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実家帰省編
裏話6
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「そりゃ、知らなかったとはいえ災難だったねぇ」
なんて、額の傷の事情を聞いたコノハが肉塊を見つけて回収しながら言ってくる。
ちなみに、俺の額には現在でっかい絆創膏が貼られていた。
農業ギルドの職員さんが持ってきてくれたのだ。
「暴動が起きなくてほんと良かったよ」
そう口を挟んだのは、弟のタケルである。
「シルフィーのおばちゃん効果は大きかったかな、ほんと」
俺はしみじみと改めてそう思った。
持つべきものは権力、とは違うが、大精霊の知り合いである。
コノハが少し心配そうな声を出して言ってくる。
「ねぇ、ヤマト。
キーリから聞いたんだけど、大丈夫?」
キーリというのは、中学で知り合って、同じ農業高校に進学した悪友の一人である。
あ、そういえばアイツには、入院のこととか話してたんだっけ。
「お貴族学校の授業中にドラゴンの襲撃受けて怪我したって聞いたけど」
それに反応したのは、弟だった。
「は? なにそれ??」
弟は不機嫌な声で、俺に聞いてくる。
「大したことじゃない。あの時は気ぃ抜いてたからさぁ」
と、誤魔化そうとするがまあ、無駄だった。
「気を抜いていると、王族様の代わりに毒を飲まされたりするの?
普通の学校じゃないよ」
「あ、いや、アレは事故、そう事故だから!!
俺やタケルはほら! 昔から山で野草とって食ってたじゃん?
だから耐性があってさ」
説明する俺に、弟がなんかめっちゃ怖い顔になる。
「兄ちゃんさ、ここでこんなこと言うのもなんだけど人助けも程々にしときなよ。
昔も俺助けようとして死にかけたことあるんだしさ」
「あったっけ? そんなこと??」
「あっただろ!!
龍神族の爺ちゃんが来てくれなかったら、兄ちゃんワーウルフに食い殺されてたんだぞ?!
いまだに俺、兄ちゃんの喉笛噛み切られた場面夢にみるんだからな!!?」
怒鳴られる。
あ、やべぇガチで怒らせた。
「そりゃ悪かった」
「悪いって思ってんなら、自重しろ!!」
「ねえ、今更だけどさ、ヤマトだけでも帰した方がよくない?
聖魔学園の生徒さんのせいで被害が拡大してるんだし。
ヤマトって昔からトラブルに巻き込まれるし、その度に大怪我することも多いし。
そこそこ強いヤマトがだよ?
大概怪我するの誰かを庇ったり助けたりした時だしさ」
コノハが真剣な顔でそう言ってくる。
「平気平気、大丈夫だって。
ほら、こうしてとりあえずピンピンしてるんだから」
なんて返したら、弟とコノハに盛大なため息を吐かれてしまった。
その様子を見て、クスクスとシルフィーおばちゃんとディーネおばちゃんが微笑ましそうに顔を綻ばせていた。
と、その直後だった。
木々の奥から、魔物の群れが現れ、襲撃された。
しかし、俺は秒でそれらを倒してみせた。
「な? 大丈夫だってこうやってちゃんと倒せるんだからさ。
それに、今怪我したら田植えに支障が出て母親に殺されるだろうし」
と、俺は言って見せた。
それに、である。
ここには学園の時とは違って、この二人がいるのだ。
だから、絶対大丈夫だという確信があった。
実技授業の時とは違うのだ。
まぁ、この約一時間後、俺は龍神族の爺ちゃんがいたテントにほぼ死んだ状態で運び込まれることになるんだけど。
それを知っていたなら、もうちょい慎重に行動していたんだけどなぁ。
後の祭りというやつだ。
なんて、額の傷の事情を聞いたコノハが肉塊を見つけて回収しながら言ってくる。
ちなみに、俺の額には現在でっかい絆創膏が貼られていた。
農業ギルドの職員さんが持ってきてくれたのだ。
「暴動が起きなくてほんと良かったよ」
そう口を挟んだのは、弟のタケルである。
「シルフィーのおばちゃん効果は大きかったかな、ほんと」
俺はしみじみと改めてそう思った。
持つべきものは権力、とは違うが、大精霊の知り合いである。
コノハが少し心配そうな声を出して言ってくる。
「ねぇ、ヤマト。
キーリから聞いたんだけど、大丈夫?」
キーリというのは、中学で知り合って、同じ農業高校に進学した悪友の一人である。
あ、そういえばアイツには、入院のこととか話してたんだっけ。
「お貴族学校の授業中にドラゴンの襲撃受けて怪我したって聞いたけど」
それに反応したのは、弟だった。
「は? なにそれ??」
弟は不機嫌な声で、俺に聞いてくる。
「大したことじゃない。あの時は気ぃ抜いてたからさぁ」
と、誤魔化そうとするがまあ、無駄だった。
「気を抜いていると、王族様の代わりに毒を飲まされたりするの?
普通の学校じゃないよ」
「あ、いや、アレは事故、そう事故だから!!
俺やタケルはほら! 昔から山で野草とって食ってたじゃん?
だから耐性があってさ」
説明する俺に、弟がなんかめっちゃ怖い顔になる。
「兄ちゃんさ、ここでこんなこと言うのもなんだけど人助けも程々にしときなよ。
昔も俺助けようとして死にかけたことあるんだしさ」
「あったっけ? そんなこと??」
「あっただろ!!
龍神族の爺ちゃんが来てくれなかったら、兄ちゃんワーウルフに食い殺されてたんだぞ?!
いまだに俺、兄ちゃんの喉笛噛み切られた場面夢にみるんだからな!!?」
怒鳴られる。
あ、やべぇガチで怒らせた。
「そりゃ悪かった」
「悪いって思ってんなら、自重しろ!!」
「ねえ、今更だけどさ、ヤマトだけでも帰した方がよくない?
聖魔学園の生徒さんのせいで被害が拡大してるんだし。
ヤマトって昔からトラブルに巻き込まれるし、その度に大怪我することも多いし。
そこそこ強いヤマトがだよ?
大概怪我するの誰かを庇ったり助けたりした時だしさ」
コノハが真剣な顔でそう言ってくる。
「平気平気、大丈夫だって。
ほら、こうしてとりあえずピンピンしてるんだから」
なんて返したら、弟とコノハに盛大なため息を吐かれてしまった。
その様子を見て、クスクスとシルフィーおばちゃんとディーネおばちゃんが微笑ましそうに顔を綻ばせていた。
と、その直後だった。
木々の奥から、魔物の群れが現れ、襲撃された。
しかし、俺は秒でそれらを倒してみせた。
「な? 大丈夫だってこうやってちゃんと倒せるんだからさ。
それに、今怪我したら田植えに支障が出て母親に殺されるだろうし」
と、俺は言って見せた。
それに、である。
ここには学園の時とは違って、この二人がいるのだ。
だから、絶対大丈夫だという確信があった。
実技授業の時とは違うのだ。
まぁ、この約一時間後、俺は龍神族の爺ちゃんがいたテントにほぼ死んだ状態で運び込まれることになるんだけど。
それを知っていたなら、もうちょい慎重に行動していたんだけどなぁ。
後の祭りというやつだ。
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