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スレ民はにはお見通し♡

裏話17 口喧嘩 前編

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(なんで、俺まで……)

(なんか、ごめん)

 龍神様とノームからの説教を受けつつ、俺はヤマトに恨みがまじく視線を送った。
 ちなみに、正座でだ。
 足の痺れがヤバい。
 ヤマトからは、謝罪がこもった視線を送られる。
 いや、まぁ、ヤマトを止めきれなかった俺も悪いんだけどさ。
 じゃあ、ちゃんと起きてることを話してくれればいいのに。
 そうすれば、こっちだってもう少しやりようはあった。
 と思う。
 でも、なにも教えてくれないのだ。
 リィエンのように鼻が効けばよかったのに。

 やがて、説教が終わり、俺とヤマトは部屋に残される。
 ノームは消えたけれど、消えただけだろう。

 俺は、しまっていた携帯を取り出す。
 そして、思い出した。
 そうだ、スレ民から確認するよう提案されてたんだ。

「……なぁ、傷ってそこまで悪いのかよ」

 説教の中でも、龍神様とノームがヤマトに対して繰り返していたのは、怪我のことだった。

『自分の状態がわかっているのか』
『そんなに早めたいのか』

 俺が居たからか、どこか迂遠な言い方で二人はヤマトを叱っていた。
 説教が終わったのを察知して、寮母さんがやってきた。
 朝食を食べにくるよう言われる。
 龍神様は帰り、ノームも消えた。

「……お前には関係ないよ」

 突き放される言い方だった。

 は?
 は?なんだそれ?
 関係ない??

 一瞬、その胸ぐらを掴んで問い詰めてやろうかと思った。
 けれどノームに関しては、姿が見えないだけでヤマトの監視は続行されているはずだ。
 だから、というわけでもないが相手は怪我人で、様子がおかしいのは事実なので、思いとどまった。
 ちなみに寮母さんはいつも通りだった。
 思うところもあるだろうに、いつも通りだった。

「年頃だからねぇ、ヤンチャや不良っぽいことをしたいってのもわかるけれど、せめて一言あってほしかったなぁ」

 そうチクチク言われたこと以外は、いつも通りだった。
 二人して寮母さんに謝る。
 そういえば、この人に一番迷惑をかけていた。
 一番無関係なのに。
 ふと見ると、ヤマトはあまり食べていなかった。
 腹拵えしたからだろうか。

「おい、どうした??」

 ハッとヤマトが俺を見てきた。

「腹いっぱいなの?」

 俺は進んでいないヤマトの食事を見ながら言った。

「あ、いや、さすがに疲れたのかもなぁ」

 白々しい返しだった。
 本当に疲れているのかもしれない。
 けれど、とてもわざとらしかった。
 それを誤魔化すためか、ヤマトは朝食をかきこんだ。
 そして、寮母さんに礼を言って部屋に戻ろうとする。
 俺も朝食の残りをかきこんで、ヤマトを追いかけた。
 部屋に入ろうとしたヤマトを、呼び止める。

「おい、お前本当に怪我大丈夫なのかよ?」

「ん、へーき」

 少し、怠そうにしている。
 けれど、少しくらいいいだろ、そう考えて俺はヤマトを無理やり談話室まで引っ張っていこうとする。

「お、おい、なんだよ??」

 心做しか、声にいつもの元気が無かった。
 でも、

「少し、話をしよう。
 聞きたいことがある」

 俺はこいつの口から、何が起きているのか聞きたかった。
 こいつには、何度も助けられた。
 命を助けられた。
 年始の時なんて、俺が頼んでもいないのに勝手に助けに来やがった。
 それらの借りをまだ返せていない。
 しかし、掴んでいた手を振り払われる。

「俺には話したいことがない」

 廊下のど真ん中で、拒否された。
 ここで、そう、少しだけぷっつんと来た。
 部屋に戻ろうとするヤマトの腕をもう一度掴んで、そのまま空いている方の手で肩を掴み、壁に勢いよく押し付けた。

「おい、お前、いい加減にしろよ??
 お前には話したいことがなくても、俺にはあるんだよ。
 お前は、今朝俺を手伝わせた。
 その分の返しがあってもいいだろ??」

「あ、アレはお前が勝手に着いてきただけだろ!!」

「言いつけ破って出ていこうとしたのは、てめぇだろうが!!」

「……っ!
 そう、だけどさ。
 だって、ほっとけないだろ!!
 家族や友達が困ってたんだから!!
 それを勝手にしゃしゃり出てきて、転移した時、お前が巻き込まれて死なないように俺が、どんだけ頭フル回転させてたとおもってる!?
 リィエンさんがいてくれて、どれだけ俺が安心したかわかるか??!!」

「はあ?!
 知るか、そんなん!!」

「もういいから、俺のことは放って置いてくれよ!
 お前には関係ないだろ!!」

友達お前があきらかに、悩んで苦しんでるのに放っておけるわけないだろ!!
 お前が今までやってきた事と、どこが違うか言ってみろ!!」

 さらにヤマトが言い返そうとしてくる。
 そこに、寮母さんの声が届いた。

「二人とも、口喧嘩するなら談話室来なさい。
 アイスティーいれてあげるから」

 そこで、一旦頭が冷えた。
 それはヤマトも同じようで。
 そして、俺と口喧嘩をする気もあるようだった。
 先行するように、ヤマトが俺の拘束を逃れて、談話室に向かって歩き出す。
 過保護なノームに叱られるかなと思ったが、出てこなかった。
 少し丸まって小さくなったヤマトの背中に、俺はこう言葉を投げた。

「関係ないなんて、言うなよ。
 悲しいだろ、そんなん」

 ヤマトが、ピタッと足を止めた。

「…………」

 けれど、こちらを振り返ることはなく、言葉を返すこともなく。
 そのまま、談話室に向かっていった。
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