上 下
110 / 142
スレ民はにはお見通し♡

裏話16 農高でこき使われたブランの話

しおりを挟む
 ここに来る直前、ヤマトから血の匂いがした。
 てっきり傷が開くかなにかしたものと思っていた。
 けれど、見る限りアイツは普通だった。
 普通に立って歩いている。
 その両隣には、同じように汚れているものの元気そうな男子が二人。
 その男子たちと、ふざけながら、笑いながら歩いてくる。

「あ、いたいた。
 どうでした、ブランは?」

 ヤマトがこちらに声をかけてきた。
 声を向けられたのは、リィエンだった。

「んー、まぁまぁ??
 魔法ってのはすごいねぇ、あやかりたいわ」

 リィエンはそう答えた。
 魔法よりもステゴロでサイクロプス倒す方が、普通に凄いと思うんだけどなぁ。
 俺が変なんだろうか??

「あー、そうだ一つ訂正しておくと、私生徒会長になったんだわ」

「知ってます、キーリたちから聞きました。
 凄いですね、あの風紀委員をぶっ飛ばしたってことでしょ?」

 なんかとても物騒な会話が始まった。
 どうして、風紀委員をぶっ飛ばすことが生徒会長になることに繋がるのだろう。

「プラス、先輩後輩合わせて100人抜きしたよ。
 去年の秋にね」

「おお、凄い!
 先代生徒会長に勝ったってことですね」

「なんとかねぇ」

 100人抜きして、先代の生徒会長に勝つ??
 ……農業高校には、俺の知らない慣習があるんだなぁ。
 途中で俺は思考を放棄した。
 ぼんやりと、ヤマトと旧友たちのやりとりを眺める。
 と、そこで気づいた。
 リィエンが、ヤマトを見ながら不思議そうな顔をしている。
 そして、それとなくタケルや、ヤマトの友人たちを見て、考え込んでしまう。
 その間に、掲示板を確認した。
 やり取りをしていると、実況者名義でレイドまで現れた。
 とりあえず、ある程度の助言をもらって、一時的に掲示板から落ちた。
 リィエンが丁度、会話を切り上げて何故か俺を見てきたところだった。
 目が合った。

 そして、

差し入れ魔族ブラン君、ちょっと、大事な話がある」

 なんて言って、俺の方へ来ると腕を捕まれ、連行されてしまった。
 生徒たちから離れた場所に来ると、難しそうな顔でこう言ってきた。

「成り行きとはいえ、ヤマトが君をここに連れてきた。
 そして、君を私たちに託した。
 それだけ、ヤマトにとって君が特別なんだろう。
 でも、その時に、違和感があった。
 どんな成り行きで、君がここに来たのかは知らない。
 聞く気もない。
 けれど、ヤマトにとっての特別枠かもしれない君に確認しておきたいことがある」

 リィエンはそう言うと、いまだこちらの友人達と楽しそうに笑いあっているヤマトを一瞥した。

「彼は、何に巻き込まれている??」

「………」

「君はなにか知っているか??」

「……どうして、そう思うんですか?」

「質問を質問で返されるのは好きじゃない。
 が、そうだな。
 たしかに不思議だろうな。
 私とヤマトは似ているところが多い。
 特に、育った環境とか諸々だ。
 まぁ、私にはさすがに【龍神様の後継者】になれるような器も才能も無かったけれど。
 まぁ、だからか、ヤマトもそうだが私も鼻がいいんだ。
 ヤマトのやつ、怪我をしてるだろう??
 血の臭いに混じって、魔法に似た臭いがした。
 たぶん、呪いだ」

 ドクンっと、心臓が大きく嫌な音を立てた。
 ヤマトの腹の傷が呪いかもしれない。
 それは、スレ民たちが考察したものと同じだったからだ。
 いや、リィエンのそれは考察ではなく、実際にヤマトと話して体感したことだ。

「あのヤマトが易々と怪我をして呪いを受けた、なんて信じられないし、ありえない。
 アイツは、この私と唯一渡り合える人間だ。
 けれど、現状としてアイツは怪我をしているし、呪いを受けている」

 ドクンドクン、と。
 心臓がうるさく鳴る。

「なぁ、ヤマトに何が起きている??
 ブラン君は、それを知っているんだろ??」

 どこか確信を持っている、問だった。

「……それは」

 言うべきだろうか?
 ここは、この人は、アイツが信頼している人だ。
 そして、たった1年だけだけれど、先輩だ。
 なによりも、一目見てヤマトの置かれいる状況を察することができた。
 誰も教えていないのに。
 なにも知らないはずなのに。
 言うか言わまいか、俺が迷っていると、ヤマトが俺を呼んだ。

「ブランー!
 腹ごしらえしたし、もう帰るぞー!!」

 そこでリィエンが嘆息する。
 そして、俺の手を取ると、サインペンをどこからともなく出して、その手のひらにサラサラとなにか書いた。
 数字だった。

「私の携帯の番号だ。
 なにかあったら、連絡してくれ。
 今日の手伝いのお礼に、力を貸してやる」

「あ、ありがとうございます!!」

 礼を言う俺に、リィエンはヒラヒラと手を振った。
 そして、俺たちは寮に戻ってきた。
 同時に、抜け出したことがバレていて、二人揃って寮に軟禁されることになった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

嫌われ魔眼保持者の学園生活 ~掲示板で実況スネーク活動してるんだけど、リアルで身バレしそうwww~

一樹
ファンタジー
嫌われ者が趣味で楽しくおもしろく過ごす話です。

【救世主】さぁ、世界を救おうじゃないか少年【プロジェクト】

一樹
ファンタジー
とある少年が、世界が滅んで家族とか全滅して、それをなんとかする話です。 なんとかしようってとこで終わってます。 肥やしにしとくのもアレなんで投下します。 気まぐれに、続きを書くかもしれないので完結設定にはしていません。 よろしくお願いします。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

【緊急】村で人喰いモンスターが暴れてるらしい【事態】

一樹
ファンタジー
サメ映画をパク……、オマージュした異世界パニックモノです。 掲示板話です。 ジャンルにパニックが無かったので、ファンタジーにしてます。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。 目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。 今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる! なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!? 非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。 大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして…… 十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。 エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます! エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!

島流しなう!(o´・ω-)b

一樹
ファンタジー
色々あって遭難したスレ主。 生き延びるためにスレ立てをした。 【諸注意】 話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。 絶対に真似しないでください。

処理中です...