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実家帰省編

裏話5

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 現場となった山は、登山初心者向けの山らしい。
 その山道の入口近くの駐車場に、複数のテントが設置されていた。
 血の匂いがあちこちからする。
 それと、何故かあちこちから睨みつけられる。
 何だなんだ?
 今来たばっかなんだけど。
 その視線の答えはすぐにわかった。
 近くにいた小学生くらいの子供が石を投げつけてきて、こう言ったのだ。

 「お前たちが、よけいなことしたからこんなことになったんだ!!」
 
 と。
 意味がわからない。
 ちなみに投げられた石は、唐突過ぎて避けられず俺の額に当たった。
 額って切れやすいんだよなぁ。
 触ってみたら、やっぱり切れてた。
 しかし、これが引き金になって恐らく登山客達がじりじりと俺の事を取り囲み始める。
 殺気立ってるなぁ。
 しかし、ボランティアでここまで来てなんでこんな扱いを受けなきゃいけないんだ。

 「俺の子供を返せ!!」

 「なんであんなことをした!?」

 「この人殺し!!」

 「お前が魔物の餌になれば良かったんだ!!」

 んー、このままだと暴動が起きかねないな。
 さて、どうするか。
 下手なこと言って、この人たちを刺激しても大変だし。
 うーん??
 困っていたところに、ものすごく聞き覚えのある女性の声が届いた。

 「あ、いたいた!! タケちゃん! お兄ちゃんいたよ~」
 
 人混みの上からふよふよと飛んできたのは、シルフィーのおばちゃんだった。
 こっちこっち、と手招きしている。
 タケちゃんってことは、タケルか。
 あいつもここ来てたのか。
 名高いシルフィードの登場に、いい意味で空気が変わった。
 ざわざわと、俺を取り囲んでいた人達の殺気が戸惑いに変わっていく。

 「あーあー、それ今通ってる学校のジャージじゃない」

 ふわりと俺の前まで舞うようにして、シルフィーのおばちゃんがやってくると、開口一番そんなことを口にした。 

 「額も切れてるし。大丈夫? 殴られた?」

 おばちゃんが、苦笑しつつ聞いてくる。
 俺は、ちらりと石を投げた子供を見た。
 その子はビクリ、と体を強ばらせる。
 そして、俺とおばちゃんを交互に見た。
 あー、シルフィードと仲がいい=認められている=悪い人では無い。
 そんな認識の移り変わりが、俺に石を投げた子の中で一瞬で終わる。
 終わった、次の瞬間には青ざめていた。
 シルフィードのような大精霊含め、下級だろうがなんだろうが精霊と仲が良いということは、つまり契約していると言うふうにとられる。
 そういうものらしい。
 聖魔学園の座学で習った。 

 「転んだだけだよ。
 それより、この騒ぎはいったい何?」

 「今タケちゃん来るから、そしたら説明するわね」

 その間にも、石を投げた子供もそうだけどなんか意味不明な罵倒をしてきた大人達が顔を見合わせて、バツが悪そうにしている。
 シルフィーのおばちゃんの顔パスSUGEEEEEEE。
 タケちゃんこと、弟のタケルは人混みをかき分けながら現れた。

 俺はそっちに近づく。
 すると、さぁぁぁーっと人混みが割れた。 
 左右に割れて道ができた。
 おおー。これはいい。
 歩きやすくなった。
 そこを通って、俺は弟とおばちゃんにとあるテントへ案内された。 
 魔物の襲撃を受けて、一番ヤバい怪我をした人達がいるテントだ。
 テントに入ると、さながら地獄絵図が広がっていた。
 達磨状態だったり、顔の半分が吹き飛ばされていたり、黒焦げだったり、内蔵がはみ出ていたり。
 不謹慎だが、ほぼ死んでるような人達が運び込まれていた。
 その人達を片っ端から蘇生、治癒している存在がいた。
 龍神族の爺ちゃんである。
 ま、シルフィーのおばちゃんがいるってことは、そういうことだよなぁ。

 そこで聞いたところによると、聖魔学園の生徒がイキって、襲ってきた魔物へ余計なことをしたらしい。
 主に、攻撃魔法とか。攻撃魔法とか。攻撃魔法とか。
 冒険者ギルド派遣会社から派遣されてくる、専門職冒険者じゃあるまいに。
 それにより、被害が拡大。
 攻撃されて激怒した魔物たちが、群れを呼び寄せこんな有り様になってしまったらしい。
 爺ちゃんの措置が間に合わず、亡くなる人も増えてるとか。
 そりゃ何も知らなければ、被害者や被害者遺族は聖魔学園のジャージを着てる俺のこと憎むわな。
 傍から見れば仲間だと思われるのは必須だ。
 つーか、聖魔学園のやつらなんでわざわざ学校指定のジャージ着てきてるんだよ。
 金持ちなら、アウトドアショップでそれなりの動きやすい服買えよ。
 金持ちなら、登山用のちゃんとした服用意しとけよ。
 俺がいい迷惑だ。
 その説明が終わると、今度は農業ギルドの職員さんが弟を呼びに来た。
 俺も知ってる人で、事情を話すとなんというか物凄く同情してくれた。
 農業ギルドの方にも学園から助っ人が来る、という連絡が入ってたらしい。
 てっきり教師が来るものと考えていたら、まさかの生徒。
 しかし、ある意味勝手知ったる俺だったので安心したようだった。
 不慣れな人間が来たら、また余計なことをするかもしれないと考えていたようだ。
 その気持ちはよくわかった。

 次々に、犠牲者が運ばれてくるテントから出て山の地図を渡され、とりあえず今の時点までにわかったことなどの説明を聞く。
 ほとんど弟やシルフィーのおばちゃんが説明してくれたこととかわりなかった。
 俺は、聖魔学園の生徒の救出が仕事だが、その途中で他の遭難者や被害者の一部を見つけたら転移、回収してきて欲しいとの事だった。
 そして弟もいるので、一緒に行動することになった。

 そこに、シルフィーのおばちゃんがディーネおばちゃんと一緒にやってきた。
 龍神族のじいちゃんが、危ないだろうからということで俺達について行ってやれ、と言われたらしい。
 さて、出発、となった時だ。
 またも知り合いが現れた。

 「あ! ヤマトにタケル!!
 来てたんだ!!」

 幼なじみのコノハだった。
 どうやら彼女も農業ギルドから招集されたようだった。
 今年の農家はどこもかしこも人手不足に陥りつつあるようだ。

 どうせなら、と三人で山の中に入ることになった。
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