【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】

一樹

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スレ民はにはお見通し♡

裏話19 口喧嘩 後編

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 思い出されるのは、スレ民から教えられたこの1年間の事実。
 ヤマトが死にかけ続けた、記録。

 俺の言葉に、ヤマトの目が見開かれる。
 しかし、すぐに伏せられた。
 そして、返ってきたのは、

「……か?」

「あ??」

「言いたいことはそれだけかって、聞いてんだよ!!
 このお節介野郎!!」

 そんな怒声と拳だった。
 え、お前がそれ言っちゃうの??
 自分のこと棚上げにして、それ言うかぁ。そうかぁ。
 殴り飛ばされる。
 こんの野郎、怪我人だとおもって下出に出てりゃつけ上がりやがって。
 口の端が切れた。
 いや、中もか。
 血の味がする。
 手の甲で口の端ヲを拭い、立ち上がる。
 決めた。
 泣かす。
 ぜってぇ、こいつの事泣かす。

「お節介野郎?
 俺が?
 そりゃお前だろ、お節介の上に死に急ぎ野郎じゃねーか!!」

 俺はヤマトに飛びかかった。
 そして、殴り合い、怒鳴り合う。

「俺はいいんだよ!!」

「良くねーよ、どういう理屈だ!!」

「俺が自由に出来るの、それくらいしかねーんだよ!!
 自分の体くらい、好きに使わせろ!!
 命令すんじゃねーー!!!!」

 寮母さんが間に入ろうと動いたのが見えた。
 と、そこで、やけに明るい声が降ってきた。
 互いに胸ぐらを掴みあって、同時に拳を叩きつけようとしていた俺たちの動きはピタリ、と止まった。

「やっ君、お久しぶり~。
 シルフィのおばちゃんですよ~。
 って、ええええ?!?!
 どうゆう状況??
 二人とも、喧嘩??
 ちょ、ノーム!?
 お目付け役でしょ、なにやってるの?!」

 シルフィードだった。
 シルフィードは虚空に向かって叫ぶ。
 だけど、反応が無かった。
 寮母さんも、前ぶれなくシルフィードが現れたために驚きを隠せないでいた。
 それは、ヤマトも同じだった。
 来ること、聞いてなかったんか、お前。

「あ、あら??
 ノーム???
 え、いないの??」

 おかしいわねぇ、とシルフィードは呟く。

「おばちゃん、ちょっと後にしてくれない?
 ブランとの話し合いが、まだ終わらないから」

 ヤマトが俺の胸ぐらを掴んだまま、そして俺を睨みつけたまま言う。
 俺も俺で、ヤマトの胸ぐらを掴んで、同じようにヤマトを睨み返しながら、

「すんません、少し時間もらいます。
 話し合いの決着がまだなんで」

 そう言った。
 シルフィードはそれを聞いて、呆れたように聞いてくる。

「あのねぇ、君たちのは話し合いじゃなくて喧嘩でしょう??」

 そこで、妙な威圧が向けられた。
 威圧の主はシルフィードだった。
 彼女は絶対零度の微笑みを浮かべ、ヤマトを見た。

「ヤマト、お友達は叩いちゃいけないっておばちゃん、教えなかったっけ??
 どうだったっけ?」

 あえてヤマトと呼んでいるところに凄みがあった。
 俺は実家の母さんを思い出した。

「ヴっ」

 ヤマトが変な声を出して、俺の胸ぐらを掴んでいた手を離した。
 あぁ、逆らえないのね、お前。

「はい、お友達の方も手を離して、ね??」

 ……うん、逆らえないな。
 怖いもん、この笑顔。
 声はとても優しいし、なんなら逆らったところでどうって事ないだろうと思う。
 でも、ダメだ。
 これ、逆らうとめちゃくちゃ怒られるやつだ。
 うちの母さんと同じ笑顔だ。

「よしよし、いい子いい子。
 二人とも、いい子いい子」

 なんて言ってシルフィードは、ヤマトと俺の頭を撫でる。
 けれど、バツが悪かったのかヤマトはその手を払い除ける。
 そして、

「頭冷やしてくる」

 なんて言って、談話室から出ていった。
 それを寮母さんが追いかける。
 その後姿を、ふよふよ浮かびながら見ていたシルフィードが、

「反抗期かしらねぇ」

 なんて呟いた。

 俺も段々頭が冷えてきた。
 だからか、この【話し合い】でのやらかしに自己嫌悪に陥る。
 ただ、事情が聞きたかっただけなのに。
 どうして、あんな強硬手段を取ってしまったのか。
 不意にポケットに手を突っ込むと、携帯に触れた。
 そうだ、報告しないと。
 混乱する頭で、俺は助言してくれた人達へ報告を書き込む。
 なんとなく、怒られるのが嫌でアイツが勝手にキレた、と書いてしまった。
 なに、やってんだろ、俺。
 ふと、シルフィードを見た。
 ダメ元でシルフィードにも聞いてみるか。

「あの」

 俺はシルフィードに声をかけた。

「なぁに??」

「その、ヤマトの怪我ってどのくらい悪いんですか??」

「どのくらい??
 んー、そぉねぇ……。
 悪化したら、私たちでさえもう二度と会えなくなるくらい悪いわねぇ」

 シルフィードは話せるのか??
 なんで??
 いや、それよりも言い方はマイルドなものの、その意味するところは理解出来た。
 やっぱり。
 シルフィードは、さらに続ける。

「だから、そうならない為に君とももうすぐバイバイしなきゃいけないのに。
 喧嘩するなんて、あの子らしくないわね」

「……え??」

 なんの、話だ?

「それって、どういう意味っすか??」

 シルフィードがキョトンとしつつ、俺を見た。
 その時だ、談話室から出ていったヤマト、アイツを追いかけた寮母さんの悲鳴が上がった。
 シルフィードが顔色を変えて、そちらに向かう。
 俺も手早くスレ民に現状を報告し、それに続いた。
 ヤマトと寮母さんが居たのは、談話室を出てすぐの廊下だった。
 そこにヤマトは倒れていた。
 血を吐いて、傷が開いたのか腹からも血が服に滲んでいた。
 その顔色は青白く、死者を思い出させた。
 瞼は薄ら開かれているが、そこにはなにも映っていない。
 そんなヤマトに寮母さんが必死に声を掛けている。
 しかし、意識は無いようだった。
 俺は、アイツの名前を叫んだ。

「ヤマト!!??」
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