桜の木の下の首無し死体

一樹

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読者への挑戦状

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物語を読み終わったナターシャは、顔を上げた。
視線の先には、遠慮なくクッキーを頬張るミズキがいる。
優雅さの欠片もなく、ゴクゴクと紅茶を飲み干したミズキが、ナターシャの視線に気づいた。

「あ、読み終わりましたか?」

「えぇ、はい。
あの、これ続きは?」

犯人の告白のところで、物語はぶつ切りになっていた。
もしや、これで終わりなのだろうか?
そう考えるナターシャの前で、ミズキは楽しそうにさらに数枚の紙をヒラヒラさせた。

「答えはここに。
でも、それは稚拙ながらもミステリ作品です。
だから、いわゆる【読者への挑戦状】が付いてるんですよ」

「へ?」

「こほんっ。
読者への挑戦状 ここまでに、【真相何が起きていたのか】に至る手がかりは全て提示した。読者の皆さんには是非とも、その【真相】を考察していただきたい」

芝居かかったセリフをミズキは朗々と口にした。
そして、続ける。
今度のは、明らかな挑発だった。

「ちなみに、これを書いた友人曰く、こんな初心者の書いた駄文ミステリなんてすぐ看破されるって言ってましたね」

つまり、初心者の拙いミステリは解けて当たり前。
まさか、解けないなんてことないだろ。
と、ナターシャは受け取った。

ナターシャも負けず嫌いなところがある。
そのため、ミズキの言葉にほんの少しだが、ムッとしてしまう。

「解けるものなら、解いてみろってことですか?」

「解くのが好きなら、挑戦してみるのもありかもですね」

「わかりました!!
では、少し時間を下さい!
絶対解いてみせます!!」

と、宣言した後に、ふとナターシャは気づいた。

「あの、推理じゃないんですか?」

「えぇ、これは、推理ではなく考察してほしい作品らしいです。
推理には正解がありますが、考察にはそれがない。
だから、いろんな答えが出て、またそれも楽しめるでしょってことだそうですよ」
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