【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】

一樹

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実家帰省編

裏話8

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 とりあえず先輩達は強制的に転移させよう、そうしよう。
 サイクロプスは弟とおばちゃん達に任せておけば、多分大丈夫だ。
 それこそ、下手な邪魔でも入ったら弟がいつかの俺のように大怪我をしかねない。
 跡と気配を頼りに、奥へ奥へと進んでいく。
 すると、泣き叫ぶ声が聴こえてきた。

 ――死にたくない死にたくない!! 
 ひぎゃぁぁあ!!??――

 こっちか!
 俺は声のした方へ急いだ。
 そして見つけたのは、走っていった二年生の一人とサイクロプスだった。
 他の二年生と、弟達の姿はない。

 抵抗したのかなんなのか。
 二年生の両足がグチャグチャにねじ切れている。
 ネジ切られた足は、すぐ側に立っていたサイクロプスがくっちゃくっちゃとまるでアタリメでも食べるかのようにしゃぶっている。
 弟の気配は近くにない。
 別個体か?
 わからない。
 とにかく、あの二年生を助けて処置しなければ失血死するだろう。
 自分の足が食べられる場面をみて、ショック死していないだけすごいけど。
 ニタニタと足をしゃぶりながら、サイクロプスが二年生へ手を伸ばす。
 
 「こんのっ!!」

 俺は、鉈を握りしめ、サイクロプスの腕へと振り下ろす。
 サイクロプスの腕がもげて、その場に落ちる。
 一方の本体の方は、何が起きたのかわからないまま尻もちをついている。
 俺は体を反転させて、その首を狩りとった。
 同時にしゃぶられていた足が吐き出された。
 うし、とりあえずこれでよしってぇええええ??!!
 腕切り落としたのに動きやがった!!
 二年生の情けない声が響く。
 血が足りないのか、どこかその声は弱々しい。

 俺は二年生を掴もうと動いている腕を蹴り飛ばす。
 蹴り飛ばされた腕は、近くの木に当たって動かなくなる。
 本体、胴体の方もとりあえず死んだようだ。
 周囲を警戒しつつ、俺はその時にはもうすでに意識が朦朧としつつある二年生へ近づいて、止血を施し、両足を回収して一緒に転移させた。
 龍神族の爺ちゃんの処置が間に合うのを願うしかない。

 サイクロプスの死骸も一応回収する。
 そして、さらに奥へ進もうとした時だ。
 銃声が聴こえてきた。
 気配を探る。微かに弟の気配を感じ取ることができた。

 こっちか。

 鉈を持ち直して、音と気配のある方へ急ぐ。
 すると、弟の怒鳴り声が聴こえてきた。

 「おい!? なにやってんだ??!!
 まだ近づくな!!」

 それに答えたのは、二年生連中だった。
 俺にやらせろー、引っ込んでろー、だのと弟と言い争う声が届く。
 現場にたどり着く。
 すると、倒れているのサイクロプスとそれに群がる二年生達が見えた。
 !!??
 頭吹っ飛ばせてない?!
 さっき俺が仕留めたのは、やはり別個体だったようだ。
 そして、他にもサイクロプスはいたということだ。
 おばちゃん達も、二年生達の行動が理解出来ず止めようとしている。
 
 「まだ危ないから!!」

 「なにやってんの?? こら糞ガキども!! 下がれ!!」

 温厚すぎて怒ることなんて殆どないディーネおばちゃんが怒鳴る。
 そりゃそうだ、目もそうだが首を落としていないサイクロプスはちゃんと死んでいるのか慎重に見極めなければいけない。
 死んだフリするやつがいるのだ。
 そして、今回はそれをするやつがいた。
 一体だけ、動いたのだ。
 弟が銃を向ける。
 しかし、その射程内に二年生がいて撃つのを躊躇した。
 おばちゃん達がサイクロプスに気づいて何らかの魔法を展開させる。
 しかし、魔法の発動にはタイムラグがある。
 たった数秒だが、今回はその数秒が仇となった。
 おばちゃん達の魔法の発動よりも、サイクロプスが動き出すのが早かったのだ。

 ま、に、あ、ええぇぇええ!!!
 
 俺が誰よりも早く、その場に躍り出ることができた。
 身体強化しといて良かった。
 ほんと、良かった。
 サイクロプスが狙っていたであろう、二年生を蹴り飛ばす。
 その時に、妙な既視感を覚えた。
 あ、やっべ、俺のバカバカ!!
 これドラゴンの時と同じじゃねーかぁぁあああ!!??

 思った時には遅かった。
 サイクロプスの持つ、巨大な棍棒が横殴りに襲いかかってきた。
 
 ガゴギバキバキぃ!!

 俺の身体が吹っ飛ばされた。
 やっべ! 体の中からしちゃいけない音がした!!
 俺はそのまま吹っ飛ばされて、地面を転がる。

 生きてる?
 俺、生きて!!??
 
 「げぼっ! ガバッがハッ!! オエッ」 

 生きてたけど尋常じゃない血を吐いてしまった。
 やべぇ、マジやばい。
 どれくらいヤバいかというと、物凄くヤバい。
 気が狂いそうな痛みが全身に走ってて、こっちもヤバい。

 なんとか顔だけ動かして、現状を把握しようとする。
 そんな俺の目に飛び込んできたのは、驚く弟とおばちゃんたち、そして二年生の面々。
 それと、ほかの二体のサイクロプスが動き始めている光景だった。

 「兄ちゃん!!」

 弟がこちらに来そうだったので、俺は声を絞り出した。
 
 「うしろだ」

 実際出たのは、掠れ声だった。
 でも、弟はすぐに反応してくれた。
 今度の射程内には、二年生はいない。
 弟は、銃をぶっぱなして二体を仕留め、俺を棍棒で殴り飛ばしたヤツの脳天もすぐに吹っ飛ばした。
 よし、とりあえずは大丈夫だな。
 
 一瞬意識が落ちて、しかしすぐに浮上した。

 大丈夫じゃねーよ!!
 今倒れたり死んだりしたら、農繁期に葬式出すことになる!!
 それだけは避けねば。
 
 「しる、おばちゃ」

 やっべ、声出ねぇ。
 それでも俺はおばちゃんを呼んでみた。
 すぐに龍神族の爺ちゃんのとこ連れて行ってくれと頼むために。

 でも、それどころじや無かった。
 俺が意識を失った一瞬のうちになにがどうなったのか、何故か弟がブチ切れていて、二年生達を殺す勢いで襲っていたのだ。

 弟ーー!!
 そいつら救助対象!!
 殺っちゃ、らめぇぇえええ!!
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