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16歳の異世界転移
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使えないド新人が嫌いなんだろうな。
だけれど、仕事をする上でコミュニケーションはどうしたって必要だ。
毛嫌いされているとなると、仕事がやりにくいことになるので困ったな。
「えーと、確認です。
この御屋敷から研究資料を探すってことでいいんですよね?」
今回の仕事は、海のど真ん中に浮かぶ小島。
諸島?
ミルさん曰く、ハジマリの島と呼ばれている島々のひとつにポツンと建っている屋敷の調査らしい。
地下室もあるのだとか。
ここで研究をしていた魔法使いの資料を探す、というのが今回の仕事だった。
「そうだ。最近この屋敷は発見された。
調べたところさっきも説明したが、大昔のそれはそれは有名な魔法使いの研究施設だということがわかった」
「はぁ」
「おそらく時代から考えて紙媒体で研究の記録があるはずだ。
本でもスクロールでも羊皮紙のメモでもなんでもいい。
とにかく紙媒体の物を手当たり次第に集めること」
「わかりました」
俺がミルさんの言葉に頷く横で、ウィルさんが何やら顎に手をやって考え事をしていた。
しかしすぐに諦めたように息を吐き出す。
そして、
「はい、あげる」
なんて俺に言ってきて、ゴム手袋を渡してきた。
「あ、どうも」
これを付けて仕事をしろ、という事だろう。
それを見たミルさんが、感心したように呟いた。
「準備がいいな」
ウィルさんが、不貞腐れたようにそれに答える。
「……別に」
そこから淡々と三人で仕事をした。
紙媒体の物を手当り次第集めていく、簡単な仕事だ。
ウィルさんは、俺たちから離れて地下室に降りていった。
それを見計らって、ミルさんが言ってきた。
「その手袋には、呪いよけの加工がされているんだ。
研究資料の中には、触れただけで手を吹っ飛ばす厄介な魔法が掛けられているものもあるからな。
わたしも用意だけはしていたんだが、ウィルに先を越されてしまった」
それを聞いて、思ったより優しい人なのかもと思った。
「あの子も、悪い子じゃないんだ」
ミルさんが、さらにそんなことを口にした。
「嫌われてるんじゃなくて、安心しました」
少なくとも、仕事をする上でやりにくい、ということは無さそうだ。
「あの子がヒトを嫌うなんてあるわけないよ」
「というと?」
「あの子の婚約者は人間だし。
あの子の母親も人間だからな。
母親は正妻ではなかったが、それでも今代魔王に寵愛されていた。
異母兄達との仲も良好。
それにあの子は、父親の魔王に似て人間が好きなんだよ」
言って直ぐに、ミルさんはだからこそ不思議なんだ、と続けた。
「なんで、あんな風に少年に嫌悪感を示したのか。
まるでわからないんだ」
「たまたま虫の居所が悪かったとかでしょうね、きっと」
それは、よくある事だった。
感情があるのだから、当たり前のことだ。
なんてやり取りをしていたら、ウィルさんが地下から何冊もの本やら巻物やらを手に戻ってきた。
「聞こえてるよ。人のこと話すならもう少し声を抑えなよ」
ボソッとそんなことを言って、また地下に戻って行った。
どうやら彼は地獄耳のようだ。
と思ったら、なにやら血相を変えてウィルさんが戻ってきた。
「ほんっと、これだからストーカーは厄介だ!!
護衛の仕事はやっておくから、さっさと転移して帰って!!」
そんなことを叫ぶようにミルさんに言うと、外に駆け出していった。
ミルさんは指を振って集めた紙媒体の資料を消す。
そして、俺の手首を掴んだ。
次の瞬間、爆発の光が俺たちを包んだ。
屋敷が吹っ飛ばされたのだ。
だけれど、仕事をする上でコミュニケーションはどうしたって必要だ。
毛嫌いされているとなると、仕事がやりにくいことになるので困ったな。
「えーと、確認です。
この御屋敷から研究資料を探すってことでいいんですよね?」
今回の仕事は、海のど真ん中に浮かぶ小島。
諸島?
ミルさん曰く、ハジマリの島と呼ばれている島々のひとつにポツンと建っている屋敷の調査らしい。
地下室もあるのだとか。
ここで研究をしていた魔法使いの資料を探す、というのが今回の仕事だった。
「そうだ。最近この屋敷は発見された。
調べたところさっきも説明したが、大昔のそれはそれは有名な魔法使いの研究施設だということがわかった」
「はぁ」
「おそらく時代から考えて紙媒体で研究の記録があるはずだ。
本でもスクロールでも羊皮紙のメモでもなんでもいい。
とにかく紙媒体の物を手当たり次第に集めること」
「わかりました」
俺がミルさんの言葉に頷く横で、ウィルさんが何やら顎に手をやって考え事をしていた。
しかしすぐに諦めたように息を吐き出す。
そして、
「はい、あげる」
なんて俺に言ってきて、ゴム手袋を渡してきた。
「あ、どうも」
これを付けて仕事をしろ、という事だろう。
それを見たミルさんが、感心したように呟いた。
「準備がいいな」
ウィルさんが、不貞腐れたようにそれに答える。
「……別に」
そこから淡々と三人で仕事をした。
紙媒体の物を手当り次第集めていく、簡単な仕事だ。
ウィルさんは、俺たちから離れて地下室に降りていった。
それを見計らって、ミルさんが言ってきた。
「その手袋には、呪いよけの加工がされているんだ。
研究資料の中には、触れただけで手を吹っ飛ばす厄介な魔法が掛けられているものもあるからな。
わたしも用意だけはしていたんだが、ウィルに先を越されてしまった」
それを聞いて、思ったより優しい人なのかもと思った。
「あの子も、悪い子じゃないんだ」
ミルさんが、さらにそんなことを口にした。
「嫌われてるんじゃなくて、安心しました」
少なくとも、仕事をする上でやりにくい、ということは無さそうだ。
「あの子がヒトを嫌うなんてあるわけないよ」
「というと?」
「あの子の婚約者は人間だし。
あの子の母親も人間だからな。
母親は正妻ではなかったが、それでも今代魔王に寵愛されていた。
異母兄達との仲も良好。
それにあの子は、父親の魔王に似て人間が好きなんだよ」
言って直ぐに、ミルさんはだからこそ不思議なんだ、と続けた。
「なんで、あんな風に少年に嫌悪感を示したのか。
まるでわからないんだ」
「たまたま虫の居所が悪かったとかでしょうね、きっと」
それは、よくある事だった。
感情があるのだから、当たり前のことだ。
なんてやり取りをしていたら、ウィルさんが地下から何冊もの本やら巻物やらを手に戻ってきた。
「聞こえてるよ。人のこと話すならもう少し声を抑えなよ」
ボソッとそんなことを言って、また地下に戻って行った。
どうやら彼は地獄耳のようだ。
と思ったら、なにやら血相を変えてウィルさんが戻ってきた。
「ほんっと、これだからストーカーは厄介だ!!
護衛の仕事はやっておくから、さっさと転移して帰って!!」
そんなことを叫ぶようにミルさんに言うと、外に駆け出していった。
ミルさんは指を振って集めた紙媒体の資料を消す。
そして、俺の手首を掴んだ。
次の瞬間、爆発の光が俺たちを包んだ。
屋敷が吹っ飛ばされたのだ。
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