上 下
47 / 142
実家帰省編

裏話3

しおりを挟む
 母親に、学校で結界とか直す勉強しなかったのか?
 またもヒステリック気味にそう聞かれる。
 本当のことを言っても仕方ないので、まだ習っていないと伝えておいた。
 返ってきたのは、やっぱりキーキー声の『ほんっと、使えない』という言葉だった。
 言い返したり、推しである弟がなにか言っても余計機嫌が悪くなるだけなので、俺たち兄弟は疲れたアイコンタクトを交わすだけだった。
 農業ギルドにも連絡したので、夕方までには職員が来て直してくれるそうだ。
 
 そうこうしているうちに昼になった。
 念の為にと、母親が俺に見張り番を言いつけてきた。
 これはこのまま忘れられるパターンだ。
 よくあるのだ。
 おにぎりもってくれば良かったかな、とちょっと後悔した。
 ま、いいか。近くに木の実とかなってるし。
 食べられる野草も多い。
 言えばいいのだろうけど、逆ギレしかされないので昔みたいに言い返すことはもうしたくない。
 疲れるからだ。
 ほんと、疲れるからだ。

 「あとでご飯持ってくる」

 さて、何の木の実を食べようか?
 そう考えていたら、弟が言ってきた。
 おお! 気遣いが出来るようになっている!!

 「ん、わかった。待ってる」

 そうして、母親と弟を見送った後。
 入れ違いで、幼なじみがやってきた。

 「お、いたいた! 久しぶり、ヤマト」

 手をぶんぶん振ってくる。
 振る度に、なんというか、たゆんたゆんと、女性特有の膨らみが揺れる。
 ブラジャーの存在意義について俺は紳士な思考を巡らせる。
 ……こいつ、また胸大きくなってないか?
 大丈夫か?
 変な男に襲われても、大丈夫か。
 こいつ強いし。

 「久しぶり、コノハ」

 「ほい、差し入れ持ってきた。おばさん相変わらずそうだからさ」

 「マジか! ありがとう!!」

 持つべきものはご飯をくれる幼なじみである。
 渡されたのは、麓のコンビニやスーパーで買ったらしい菓子パンやジュースだ。
 二人分ある。
 弟の分かなと考えていたら、他ならない幼なじみ、コノハの分だった。
 
 「……痩せた?」

 コノハが眉を寄せて聞いてくる。

 「環境が変わったからなぁ。ストレスで体重落ちた」

 「そっか。
 ……友達できた?」

 「んー、まぁ、一応」

 適当な場所に腰を下ろして、俺とコノハは菓子パンとジュースを食べながら、雑談を交わす。

 「そっか。彼女はできた?」

 やっぱりその辺は女の子だからか気になるらしい。
 俺はパタパタと手を振って、

 「いないいない、そんなん」

 そう答える。
 逆に聞き返した。

 「お前こそ彼氏出来たん?」

 「いないいない、そんなん」

 コノハがきっぱりさっぱり答えてきた。
 そして、続けて聞いてきた。

 「作らないの?」

 「無理無理。あの学校じゃ農民はそういうのの対象外だから」
 
 なんて返せば、何故かちょっと安心したような顔をされた。
 変な女に引っかかってないか心配してたんだろうな。
 こいつ昔からそういうお姉さん的なところあったし。

 「そっか、ねぇ、じゃあさ」

 コノハが更に続けてこようとする。
 しかし、弟が弁当をもってやってきた。

 「あ、コノハじゃん。久しぶり」

 コノハがジト目でタケルを見る。
 そして、返す。

 「久しぶり。タケルも元気そうだね」

 と、今度は俺を見て、

 「んじゃ、うちの手伝いも忘れないでね?
 明明後日だから!」

 と言って立ち上がり、残りの菓子パンを食べて去っていった。
 俺と弟はそんなコノハを見送る。
 菓子パンだけじゃ足りないので、弟が持ってきてくれた弁当を食べる。
 育ち盛りだからねぇ。午後も頑張らないとだし。
 
 「爺ちゃん達から伝言、今日はとくにモンスターが山奥から出てきてるらしいから気をつけろってさ」

 「マジか。わかった」

 早く農業ギルドの人来てくれないかなぁ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

嫌われ魔眼保持者の学園生活 ~掲示板で実況スネーク活動してるんだけど、リアルで身バレしそうwww~

一樹
ファンタジー
嫌われ者が趣味で楽しくおもしろく過ごす話です。

【救世主】さぁ、世界を救おうじゃないか少年【プロジェクト】

一樹
ファンタジー
とある少年が、世界が滅んで家族とか全滅して、それをなんとかする話です。 なんとかしようってとこで終わってます。 肥やしにしとくのもアレなんで投下します。 気まぐれに、続きを書くかもしれないので完結設定にはしていません。 よろしくお願いします。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

【緊急】村で人喰いモンスターが暴れてるらしい【事態】

一樹
ファンタジー
サメ映画をパク……、オマージュした異世界パニックモノです。 掲示板話です。 ジャンルにパニックが無かったので、ファンタジーにしてます。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

島流しなう!(o´・ω-)b

一樹
ファンタジー
色々あって遭難したスレ主。 生き延びるためにスレ立てをした。 【諸注意】 話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。 絶対に真似しないでください。

処理中です...