上 下
11 / 23
学園生活+冒険者活動

しおりを挟む
エステルが画面に映し出された。

『おっすー、悪い悪い。
ちょーっと立て込んでてさ』

「立て込んでた?」

『そ、ついに俺らの世界も襲撃受けたんだわ。
あっはっはっはっ!!』

「は、はぁぁああ!!??
だ、大丈夫なんですか?!」

『ん、へーきへーき。
なにせ、こっちの世界には化け物しか残ってねーからな!
襲撃受けた、1分後には退治終わってた。
それで、えーと、なんだっけ?
あ、思い出した!
入学初日で喧嘩して停学くらったって??
やるなー、お前。
結構、不良じゃん』

「1週間の謹慎です!
それよりも、学園に入れ無くなっちゃいました。
どうしたらいいでしょうか?」

『そうだなぁ。
そもそも、今の時点で敵方が潜り込んでるかどうかもわからん。
かと言って、パッと見じゃあ見分けつかんし』

どうしたもんか、とエスエルは考える。
そこに、別の職員から声がかかった。
なにかを囁かれ、エステルの顔がパァっと明るくなる。

『え、マジ?!
おい!朗報だ!!
神眼保持者を保護できた!!
簡単に言うと、超超超目がいい能力者だ。
そいつに現状を鑑定してもらう!
現時点において、その学園で誰が一番近い未来で犠牲になるかわかるぞ!!』

ハイテンションでエステルは言うと、一旦画面から消える。
かと思ったら、すぐに戻ってきた。
エステルの代わりに、画面に映ったのは少年だった。
それは、真っ黒な制服を着た少年だった。

『あ、初めまして。
えと、タカクラです。
タカクラトオルと言います。
トオルが名前です』

少年は戸惑ってはいたものの、そう丁寧に挨拶してきた。

「こちらこそ、はじめまして」

ウカノも挨拶を返した。
少年――トオルはだいたいの事情を聞いているらしかった。
すぐに、ウカノを凝視して、やがてこんなことを言った。

『あ、多分大丈夫です。
少なくとも、いえ確実に1週間ほどは何も起きません』

エステルが聞き返す。

『そうなのか?』

『はい。
だって、本当なら昨日、対象者だった人は殺されて入れ替わられてたみたいです。
でも、今、その人は病院で寝たきりになってます』

「そうなんだ」

『はい』

エステルがトオルにさらに質問する。

『しかし、病院で寝たきりとは。
なにがあったんだ?
襲撃された、とかではないんだろ?
事故にでもあったのか?
それとも、俺たちが把握出来ていない不測の事態が起きてるとか?』

トオルは、エステルを見て、それから何故かウカノを見た。
そして、言いにくそうに口を開いた。

『ええと、その。
昨日――ウカノさんがいる世界での昨日になるんですが。
ウカノさんに喧嘩売った人いませんでした?
生意気だーとか言って。
その人を、ウカノさん自身が結果的に伸したために、1週間ほどの余裕というか、時間ができたというか。
そんな感じです。』

言われて、昨日を振り返る。
というか振り返るまでもなく、心当たりは一人しかいない。
アールだ。

「マジか」

『マジか』

ウカノとエステルの反応が重なる。
トオルが自信満々に頷く。

『マジです。
少なくとも、俺の目で見た限りでは相手の方も予定が狂ったのでしばらく何も出来ない状態みたいです。
相手、この場合は敵ですね。
敵の顔までわかればいいんでしょうけど。
どうにも、ぼやけて上手く見えないんです』 

『おー、まぁ仕方ないか。
なにせ、神すら殺せる存在だしなぁ。
伊達に外の世界から来ていないってわけだ。
それにしても、ラッキーだったな、ウカノ。
しばらく犠牲者は出ないっぽいぞ』

気楽にエステルは言ってくる。
しかし、ウカノにしてみれば

「えー、じゃあ1週間どうしましょう??」

『そうだなぁ。
まぁ、休みってことで適当に過ごせ』

「そんな、いい加減な」

『馬鹿だなぁ、人生にはほどよくいい加減な時間も必要なんだぞ。
あ、そうだ。
その世界、冒険者ギルドがあるし。
なんなら登録して1週間冒険者生活でもしてみたらどうだ?』

「…………」

『どうした?
しょっぱい顔して??』

ウカノは、この数時間のことを話した。
話を聞いたエステルが大爆笑する。

『あっはっはっはっ!!
マジか!!
スゲェな!!
つーか、農業ギルドあるのか!!
たいがいの世界にあるのは、冒険者ギルドや錬金術ギルド、猟師ギルドってところだけど』

なにがそんなに面白いのか、ウカノは理解できなかった。
でも、こんなに楽しそうに笑えるエステルは羨ましい、と思ってしまう。

『なんつーか、主人公っぽいことしてるんだな、お前!!』

エステルは一頻り笑ったあと、

『まぁ、1週間は休みってことで好きにしろ。
定時報告だけ忘れんなよ。
それ以外の時間だと、こっちも連絡取れない可能性高いからな』

「わ、わかりました」

そんなやり取りをして、通信が切れた。

「いいのかなぁ」

まぁ、エステルが良いって言ってるんだし、いっか、とウカノは自分を納得させた。
いきなりできた自由時間だ。
さて、何をしようかと考えた時、思い出した。

「あ、枝豆の種と道具諸々買うの忘れてた」

冒険者ギルドでのドラゴンの素材の査定が終わったら、農業ギルドに戻ろうと決めた。
しかし、そうは都合よくいかないのがまた人生である。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ブラフマン~疑似転生~

臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。 しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。 あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。 死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。  二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。  一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。  漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。  彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。  ――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。 意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。 「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。 ~魔王の近況~ 〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。  幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。  ——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...