上 下
13 / 50

13

しおりを挟む
 「いい知らせと悪い知らせがある。
 どっちから聞きたい?」

 帰りの車の中、お父さんの方から、どっかのドラマみたいにそう切り出された。

 「じゃあ、悪い方」

 「お前にレアスキル兼レア職業の才能が眠ってることが判明した」

 「……あー、お狐様が言ってたヤツかな?」

 「キツネ?」

 「こっちの話。
 良い話は?」

 「そのレアスキル兼レア職業は、ある意味魔物使いと相性がいいってことだ」

 「と、言うと?」

 「紙に書いてあった、【言霊使い】ってのがそれなんだが。
 これな、極端な話、自分以外の他の存在に『死ね』って言えば、それだけで死なせることができる能力らしい」
 
 「は?」

 あたしは戸惑って、手をパタパタぶんぶん振ると続けた。

 「待って待って、いや、それは有り得ないよ。
 こう言っちゃなんだけど、今まで何回姉妹きょうだい喧嘩で、死ねだの消えろだの言ってきたと思ってるの?
 お父さんだって見て来たでしょ?
 マリー、死んでないよ?」

 主に一人っ子の読者に告げる。
 家族をなんだと思ってる、とか、姉としてどうなんだ、とか疑問が出ていることだろう。
 家によるが、歳の近い兄弟姉妹は喧嘩をするものだ。
 みだりに、上や下の兄弟姉妹がいていいなぁ、とか羨ましいなぁ、とか言ってはいけないぞ。
 地雷だったりするからな。
 さて、喧嘩でそんな罵りあいをしていた妹は、むしろ、現在進行形で後部座席にて間抜け面で眠りこけている。
 元気そのものだ。

 「練度が低いんだよ。
 意識してその能力の訓練をすれば、出来るようになる。
 今は、せいぜいおばあちゃんの育ててる花とか、おじいちゃんの育ててる野菜とかに声掛けすると、綺麗に花が咲いたり、美味しくデカく育てたりすることが出来るくらいだ」

 言われて、あれ? ちょっと待て。
 なんか、そういえばちらほら身に覚えがあるような?
 ばあちゃんの手伝いで花の水やりを、声掛けしながらやったらやたら綺麗に咲いたりしたっけ?
 あの、品評会に出す菊とか。
 めっちゃ綺麗に咲いてたような?
 そういえば、昔、ばあちゃんに。

 「ココロには、花を育てる才能があるかもねぇ」

 なんて言われたことがあったよーな?
 それに、じいちゃんの手伝いで夏野菜の水やりしたあとは、やけにデカいけど美味しい野菜が採れてたような?

 「あとは、タマとか低レベルモンスターに言うことをきかせることができるくらいか」

 「ふむふむ」

 「で、だ。
 悪い話に戻ると」

 「え、なに?
 まだなんかあるの?」

 「あるんだよ。実は」

 なんだなんだ、怖いな。

 「鑑定結果がレアであろうとなかろうと、鑑定をした場合、【言霊使い】に限らず、役所に申し出なきゃいけないんだ。
 んで、定期的に国が主催してる講習会に出るか、専門の訓練施設に通わなきゃいけなくなる」

 「うわぁー、クソめんどいやつだ」

 「そうなんだよなぁ。
 ただ、やっぱりそれだけ危険を孕んだ能力ってことだから、仕方ない」

 「ちなみに、高校は辞めなくても大丈夫なんだよね?」 

 「それは大丈夫らしい。とりあえず、国としてもそう言った危険度の高い能力所持者の居場所を把握しときたいってことらしい」

 まあ、わからなくはない。

 「でも、人権とかその他諸々の事情もあって強制隔離とかはないから」

 「それは、とても安心だ」

 「ただ、やっぱりそういう能力持ちってことは把握されるわけだから、もしかしたら進路に影響は出るだろうな」

 「……はぁ、やっぱり調べなきゃ良かった」

 「まぁ、とりあえず選択肢は広がったってことで、良しとしてくれないか?」

 「ばあちゃんがまたご馳走様作りそうだよね」

 「あー、うん。それな。
 おばあちゃんから連絡入ってて、まぁ隠せないからもう言ってある。
 お赤飯炊いて、あとデカいケーキ買ってくるってさ」

 「HAHAHA」

 もう笑うしか出来ないや。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

テイムしたトカゲに魔石を与え続けるとドラゴンになりました。

暁 とと
ファンタジー
テイムしたトカゲはドラゴンになる

最強のリヴァイアサンになった筈なのに(仮)

ライ蔵
ファンタジー
いつもオラついているレベルカンストのリヴァイアサンが何故か人間の召喚獣の契約を受けてしまい人間達にある意味奴隷の様に働かせれる事になってしまう。 カンストリヴァイアサンに明るい未来は果たして訪れるのか?

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

世界樹を巡る旅

ゴロヒロ
ファンタジー
偶然にも事故に巻き込まれたハルトはその事故で勇者として転生をする者たちと共に異世界に向かう事になった そこで会った女神から頼まれ世界樹の迷宮を攻略する事にするのだった カクヨムでも投稿してます

テイマーは死霊術師じゃありませんっ!

さんごさん
ファンタジー
異世界に転生することになった。 なんか「徳ポイント」的なのが貯まったらしい。 ついては好きなチートスキルがもらえるというので、もふもふに憧れて「テイム」のスキルをもらうことにした。 転生と言っても赤ちゃんになるわけではなく、神様が創った新しい肉体をもらうことに。いざ転生してみると、真っ暗な場所に歩く骸骨が! ひぃぃい!「テイム!テイム!テイム!」 なんで骸骨ばっかり!「テイム!テイムテイム!」 私は歩く。カタカタカタ。 振り返ると五十体のスケルトンが私に従ってついてくる。 どうしてこうなった!? 6/26一章完結しました この作品は、『三上珊瑚』名義で小説家になろうにも投稿しています

処理中です...