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二年生になりました(笑)
裏話5
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***
そう言えば、教務室と職員室の違いってなんなんだろ?
小学校にあったのは、教務室だったし。
中学には逆に教務室がなくて職員室があった。
この学園だと、小学校と同じで教務室だ。
職員室はない。
もしかしたら違いなんて無いのかもしれない。
なんてことをぼんやり考えつつ、俺はディアナとともに教務室へと足を踏み入れた。
すでに各教室では朝会が始まっているだろう。
しかし、落し物の確認に来たのだから咎められることはないはずだ。
ディアナを見れば、少し顔色が悪かった。
「失礼しまーす」
とりあえず、さっさと用事を済ませよう。
俺のあとに、ディアナも小さな声で、
「し、しつれいします」
と続けた。
同時に視線が突き刺さる。
クラスを受け持っていない教員たちが何人か、こちらを見ていた。
中にはあからさまに睨みつけてきた者もいる。
居心地は最悪だ。
一年の時に散々痛感したんだけどなぁ。
喉元過ぎればなんとやらだ。
自分に腹が立つ。
ここは、そういう場所だったのをすっかり忘れてた。
「ちょっと落し物をしたので確認したいんですけど」
言うだけ言ってみる。
しかし、ほぼ全員素知らぬ振りだ。
まるで、俺たちをいないもののように扱っている。
しかし、目的の箱――落し物を詰め込まれた箱は、出入口近くにあった。
なので、俺はディアナへその箱の存在を教える。
念には念を入れて、俺は箱には触れないでおいた。
冤罪防止だ。
それくらいされるだろうなという、防止策だ。
ディアナが、箱に気づいて手を伸ばそうとした時、声がかかった。
すぐ近くの机からだった。
見れば、白衣姿の教師が立ち上がり、こちらへやってきた。
柔和な笑みを浮かべる、男性教師だ。
「落し物ねー、何を落としたの?」
その男性教師の姿を見て、ディアナが体をビクつかせた。
「えっと、携帯を」
「……届いてたかなぁ」
なんて言って、白衣の教師が返してきた。
箱を開けて、確かめる。
そこを俺も覗き込んだ。
同時に、なんかどこかで嗅いだような匂いがフワッと漂った。
しかし、それは一瞬のことだった。
ま、いいか。
それより箱の中身は、と。
文房具、よく分からない縫いぐるみのキーホルダー、マニキュア、リップ、ハンカチ、ポケットティッシュ等など。
携帯電話はなかった。
俺は、今だ顔を青くしてカタカタ震えているディアナを振り返る。
「無いな」
「そ、そうですか」
見るからにディアナがホッとする。
そのやり取りを見て、白衣の教師が、
「あ、君じゃなくてディアナの方か。
なるほどなるほど」
なんて言って、ディアナを見た。
続けて、
「まぁ、そのうち届くと思うから、昼休みにでもまた来なさい」
「あ、はい」
俺が答えるのと、ディアナが、
「あ、ありがとうございました!!
失礼しました!!」
そう言って、駆け出すのは同時だった。
「え? あっ!
し、失礼しました!!」
俺も慌てて、ディアナを追いかけた。
直ぐに追いついた。
ディアナは、生徒玄関のところで蹲っていた。
「……大丈夫か?」
俺が声をかけると、彼女は昨日と同じく目にいっぱい涙をためていた。
「せんぱ~い、ありがとうございました」
そして、そう口にした。
「そんなにあの先生が怖かったのか?」
「あ、えっと、その」
言いづらいことを聞いてしまった。
話そうか、話すまいか迷っているようだ。
俺は自分の携帯で時間を確認した。
すでに授業は始まっている時間だ。
今から授業に出るのは、ダルい。
ディアナをこのまま放置するのも気が引ける。
なので、
「……ディアナは本を読む人だったりする??」
俺はそう聞いてみた。
――――――――……
「一日数分間の読書って、ストレスを軽減するらしいぞ」
「そうなんですか?」
他クラスが授業で図書室を使っていた。
そこに、何食わぬ顔で入っていく。
さも、資料を探しに来ましたという顔で堂々と時間を潰すための本を選ぶ。
本を選び終えると、1番奥のとくに人が寄り付かない、そして死角になっている本棚の陰へと2人並んで腰を下ろした。
「あんまり本は読まないから、知らないです。
それに、本ってとても高価じゃないですか」
「高価って、まぁたしかに新品で買うと高いけど。
古本屋なんかに行くと、子供の小遣いで大人買い出来るくらい安価になってるけど」
「そうなんですか?」
「そうだよ。
あのラノベ含めた文庫本のコーナーだって、図書委員が古本屋に行って買ってきてるらしいし。
そのせいか、歴代の図書委員の好みが反映されてて、けっこう面白い小説とか、いまは絶版になってる作品とか多いし。
でも、たぶん、ディアナが想像する本より読みやすいものばかりだと思う」
「へぇ。
どれかオススメはありますか?」
興味を持ったのか、ディアナが聞いてきた。
「そうだなぁ。
ディアナはどんな話が好きなんだ?」
「どんな?」
「あるだろ?
いくら小説を読まなくても、テレビドラマとかで見る好きなジャンル」
「ドラマ??」
「もしかして、ディアナは舞台とかが好きな人だったりする?」
「あ、演劇ですか!
そうですね、恋愛モノは好きです。
以前、教会の先生に連れて行ってもらって観たんです」
教会、あ、幼稚園がそこだったのかな。
教会がやってる幼稚園も珍しくないし。
しかし、幼児に恋愛モノを見せるとは中々大人な教育をしている幼稚園だったんだろう。
俺、幼稚園も保育園もまともに行ったことないから知らないけど。
話を聞いたら、彼女が観劇したのは有名な悲恋ものだった。
たぶん、子供向けにソフトに作られてるやつだとは思うが。
本を読もうとしてここに来たが、結局お喋りで時間が潰れた。
そして、気づけば午前が終わり、昼休みとなっていた。
そう言えば、教務室と職員室の違いってなんなんだろ?
小学校にあったのは、教務室だったし。
中学には逆に教務室がなくて職員室があった。
この学園だと、小学校と同じで教務室だ。
職員室はない。
もしかしたら違いなんて無いのかもしれない。
なんてことをぼんやり考えつつ、俺はディアナとともに教務室へと足を踏み入れた。
すでに各教室では朝会が始まっているだろう。
しかし、落し物の確認に来たのだから咎められることはないはずだ。
ディアナを見れば、少し顔色が悪かった。
「失礼しまーす」
とりあえず、さっさと用事を済ませよう。
俺のあとに、ディアナも小さな声で、
「し、しつれいします」
と続けた。
同時に視線が突き刺さる。
クラスを受け持っていない教員たちが何人か、こちらを見ていた。
中にはあからさまに睨みつけてきた者もいる。
居心地は最悪だ。
一年の時に散々痛感したんだけどなぁ。
喉元過ぎればなんとやらだ。
自分に腹が立つ。
ここは、そういう場所だったのをすっかり忘れてた。
「ちょっと落し物をしたので確認したいんですけど」
言うだけ言ってみる。
しかし、ほぼ全員素知らぬ振りだ。
まるで、俺たちをいないもののように扱っている。
しかし、目的の箱――落し物を詰め込まれた箱は、出入口近くにあった。
なので、俺はディアナへその箱の存在を教える。
念には念を入れて、俺は箱には触れないでおいた。
冤罪防止だ。
それくらいされるだろうなという、防止策だ。
ディアナが、箱に気づいて手を伸ばそうとした時、声がかかった。
すぐ近くの机からだった。
見れば、白衣姿の教師が立ち上がり、こちらへやってきた。
柔和な笑みを浮かべる、男性教師だ。
「落し物ねー、何を落としたの?」
その男性教師の姿を見て、ディアナが体をビクつかせた。
「えっと、携帯を」
「……届いてたかなぁ」
なんて言って、白衣の教師が返してきた。
箱を開けて、確かめる。
そこを俺も覗き込んだ。
同時に、なんかどこかで嗅いだような匂いがフワッと漂った。
しかし、それは一瞬のことだった。
ま、いいか。
それより箱の中身は、と。
文房具、よく分からない縫いぐるみのキーホルダー、マニキュア、リップ、ハンカチ、ポケットティッシュ等など。
携帯電話はなかった。
俺は、今だ顔を青くしてカタカタ震えているディアナを振り返る。
「無いな」
「そ、そうですか」
見るからにディアナがホッとする。
そのやり取りを見て、白衣の教師が、
「あ、君じゃなくてディアナの方か。
なるほどなるほど」
なんて言って、ディアナを見た。
続けて、
「まぁ、そのうち届くと思うから、昼休みにでもまた来なさい」
「あ、はい」
俺が答えるのと、ディアナが、
「あ、ありがとうございました!!
失礼しました!!」
そう言って、駆け出すのは同時だった。
「え? あっ!
し、失礼しました!!」
俺も慌てて、ディアナを追いかけた。
直ぐに追いついた。
ディアナは、生徒玄関のところで蹲っていた。
「……大丈夫か?」
俺が声をかけると、彼女は昨日と同じく目にいっぱい涙をためていた。
「せんぱ~い、ありがとうございました」
そして、そう口にした。
「そんなにあの先生が怖かったのか?」
「あ、えっと、その」
言いづらいことを聞いてしまった。
話そうか、話すまいか迷っているようだ。
俺は自分の携帯で時間を確認した。
すでに授業は始まっている時間だ。
今から授業に出るのは、ダルい。
ディアナをこのまま放置するのも気が引ける。
なので、
「……ディアナは本を読む人だったりする??」
俺はそう聞いてみた。
――――――――……
「一日数分間の読書って、ストレスを軽減するらしいぞ」
「そうなんですか?」
他クラスが授業で図書室を使っていた。
そこに、何食わぬ顔で入っていく。
さも、資料を探しに来ましたという顔で堂々と時間を潰すための本を選ぶ。
本を選び終えると、1番奥のとくに人が寄り付かない、そして死角になっている本棚の陰へと2人並んで腰を下ろした。
「あんまり本は読まないから、知らないです。
それに、本ってとても高価じゃないですか」
「高価って、まぁたしかに新品で買うと高いけど。
古本屋なんかに行くと、子供の小遣いで大人買い出来るくらい安価になってるけど」
「そうなんですか?」
「そうだよ。
あのラノベ含めた文庫本のコーナーだって、図書委員が古本屋に行って買ってきてるらしいし。
そのせいか、歴代の図書委員の好みが反映されてて、けっこう面白い小説とか、いまは絶版になってる作品とか多いし。
でも、たぶん、ディアナが想像する本より読みやすいものばかりだと思う」
「へぇ。
どれかオススメはありますか?」
興味を持ったのか、ディアナが聞いてきた。
「そうだなぁ。
ディアナはどんな話が好きなんだ?」
「どんな?」
「あるだろ?
いくら小説を読まなくても、テレビドラマとかで見る好きなジャンル」
「ドラマ??」
「もしかして、ディアナは舞台とかが好きな人だったりする?」
「あ、演劇ですか!
そうですね、恋愛モノは好きです。
以前、教会の先生に連れて行ってもらって観たんです」
教会、あ、幼稚園がそこだったのかな。
教会がやってる幼稚園も珍しくないし。
しかし、幼児に恋愛モノを見せるとは中々大人な教育をしている幼稚園だったんだろう。
俺、幼稚園も保育園もまともに行ったことないから知らないけど。
話を聞いたら、彼女が観劇したのは有名な悲恋ものだった。
たぶん、子供向けにソフトに作られてるやつだとは思うが。
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