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お前は、俺を、怒らせた
裏話 後ろ足で砂をかける
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***
【ここで時は少しだけ戻る】
俺はブランに蹴りを食らわせる。
しかし、気絶することなくブランはすぐに立ち上がって、攻撃魔法を仕掛けてきた。
それを避けては蹴りつけ、なんとか気絶させようとしたが全く効果が無いようだった。
スネークさんの攻撃も難なくよけている。
ブランの目はずっと虚ろだ。
何度か攻防を繰り返した後。
ブランが口を開いた。
「殺せばいいでしょう??」
それは、ブランの口から出た言葉だった。
でも、ブランではないことがすぐにわかった。
誰かが、ブランの中にいる。
「誰だ!?」
俺の問いに、しかし、ブランの中にいるだろうその人物は答えない。
「そう、殺せばいい。
この子を殺せばいい。
そうすれば、全てが丸く収まるでしょう?」
歌うように、そいつはブランの口を借りてそんなことをいってくる。
「あー、流れ的に女神か」
スネークさんが呟いた。
ブランが軽く手を払う仕草をした。
瞬間。
スネークさんが吹っ飛ばされた。
「スネークさん!?」
「異分子が手を貸していますね。
本当はここには、ヤマト、貴方しかいないはずだったのに」
淡々と、ブランの体を乗っ取った女神がそんなことを呟いた。
「はてさて、これは誰が描いた景色でしょうか?」
それは、俺に問いかけているようにも、自問のようにも思えた。
「…………」
俺が黙っていると、
「まぁ、いいでしょう。
さぁ、殺しなさい。
この子を殺しなさい。
そうすれば、この子がこれ以上、私に穢されることはない」
どうやら女神は、俺にブランを殺させたいらしい。
誰が殺すか。
「貴方が殺さないなら、私がこの子の存在を喰らいましょう」
なんて、女神が口にした瞬間。
そう、一瞬だった。
一瞬、俺の意識がとんだ。
気づいた時、俺はブランをなぐりとばしていた。
せめて気絶させなければ。
そんな考えが瞬く。
なんとかして、ブランの中から女神を追い出さなければ。
「出てけよ」
自分の口から、今まで出したことの無い声が漏れた。
「ブランの中から出てけよ、阿婆擦れ」
普段なら絶対口にしない言葉が出る。
そんな俺を見て、それから不思議そうに首を傾げる。
そして唐突に、ブランの体を乗っ取った女神が笑った。
嬉しそうに、笑った。
「あぁっ!!
そうか!!
そういうことか!!
この子が正解だった!!
ウスノじゃなかった!!
この子こそ正解だった!!」
そして、ニタァっと女神が不気味な笑顔を浮かべる。
「あぁ、やっぱり貴方はそうでなくちゃ。
貴方はそうでなくちゃ。
貴方は、愛に狂ってなきゃいけない。
いつだって愛されたいと願いながら、結局誰にも愛されない。
その絶望に喰われて、壊れなければならない。
愛に狂って、狂って狂って狂って、壊れなければいけない!!
いつだって、そう、いつだって、どの世界でも貴方はそうなのだから!!
貴方はそうなのだから!!」
何を言ってるんだ、この女神は。
いや、それよりも、ブランをなんとかしないといけない。
どうする?
どうすれば、あの乗っ取りをなんとかできる?
携帯を使って、掲示板に書き込んでる暇は無い。
考えなければ。
せめて、ブランの意識を取り戻さないと。
そこまで考えた時だった。
ふと、日記のことが頭をよぎった。
同時に、この学園に来てからのことが一気に蘇る。
その記憶の中に、それはあった。
ブチ切れて我を失ったタケルとのやり取りを思い出す。
あ、そっか。
ブランを救えるなら。
こんな使い方も悪くない。
俺が自由に出来るのは、たかが知れてる。
女神の目的とか、そんなのは全部吹っ飛んでいた。
何もかもが、無駄になる。
ウカノさんや、考察厨の企みも全て無駄になる。
それでもいいやと思った。
これなら、一石三鳥だ。
俺はブランに向かって駆け出した。
女神がブランの体を操って、魔法を繰り出そうとしてくる。
その腕を掴む。
殴った感覚からわかっていたが、肉体が強化されている。
「…………」
俺は、ブランを見る。
女神に操られている、友達を見る。
「戻ってこいよ、次期魔王様」
そして、ある意味武器と化していたブランの腕で、俺は俺の胸部を貫いた。
俺の血がブランにかかった。
その瞳に、光が戻る。
あぁ、ブランだ。
これで正解だった。
瞬間、脳裏にタケルとコノハの顔が浮かんだ。
続いて、エルリーたちの顔。
意識が遠のく。
少しずつ、遠のく。
目の前のブランが、意識を取り戻していた。
最期に見るのが、友達の顔なら、まずまずいい終わりだなと思った。
手を伸ばす。
ブランに手を伸ばす。
せめて彼の顔についてしまった、俺の血を落としたいなと思った。
でもそれは、叶わない。
手は届かない。
なら、それなら、せめて。
「ご、めん、な?」
喧嘩をしたままだったから。
そして、こんなことをさせてしまう形になったから。
俺の血で、彼を穢してしまったから。
最期、俺は、そう伝えた。
そして、目の前が暗くなる。
何も見えなくなる。
程なくして、体の感覚も、なにもかもが消え失せた。
【ここで時は少しだけ戻る】
俺はブランに蹴りを食らわせる。
しかし、気絶することなくブランはすぐに立ち上がって、攻撃魔法を仕掛けてきた。
それを避けては蹴りつけ、なんとか気絶させようとしたが全く効果が無いようだった。
スネークさんの攻撃も難なくよけている。
ブランの目はずっと虚ろだ。
何度か攻防を繰り返した後。
ブランが口を開いた。
「殺せばいいでしょう??」
それは、ブランの口から出た言葉だった。
でも、ブランではないことがすぐにわかった。
誰かが、ブランの中にいる。
「誰だ!?」
俺の問いに、しかし、ブランの中にいるだろうその人物は答えない。
「そう、殺せばいい。
この子を殺せばいい。
そうすれば、全てが丸く収まるでしょう?」
歌うように、そいつはブランの口を借りてそんなことをいってくる。
「あー、流れ的に女神か」
スネークさんが呟いた。
ブランが軽く手を払う仕草をした。
瞬間。
スネークさんが吹っ飛ばされた。
「スネークさん!?」
「異分子が手を貸していますね。
本当はここには、ヤマト、貴方しかいないはずだったのに」
淡々と、ブランの体を乗っ取った女神がそんなことを呟いた。
「はてさて、これは誰が描いた景色でしょうか?」
それは、俺に問いかけているようにも、自問のようにも思えた。
「…………」
俺が黙っていると、
「まぁ、いいでしょう。
さぁ、殺しなさい。
この子を殺しなさい。
そうすれば、この子がこれ以上、私に穢されることはない」
どうやら女神は、俺にブランを殺させたいらしい。
誰が殺すか。
「貴方が殺さないなら、私がこの子の存在を喰らいましょう」
なんて、女神が口にした瞬間。
そう、一瞬だった。
一瞬、俺の意識がとんだ。
気づいた時、俺はブランをなぐりとばしていた。
せめて気絶させなければ。
そんな考えが瞬く。
なんとかして、ブランの中から女神を追い出さなければ。
「出てけよ」
自分の口から、今まで出したことの無い声が漏れた。
「ブランの中から出てけよ、阿婆擦れ」
普段なら絶対口にしない言葉が出る。
そんな俺を見て、それから不思議そうに首を傾げる。
そして唐突に、ブランの体を乗っ取った女神が笑った。
嬉しそうに、笑った。
「あぁっ!!
そうか!!
そういうことか!!
この子が正解だった!!
ウスノじゃなかった!!
この子こそ正解だった!!」
そして、ニタァっと女神が不気味な笑顔を浮かべる。
「あぁ、やっぱり貴方はそうでなくちゃ。
貴方はそうでなくちゃ。
貴方は、愛に狂ってなきゃいけない。
いつだって愛されたいと願いながら、結局誰にも愛されない。
その絶望に喰われて、壊れなければならない。
愛に狂って、狂って狂って狂って、壊れなければいけない!!
いつだって、そう、いつだって、どの世界でも貴方はそうなのだから!!
貴方はそうなのだから!!」
何を言ってるんだ、この女神は。
いや、それよりも、ブランをなんとかしないといけない。
どうする?
どうすれば、あの乗っ取りをなんとかできる?
携帯を使って、掲示板に書き込んでる暇は無い。
考えなければ。
せめて、ブランの意識を取り戻さないと。
そこまで考えた時だった。
ふと、日記のことが頭をよぎった。
同時に、この学園に来てからのことが一気に蘇る。
その記憶の中に、それはあった。
ブチ切れて我を失ったタケルとのやり取りを思い出す。
あ、そっか。
ブランを救えるなら。
こんな使い方も悪くない。
俺が自由に出来るのは、たかが知れてる。
女神の目的とか、そんなのは全部吹っ飛んでいた。
何もかもが、無駄になる。
ウカノさんや、考察厨の企みも全て無駄になる。
それでもいいやと思った。
これなら、一石三鳥だ。
俺はブランに向かって駆け出した。
女神がブランの体を操って、魔法を繰り出そうとしてくる。
その腕を掴む。
殴った感覚からわかっていたが、肉体が強化されている。
「…………」
俺は、ブランを見る。
女神に操られている、友達を見る。
「戻ってこいよ、次期魔王様」
そして、ある意味武器と化していたブランの腕で、俺は俺の胸部を貫いた。
俺の血がブランにかかった。
その瞳に、光が戻る。
あぁ、ブランだ。
これで正解だった。
瞬間、脳裏にタケルとコノハの顔が浮かんだ。
続いて、エルリーたちの顔。
意識が遠のく。
少しずつ、遠のく。
目の前のブランが、意識を取り戻していた。
最期に見るのが、友達の顔なら、まずまずいい終わりだなと思った。
手を伸ばす。
ブランに手を伸ばす。
せめて彼の顔についてしまった、俺の血を落としたいなと思った。
でもそれは、叶わない。
手は届かない。
なら、それなら、せめて。
「ご、めん、な?」
喧嘩をしたままだったから。
そして、こんなことをさせてしまう形になったから。
俺の血で、彼を穢してしまったから。
最期、俺は、そう伝えた。
そして、目の前が暗くなる。
何も見えなくなる。
程なくして、体の感覚も、なにもかもが消え失せた。
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