30 / 142
魔法学園交流編
裏話1 ~糞担任視点、前編~
しおりを挟む
「先生!! なぁ! 聖魔学園行くって本当!?」
とある農業高校。
今日も今日とて、生徒たちが生き物と触れ合っている。
週に二回の休みといえど彼らに休みはない。
生徒に休みが無いのだから、それを監督する教師にも休みはない。
クソかな?
クソだね。
この環境が、ほんと糞。
玉打ちに行きてぇ。馬もいいかもしれない。
家畜小屋にいるのじゃなくて、競走するほうの馬。
ビール片手に勝った時は、また最高なんだよなぁ。
そんなことを頭の中で繰り返してつつ、家畜や作物の世話をしている生徒の様子を見てまわっていると、生徒に声を掛けられた。
生徒の肩には退治したのだろう、どデカいクマのモンスターの姿がある。
それをポイッと放り出して、その生徒は非常勤教師のその男へ生徒は駆け寄る。
やる気無し、死んだ魚みたいな目をした教師だ。
「よく知ってんね」
ポリポリと頭を掻きながら、その教師は答える。
とても怠そうだ。
「本当なんだな!?
なら、これ! こいつ!!
こいつに会うかもだよな?!」
言いつつ、その生徒が見せてきたのはこの農業高校のジャージをきて、モンスターの屍を積み上げた山の上で、なんか指を天に指して馬鹿っぽいポーズをとっている生徒の画像だった。
『俺こそ最強』とか言ってそうな画像である。
「待て待て、誰それ?」
こんな生徒いただろうか?
画像に写っているモンスターたちは、1年生で倒すにはかなり無理がある等級のものばかりだ。
いや、ちゃんと役割をそれぞれにこなせば、そこまで無理ではないが。
「先生は、コイツと入れ替わりでここに来たもんな」
そう前置きをして、その生徒は話し始めた。
その教師――アールがこの農業高校にやってきたのは夏休み明けだった。
夏休みの合宿中に、教師の一人が魔物に遭遇して大怪我を負った。
その教師が復帰するまでの穴埋めとして、雇われたのだ。
日がな一日、酒を飲んでパチンコを打って、金が無くなったら適当に害獣指定の魔物を狩って金を作ってダラダラするという、理想的な生活に終止符を打つべく、アールの家族と親戚がありとあらゆるコネを使って、短期の非常勤という働き口を持ってきたのだ。
一言で言うなら、アールという男は屑である。
ホントなら働きたくなどない。
男でも女でも誰でもいいから養って欲しいと常日頃から夢想し、実行に移そうとしている程度には屑である。
さて、この生徒の話によると、画像の生徒――ヤマト・ディケは家族やこの農業高校の大人たちによって、あの名門校【聖魔学園】に売られたらしい。
そろそろ契約期間が切れて、アールも御役御免となる。
またしばらくダラダラ過ごすぞーと、うきうきしていたら、先日、今度はその【聖魔学園】から来てくれとお達しがあった。
誰が行くかバカタレ。
朝は寝床でグッスリして、昼から酒を引っ掛けてパチンコに行って、あとはダラダラ過ごすという、とても素敵な計画があるというのに。
アル中一歩手前のクズ男に、そもそも子供を預かるような仕事をさせるとか狂気の沙汰でしかない。
彼は、自覚のある屑なのだ。
そう突っぱねたのに、なんか実技の授業で教師が死んで数が足りないとか、少なくともそういういざと言う時のための実力者が足りないとか色々言われた。
突っぱねたら、家族から総スカン食らって、そこで働くことが決まっていた。
世間体を気にしすぎだろ。
あと、家を出たんだからほっといてくれとなんど思ったことか。
生徒の言葉は続いていた。
「一応、ネットとか電話とかで連絡は取り合ってるんだけど。
どうも向こうに行ってから、ヤマトのやつ怪我が増えてるみたいなんだ。
毒味したとか、内臓破裂で入院したとかさ。
笑って冗談みたいに言ってたけど、心配なんだ。
ほら、金持ち連中って俺たちみたいな下のやつらのこと道具か、その歯車程度にしか考えてないだろ?
俺がなんど聞いても、平気平気っていってまともに取り合わないしさ」
「うんうん、それで?」
早く残暑厳しいこんな場所からは離れて、クーラーのガンガンきいた場所に行きたい。
そんなことを考えながら、アールは聞き返した。
「だからな、先生は優しいし、先輩やほかのどの先生よりも強いからコイツのこと助けてほしい。
金持ち連中から守ってほしいんだ。
殺されないようにさ。ね? 頼むよ!!
このお願い聞いてくれたら、新米と大吟醸酒、先生にあげるからさ」
いや、その金持ち連中の親が雇い主なんだけどな。
思ったが、口には出さなかった。
「米はいいや、その代わりその大吟醸酒を二ダースで手を打とう」
やる気無し、死んだ魚の目をしていたそこに生気が満ちていた。
酒は彼にとっての回復薬なのである。
もう酒と結婚したいとか思ってるくらいには、彼は酒が大好きなのだ。
米も好きだが、洗う手間とか諸々考えると邪魔でしかないので断った。
とある農業高校。
今日も今日とて、生徒たちが生き物と触れ合っている。
週に二回の休みといえど彼らに休みはない。
生徒に休みが無いのだから、それを監督する教師にも休みはない。
クソかな?
クソだね。
この環境が、ほんと糞。
玉打ちに行きてぇ。馬もいいかもしれない。
家畜小屋にいるのじゃなくて、競走するほうの馬。
ビール片手に勝った時は、また最高なんだよなぁ。
そんなことを頭の中で繰り返してつつ、家畜や作物の世話をしている生徒の様子を見てまわっていると、生徒に声を掛けられた。
生徒の肩には退治したのだろう、どデカいクマのモンスターの姿がある。
それをポイッと放り出して、その生徒は非常勤教師のその男へ生徒は駆け寄る。
やる気無し、死んだ魚みたいな目をした教師だ。
「よく知ってんね」
ポリポリと頭を掻きながら、その教師は答える。
とても怠そうだ。
「本当なんだな!?
なら、これ! こいつ!!
こいつに会うかもだよな?!」
言いつつ、その生徒が見せてきたのはこの農業高校のジャージをきて、モンスターの屍を積み上げた山の上で、なんか指を天に指して馬鹿っぽいポーズをとっている生徒の画像だった。
『俺こそ最強』とか言ってそうな画像である。
「待て待て、誰それ?」
こんな生徒いただろうか?
画像に写っているモンスターたちは、1年生で倒すにはかなり無理がある等級のものばかりだ。
いや、ちゃんと役割をそれぞれにこなせば、そこまで無理ではないが。
「先生は、コイツと入れ替わりでここに来たもんな」
そう前置きをして、その生徒は話し始めた。
その教師――アールがこの農業高校にやってきたのは夏休み明けだった。
夏休みの合宿中に、教師の一人が魔物に遭遇して大怪我を負った。
その教師が復帰するまでの穴埋めとして、雇われたのだ。
日がな一日、酒を飲んでパチンコを打って、金が無くなったら適当に害獣指定の魔物を狩って金を作ってダラダラするという、理想的な生活に終止符を打つべく、アールの家族と親戚がありとあらゆるコネを使って、短期の非常勤という働き口を持ってきたのだ。
一言で言うなら、アールという男は屑である。
ホントなら働きたくなどない。
男でも女でも誰でもいいから養って欲しいと常日頃から夢想し、実行に移そうとしている程度には屑である。
さて、この生徒の話によると、画像の生徒――ヤマト・ディケは家族やこの農業高校の大人たちによって、あの名門校【聖魔学園】に売られたらしい。
そろそろ契約期間が切れて、アールも御役御免となる。
またしばらくダラダラ過ごすぞーと、うきうきしていたら、先日、今度はその【聖魔学園】から来てくれとお達しがあった。
誰が行くかバカタレ。
朝は寝床でグッスリして、昼から酒を引っ掛けてパチンコに行って、あとはダラダラ過ごすという、とても素敵な計画があるというのに。
アル中一歩手前のクズ男に、そもそも子供を預かるような仕事をさせるとか狂気の沙汰でしかない。
彼は、自覚のある屑なのだ。
そう突っぱねたのに、なんか実技の授業で教師が死んで数が足りないとか、少なくともそういういざと言う時のための実力者が足りないとか色々言われた。
突っぱねたら、家族から総スカン食らって、そこで働くことが決まっていた。
世間体を気にしすぎだろ。
あと、家を出たんだからほっといてくれとなんど思ったことか。
生徒の言葉は続いていた。
「一応、ネットとか電話とかで連絡は取り合ってるんだけど。
どうも向こうに行ってから、ヤマトのやつ怪我が増えてるみたいなんだ。
毒味したとか、内臓破裂で入院したとかさ。
笑って冗談みたいに言ってたけど、心配なんだ。
ほら、金持ち連中って俺たちみたいな下のやつらのこと道具か、その歯車程度にしか考えてないだろ?
俺がなんど聞いても、平気平気っていってまともに取り合わないしさ」
「うんうん、それで?」
早く残暑厳しいこんな場所からは離れて、クーラーのガンガンきいた場所に行きたい。
そんなことを考えながら、アールは聞き返した。
「だからな、先生は優しいし、先輩やほかのどの先生よりも強いからコイツのこと助けてほしい。
金持ち連中から守ってほしいんだ。
殺されないようにさ。ね? 頼むよ!!
このお願い聞いてくれたら、新米と大吟醸酒、先生にあげるからさ」
いや、その金持ち連中の親が雇い主なんだけどな。
思ったが、口には出さなかった。
「米はいいや、その代わりその大吟醸酒を二ダースで手を打とう」
やる気無し、死んだ魚の目をしていたそこに生気が満ちていた。
酒は彼にとっての回復薬なのである。
もう酒と結婚したいとか思ってるくらいには、彼は酒が大好きなのだ。
米も好きだが、洗う手間とか諸々考えると邪魔でしかないので断った。
5
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
【救世主】さぁ、世界を救おうじゃないか少年【プロジェクト】
一樹
ファンタジー
とある少年が、世界が滅んで家族とか全滅して、それをなんとかする話です。
なんとかしようってとこで終わってます。
肥やしにしとくのもアレなんで投下します。
気まぐれに、続きを書くかもしれないので完結設定にはしていません。
よろしくお願いします。
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
【緊急】村で人喰いモンスターが暴れてるらしい【事態】
一樹
ファンタジー
サメ映画をパク……、オマージュした異世界パニックモノです。
掲示板話です。
ジャンルにパニックが無かったので、ファンタジーにしてます。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
島流しなう!(o´・ω-)b
一樹
ファンタジー
色々あって遭難したスレ主。
生き延びるためにスレ立てをした。
【諸注意】
話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。
絶対に真似しないでください。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる