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実家帰省編
裏話11
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カタログを暫く眺めていたら、予想外の人物がやってきた。
母親だった。
「あんたって子はーー!!」
頼む、キーキー声で怒鳴らないでくれ。
「昔っから突っ走ると、ろくな事にならないんだから!!
昔っから口酸っぱくして母さん言ってたでしょ?!
周りはちゃんと見なさいって!!
ほんとにもう!!
それで手足、どっちが無くなったの?
え、片方ずつ??
とりあえず、ほら、母さんのお古上げるから付けなさい!
持ってきたから!!
新しいの出来るまでそれで我慢、って、なにその顔は?」
「いや、母さん、義手だったの?」
十五年生きてきて初めて知ったんだけど。
「あんたはそんなこと気にしなくていいの!!」
いや、普通に気になるんだけど。
ん?
義手だけじゃない、義足もあるぞ。
それも両手両足分。
え、待って待って、ちょっと待って?
これって、つまり。
え、どうしよう意味がわかると怖い話が目の前に、母親の姿して突っ立ってるんだけど。
「このクソ忙しい時に仕事増やさないでよ!」
あ、はい、すんません。
「ほら、着替え。
その義足は嵌めれば自動的にサイズ合うようになってるから。
付けたら普通に動かせるから」
こ、高性能ですね、お母様。
着替えと聞いてハッとする。
そうだ、片方づつだけど腕と足吹っ飛んだから自動的に聖魔学園のジャージも、その部分が消えてるんだった。
ちなみに、母親が持ってきたのは乾いてお日様の匂いがする農高のジャージだった。
受け取って、付けて、着替える。
その横で、母親が龍神族の爺ちゃんにペコペコ頭を下げていた。
「ほんっとに、うちの子達がご迷惑ばかりかけてすみません」
そんな母親に爺ちゃんが苦笑している。
「いやいや、それにしても、まだ持ってたのか」
「えぇ。予備として。
なんだかんだ、アレが1番しっくり来るんで使ってるんです。
無茶できますから。
ほら、ウチは旦那がクソで、義両親もクソですから。
多少無理無茶しないと大変なんですよ」
「親子だなぁ」
爺ちゃん、なんでそんなに感慨深そうに言うんだ。
あと母さん、息をするように身内をdisったな。
「で、この子の状態はどんな感じなんです?」
「とりあえず内臓がだいぶやられてた。元に戻したけど二、三日は念の為に流動食、お粥ね。
あと安静にさせておいた方がいい。
君とよく似てるから、これ以上は言わなくてもわかるな?
様子見ながらお粥の粘度上げていって。
ここだと落ち着かないだろうから、心配ならかかりつけ医のとこに行くこと」
「わかりました。ありがとうございました」
俺は母の義手と義足を付けて、ちょっと動いてみる。
おおお!
すげぇちゃんと動かせる。
普通の手足と変わんねぇ!!
走れるかな?
よし、ちょっと試してみよう。
「犬か!! ちょっと落ち着きなさい!!」
ソワソワと先にテントを出ようとしたら、母親に首根っこを引っ掴まれた。
テントの外に出ると、タケルとコノハに遭遇した。
タケルが気まずそうに視線を外し、コノハが目をうるませて抱きついてくる。
「よかったぁ!! 生きてたァ!!!!」
その横で、母親がスタスタと弟に近づいたかと思うと、ペシんっと弟の頭を引っぱたいた。
「シルフィーとディーネから聞いたけど、ブチ切れたって??
なにやってんの、もう!!
あんたも突っ走ると周りが見えないんだから!!
あの二人の言うことはちゃんと聞きなさいって母さん昔っから言ってるでしょ?!」
あー、そうだった、そうだった。
何気に母さんこういうの平等だったわ。
「ほら、お兄ちゃんにごめんなさいしたの??」
……どうしよう、扱いが幼児へのそれなんだけど。
母さんの中で弟が幾つ扱いなのか、物凄く気になる。
「……」
「むすっとしてちゃ、わかんないでしょ!」
「あー、母さん、母さん。
今回のは俺が全面的に俺が悪いから」
と、俺はコノハをひっぺがしながら言うと、母親と弟が全く同じ表情でキッと睨みつけてくる。
そっくり~。
「あんたは黙ってなさい!!」
「お人好しにも程があるだろ、このバカ兄貴!!」
あ、はい、すんません。
「なんであんな奴ら庇った!!」
弟がさらに怒鳴ってくる。
「なんでって、お前があいつら殺しそうだったから。
庇う価値とか、助ける価値があったかどうかはわからんけど。
救助対象者だったし。
あ、でも本音言うとさ、お前が殺す価値すらない人間殺して人殺しになんのは嫌だったから。
俺の腕と足程度でお前が犯罪者にならないんだったら安いもんだろ」
「兄ちゃんを殺してたかもしんないんだぞ!!
そこわかってんのか!!??」
「いやでも死んでないじゃん。ほれほれ、この通り元気だぞ」
「それは結果論だろ!!」
言って、弟は俺の胸ぐらを掴んでくる。
コノハがあわあわと止めようとしてくる。
「俺は、兄ちゃんを殺したかと思ったんだぞ!!
死なせたかとおもった!!」
俺の胸ぐらを掴む手が震えている。
声も震えていた。
「そっか、でも殺されなかったし。生きてるぞ。
大丈夫、大丈夫だから、な?
とりあえず落ち着けって」
胸ぐらを掴んでいた弟の手の力がゆるむ。
そして、顔を下に向けたかと思うと額を俺の胸へ押し付けてくる。
かと思ったら、小さく呟いた。
「……よかった。ほんとに。よかった。
殺してなくてよかった。
ごめん、兄ちゃん。生きててくれてありがと」
「いいよ。気にすんな」
母親だった。
「あんたって子はーー!!」
頼む、キーキー声で怒鳴らないでくれ。
「昔っから突っ走ると、ろくな事にならないんだから!!
昔っから口酸っぱくして母さん言ってたでしょ?!
周りはちゃんと見なさいって!!
ほんとにもう!!
それで手足、どっちが無くなったの?
え、片方ずつ??
とりあえず、ほら、母さんのお古上げるから付けなさい!
持ってきたから!!
新しいの出来るまでそれで我慢、って、なにその顔は?」
「いや、母さん、義手だったの?」
十五年生きてきて初めて知ったんだけど。
「あんたはそんなこと気にしなくていいの!!」
いや、普通に気になるんだけど。
ん?
義手だけじゃない、義足もあるぞ。
それも両手両足分。
え、待って待って、ちょっと待って?
これって、つまり。
え、どうしよう意味がわかると怖い話が目の前に、母親の姿して突っ立ってるんだけど。
「このクソ忙しい時に仕事増やさないでよ!」
あ、はい、すんません。
「ほら、着替え。
その義足は嵌めれば自動的にサイズ合うようになってるから。
付けたら普通に動かせるから」
こ、高性能ですね、お母様。
着替えと聞いてハッとする。
そうだ、片方づつだけど腕と足吹っ飛んだから自動的に聖魔学園のジャージも、その部分が消えてるんだった。
ちなみに、母親が持ってきたのは乾いてお日様の匂いがする農高のジャージだった。
受け取って、付けて、着替える。
その横で、母親が龍神族の爺ちゃんにペコペコ頭を下げていた。
「ほんっとに、うちの子達がご迷惑ばかりかけてすみません」
そんな母親に爺ちゃんが苦笑している。
「いやいや、それにしても、まだ持ってたのか」
「えぇ。予備として。
なんだかんだ、アレが1番しっくり来るんで使ってるんです。
無茶できますから。
ほら、ウチは旦那がクソで、義両親もクソですから。
多少無理無茶しないと大変なんですよ」
「親子だなぁ」
爺ちゃん、なんでそんなに感慨深そうに言うんだ。
あと母さん、息をするように身内をdisったな。
「で、この子の状態はどんな感じなんです?」
「とりあえず内臓がだいぶやられてた。元に戻したけど二、三日は念の為に流動食、お粥ね。
あと安静にさせておいた方がいい。
君とよく似てるから、これ以上は言わなくてもわかるな?
様子見ながらお粥の粘度上げていって。
ここだと落ち着かないだろうから、心配ならかかりつけ医のとこに行くこと」
「わかりました。ありがとうございました」
俺は母の義手と義足を付けて、ちょっと動いてみる。
おおお!
すげぇちゃんと動かせる。
普通の手足と変わんねぇ!!
走れるかな?
よし、ちょっと試してみよう。
「犬か!! ちょっと落ち着きなさい!!」
ソワソワと先にテントを出ようとしたら、母親に首根っこを引っ掴まれた。
テントの外に出ると、タケルとコノハに遭遇した。
タケルが気まずそうに視線を外し、コノハが目をうるませて抱きついてくる。
「よかったぁ!! 生きてたァ!!!!」
その横で、母親がスタスタと弟に近づいたかと思うと、ペシんっと弟の頭を引っぱたいた。
「シルフィーとディーネから聞いたけど、ブチ切れたって??
なにやってんの、もう!!
あんたも突っ走ると周りが見えないんだから!!
あの二人の言うことはちゃんと聞きなさいって母さん昔っから言ってるでしょ?!」
あー、そうだった、そうだった。
何気に母さんこういうの平等だったわ。
「ほら、お兄ちゃんにごめんなさいしたの??」
……どうしよう、扱いが幼児へのそれなんだけど。
母さんの中で弟が幾つ扱いなのか、物凄く気になる。
「……」
「むすっとしてちゃ、わかんないでしょ!」
「あー、母さん、母さん。
今回のは俺が全面的に俺が悪いから」
と、俺はコノハをひっぺがしながら言うと、母親と弟が全く同じ表情でキッと睨みつけてくる。
そっくり~。
「あんたは黙ってなさい!!」
「お人好しにも程があるだろ、このバカ兄貴!!」
あ、はい、すんません。
「なんであんな奴ら庇った!!」
弟がさらに怒鳴ってくる。
「なんでって、お前があいつら殺しそうだったから。
庇う価値とか、助ける価値があったかどうかはわからんけど。
救助対象者だったし。
あ、でも本音言うとさ、お前が殺す価値すらない人間殺して人殺しになんのは嫌だったから。
俺の腕と足程度でお前が犯罪者にならないんだったら安いもんだろ」
「兄ちゃんを殺してたかもしんないんだぞ!!
そこわかってんのか!!??」
「いやでも死んでないじゃん。ほれほれ、この通り元気だぞ」
「それは結果論だろ!!」
言って、弟は俺の胸ぐらを掴んでくる。
コノハがあわあわと止めようとしてくる。
「俺は、兄ちゃんを殺したかと思ったんだぞ!!
死なせたかとおもった!!」
俺の胸ぐらを掴む手が震えている。
声も震えていた。
「そっか、でも殺されなかったし。生きてるぞ。
大丈夫、大丈夫だから、な?
とりあえず落ち着けって」
胸ぐらを掴んでいた弟の手の力がゆるむ。
そして、顔を下に向けたかと思うと額を俺の胸へ押し付けてくる。
かと思ったら、小さく呟いた。
「……よかった。ほんとに。よかった。
殺してなくてよかった。
ごめん、兄ちゃん。生きててくれてありがと」
「いいよ。気にすんな」
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