31 / 142
魔法学園交流編
裏話2 ~糞担任視点、中編~
しおりを挟む
とりあえず、赴任したはいいものの、肝心の生徒の姿が無かった。
調べてみたら、入院中だという。
(あー、内臓破裂とか言ってたっけ?)
教師陣、経営陣ともにバタバタしていた。
先日起きたドラゴン襲撃事件の余波である。
その理由があるとはいえ、かなりタイトなスケジュールで準備させるのはどこも一緒のようだ。
死ねばいいのに。
それにしても、とアールはヤマト・ディケについての情報に首を傾げる。
「……元農高生にしちゃ、違和感があるな」
襲撃してきたドラゴンは二匹。
農業高校で聞いていた話が本当ならば、件の生徒、ヤマトならば無傷でさっさと倒せるレベルのはずだ。
普通の農高の一年生なら、班を組んで罠を駆使すれば倒せるだろう。
しかし、アールに入ってきた情報はどれも彼が怪我をした、というものばかりだった。
他にも疑問点が多々あった。
例えば、彼が怪我で病院に運ばれた時間。
他の生徒とズレている。
たった一人だけ、ズレている。
遅いのだ。
ヤマトだけ、病院に搬送された時間が遅いのである。
後になって不調が出てきたということも考えられなくはないが、どうにもその場にいた生徒たちからの情報によると、ドラゴンの尻尾で全身を叩きつけられたらしいとある。
救急隊員へ、痛みを訴えていたという証言もあった。
アールは屑だが、それがなにを意味しているのかわからないほど馬鹿でも無かった。
「なるほど」
情報によると、今は生徒会長の計らいで他の生徒達とは別の病院に入院中である。
「さて、どうするかなぁ」
やはり気になるのは、怪我をした経緯だ。
どうしても、あの農業高校の生徒だと知っていると、尻尾の攻撃くらい避けられたんじゃね? という考えが捨てきれない。
「そもそもなんで逃げきれなかったんだ?」
最初の救助の際に搬送してもらえなかった理由は、想像がつく。
残る疑問はやはり、なんで逃げ遅れたのか? である。
生徒の証言、それらをまとめた書類を漁る。
今後の授業の参考にすると言えば、簡単に貸してくれた書類を漁る。
事前に、ヤマトがそのドラゴンを倒したというのは知っていた。
それを踏まえて、書類を調べて、アールは合点がいった。
無かったのだ。
こういう場合、一つくらいありそうな証言が無かったのだ。
「全員が全員、ヤマトがドラゴンを倒したって言ってるって、嘘くせぇな」
そう、一人くらい居そうなものなのだ。
一つくらい、『彼が助けてくれた』という、そんな証言があっても良さそうなものなのに、不思議なほどそんな証言は無かった。
その代わりとばかりに記載されている証言は、ヤマト・ディケがドラゴンを倒したというものばかりだ。
「十中八九、編集してるな」
改竄でもなんでもいいが、そういうことなのだろう。
彼のような存在が支持を得ている、その事実を消そうとしているかのようだ。
それでも、ドラゴンを倒したという一点だけは真実だから書き換えることが出来なかったのか。しなかったのか。
「さて、どうするかなぁ」
報酬を前払いで受け取った以上、その分の働きはしなくてはならない。
ツマミでもつけてもらえば良かったかなとか思ってしまう。
「あ、そうか。聞きに行けばいいのか」
アールが出した答えは至極単純だった。
生き残りの生徒にそれとなく話を聞けばいい。
しかし、手間がかかる。めんどくさい。
だが、また別の案が浮かんできた。
こちらもとても単純な案だった。
だが、これなら一人に聞けばいいのだ。
わざわざ話を聞きに行くという面倒と手間は変わらないが、一人だけなのでまだ楽のはずだ。
「天下の生徒会長様はどんな反応するのかねぇ」
調べてみたら、入院中だという。
(あー、内臓破裂とか言ってたっけ?)
教師陣、経営陣ともにバタバタしていた。
先日起きたドラゴン襲撃事件の余波である。
その理由があるとはいえ、かなりタイトなスケジュールで準備させるのはどこも一緒のようだ。
死ねばいいのに。
それにしても、とアールはヤマト・ディケについての情報に首を傾げる。
「……元農高生にしちゃ、違和感があるな」
襲撃してきたドラゴンは二匹。
農業高校で聞いていた話が本当ならば、件の生徒、ヤマトならば無傷でさっさと倒せるレベルのはずだ。
普通の農高の一年生なら、班を組んで罠を駆使すれば倒せるだろう。
しかし、アールに入ってきた情報はどれも彼が怪我をした、というものばかりだった。
他にも疑問点が多々あった。
例えば、彼が怪我で病院に運ばれた時間。
他の生徒とズレている。
たった一人だけ、ズレている。
遅いのだ。
ヤマトだけ、病院に搬送された時間が遅いのである。
後になって不調が出てきたということも考えられなくはないが、どうにもその場にいた生徒たちからの情報によると、ドラゴンの尻尾で全身を叩きつけられたらしいとある。
救急隊員へ、痛みを訴えていたという証言もあった。
アールは屑だが、それがなにを意味しているのかわからないほど馬鹿でも無かった。
「なるほど」
情報によると、今は生徒会長の計らいで他の生徒達とは別の病院に入院中である。
「さて、どうするかなぁ」
やはり気になるのは、怪我をした経緯だ。
どうしても、あの農業高校の生徒だと知っていると、尻尾の攻撃くらい避けられたんじゃね? という考えが捨てきれない。
「そもそもなんで逃げきれなかったんだ?」
最初の救助の際に搬送してもらえなかった理由は、想像がつく。
残る疑問はやはり、なんで逃げ遅れたのか? である。
生徒の証言、それらをまとめた書類を漁る。
今後の授業の参考にすると言えば、簡単に貸してくれた書類を漁る。
事前に、ヤマトがそのドラゴンを倒したというのは知っていた。
それを踏まえて、書類を調べて、アールは合点がいった。
無かったのだ。
こういう場合、一つくらいありそうな証言が無かったのだ。
「全員が全員、ヤマトがドラゴンを倒したって言ってるって、嘘くせぇな」
そう、一人くらい居そうなものなのだ。
一つくらい、『彼が助けてくれた』という、そんな証言があっても良さそうなものなのに、不思議なほどそんな証言は無かった。
その代わりとばかりに記載されている証言は、ヤマト・ディケがドラゴンを倒したというものばかりだ。
「十中八九、編集してるな」
改竄でもなんでもいいが、そういうことなのだろう。
彼のような存在が支持を得ている、その事実を消そうとしているかのようだ。
それでも、ドラゴンを倒したという一点だけは真実だから書き換えることが出来なかったのか。しなかったのか。
「さて、どうするかなぁ」
報酬を前払いで受け取った以上、その分の働きはしなくてはならない。
ツマミでもつけてもらえば良かったかなとか思ってしまう。
「あ、そうか。聞きに行けばいいのか」
アールが出した答えは至極単純だった。
生き残りの生徒にそれとなく話を聞けばいい。
しかし、手間がかかる。めんどくさい。
だが、また別の案が浮かんできた。
こちらもとても単純な案だった。
だが、これなら一人に聞けばいいのだ。
わざわざ話を聞きに行くという面倒と手間は変わらないが、一人だけなのでまだ楽のはずだ。
「天下の生徒会長様はどんな反応するのかねぇ」
5
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
【緊急】村で人喰いモンスターが暴れてるらしい【事態】
一樹
ファンタジー
サメ映画をパク……、オマージュした異世界パニックモノです。
掲示板話です。
ジャンルにパニックが無かったので、ファンタジーにしてます。
喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜
田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。
謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった!
異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?
地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。
冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
島流しなう!(o´・ω-)b
一樹
ファンタジー
色々あって遭難したスレ主。
生き延びるためにスレ立てをした。
【諸注意】
話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。
絶対に真似しないでください。
農民レベル99 天候と大地を操り世界最強
九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。
仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて――
「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」
「片手で抜けますけど? こんな感じで」
「200キロはありそうな大根を片手で……?」
「小麦の方も収穫しますね。えい」
「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですけど?」
その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。
日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。
「これは投擲用大根だ」
「「「投擲用大根???」」」
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる