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魔法学園交流編

裏話7 ~交流試合のメンバーを辞退しろと言われた話 前編~

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 「この学園が実力主義なのは知ってるよな?
 学年主任やらもろもろの役割と役割上の仕事はともかく、教師も強ければ強いほど発言権が強くなる。
 他の小煩いやつらは黙らせたから、のびのび出来るぞ」

 ここがほかの教師の目がない、資料準備室で良かった。

 「嫌ですよ!! 出たくない!!」

 「なんで?」

 「めんどくさいから!
 あと変なやつらにイチャモンつけられるに決まってる!
 それに、他の生徒、やる気のある奴らが適任だとおもう!」

 「んー、でも、お前を推すのは俺だけじゃないんだよなぁ。
 小煩いやつらを黙らせるのに、ダメ押しで生徒会長が協力してくれたし」

 この数時間の間になにやってんだ。
 
 「あ、そうだ。思い出した」

 言いつつ、糞担任は指を軽く左右に振る動作をする。
 すると、空が切れてなにやら書類のようなものが出てきた。

 「これ、生徒会長から預かってたんだ。
 お前、ドラゴン襲撃のあと入院してただろ。
 それ関連の書類。
 サインが欲しいんだと。ここな」

 ペンまで渡してくる。
 書類を簡単に読む。
 怪しいものでは無かった。
 生徒会長が代理で支払いをしてくれたので、それを俺が依頼しましたよ、という書類だ。
 手続きなどもしてもらったのは事実なので、俺は疑わずにその書類にサインして、担任に渡した。

 「はい。それじゃ、交流試合参加書類にもサインもらったし。
 これで正式にお前が選抜メンバーだ」

 言われて、頭が真っ白になる。
 担任が楽しそうに種明かしをしてくる。
 書類は、二枚重ねになっていた。
 間には、複写をするためのカーボン紙が挟まれている。
 そして、その下から出てきたのは交流試合への参加申込書だった。
 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!??
 嵌められた!!

 「ちなみにこれ、生徒会長の案な。
 末恐ろしいな、ほんと。
 生徒会長は将来詐欺師になったほうが稼げそうだ」

 担任が呑気にそんなことを呟いた。
 そして、もう1つ。
 俺が人間不信になりそうな事実を告げてきた。

 「推薦人、ダメ押しでマレブランケにも一筆書いてもらったんだよ。
 いやぁ、お前愛されてんね?」



 そんなやり取りから明けて翌日のことだ。
 やっぱりな、という感想しか出てこない。
 そりゃ、こうなりますよね。
 俺はほかのクラスの奴に呼び出されるようになってしまった。
 嫌な予感しかしないので、無視しつつげ、逃げ続けていたのだが、三日目に拉致られてしまった。
 他のクラスのやつらは事情を知らない。
 俺が、選抜メンバーに選ばれた不本意すぎる経緯を知らない。
 だからか、好き勝手言ってくる。

 どんなズルをしたんダーとか。
 お前みたいな奴が選ばれるなんてありえないーとか。

 いや、うん。
 俺もそう思う。
 言いたいことは、痛いほどよくわかる。
 しかし、これだけは言わせてほしい。
 ドラゴン倒したのは嘘じゃない。
 本当のことを公表しろとか言われてもなぁ。
 この連中の中では、俺はドラゴンなんて倒していないし、選抜メンバーになったのも嘘である、とされている。
 それが彼らにとっての本当のことなのだ。
 彼らにとっての本当を認めろ、認めろ、認めろ。
 認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ認めろ。
 そして、その上で学園の皆様に謝罪しろ、と言ってくる。
 
 加えて、最終的に口々にそいつらはこう言ってきた。
 異口同音というやつだ。

 『お前なんかよりエル・フォン・ファランクスの方が、選抜メンバーに相応しい。
 だから今すぐ出場を辞退しろ』
 
 この時、俺は初めて二周目チート野郎の名前が、エル・フォン・ファランクスだと知った。
 けったいな名前だな。
 その名前が出てから、さらに俺への説得は白熱していく。
 前から思ってたんだけど、こういうのはそういうのを管理している責任者に言うべきだろう。
 当事者に言うより、そっちの方が早いだろうに。
 あー、でもアレかそうすると自分たちにも責任が出てくる。
 ノーリスクで当事者になるには、助言を装って口出しするのが1番だもんな。
 なにかあっても、助言した方は知らん顔できるし。

 というか、そろそろ俺の話も聞いて欲しいところだ。

 あ、疲れてきたかな。
 よし、頃合だ。
 俺が口を開こうとした時だ。
 どこからとも無く現れた、二人の男女。
 女の子の方が、体を戦慄かせて歩み寄ってきたかと思うと、怒鳴った。

 「寝言は寝て言え、ド畜生どもが!!!!」

 ビリビリと空気が震えた。
 すんごい怒ってるのがわかる。
 あ、この子、エルリーさんだ。
 クッキーくれた図書委員さん。
 エルリーさんって、怒ると怖いんだな。
 普段がおっとりした感じで、怒るなんてことを知らない人かと思ってた。
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