者ギルドに駆け込んできた、と」
「賞金首を専門に討伐する冒険者もいるっすから」
「馬車を襲った盗賊は有名な賞金首なのか?」
「そこを今、受付さん達が詳しく聞いているところっす」
ちらり、とウカノはその場を見回した。
何人か、目を輝かせている冒険者がいた。
おそらくその者達が、賞金首を狩っている冒険者なのだろう。
「ふーん」
ウカノは適当に返して、入口へ歩いていく。
ライドがその背を慌てて追いかける。
「え、ちょちょ、どこ行くんすか!?」
「どこって、帰るんだけど」
「帰るって、この状況で?!」
「賞金首の討伐依頼受けられるのって、Cランクからじゃなかったっけ?
俺、Dランクだから」
「え、えぇ~??
ダークドラゴン倒したのに?
さっきギルマスと話してたのも、その功績を認められての昇級の話だったんじゃ」
想像力豊かな金髪だな、と思いながらウカノはパタパタ手を振った。
「違う違う」
「それだけ強いんだから、この依頼を受けてもいいんじゃ」
「まだ依頼出されてないでしょ」
「そうですけどぉ」
「それに、俺、やることあるし」
「やること?」
「除草剤と噴霧器買うの忘れてたから、買わないと」
「……はい??」
「あとキュウリも植えたいから、ネットも用意しなきゃな」
燻製も作りたいので、それ用のチップも買って帰らなければならないのだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ブラフマン~疑似転生~
臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。
しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。
あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。
死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。
二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。
一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。
漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。
彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。
――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。
意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。
「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。
~魔王の近況~
〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。
幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。
——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる