10 / 142
【もう】おまいら、愚痴聞いてくれ【ヤダ(´;ω;`)】
裏話5
しおりを挟む
生徒達の魔法や武器が効かなかった理由は、物凄く単純なものだった。
練度が低い上、誰も戦い方を知らないのだ。
そりゃそうだ、と改めて思い直すしかなかった。
そんな日に何度も作物や家畜を狙って現れるドラゴンを退治する、なんてことは普通の家庭だとやらないのだ。
そもそも普通の家庭には愛玩動物はいても、家畜はいない。
プランターか、少し広めのレンタルできる土地での家庭菜園はあっても、農園のような広さで作物を育てる、なんてこともない。
だから、害獣に襲われることもその対処も知らないのだろう。
俺は走りつつ携帯端末を確認する。
ギリ圏内だ。
学園へ救援要請のメールを送る。
俺の事を信じて来てくれることを祈るしかない。
そもそも、である。
山で熊と遭遇したら刺激させないようにして逃げる、これが鉄則であり常識だ。
そして、これはドラゴンにも言える。
俺がさっき、鉈で倒したドラゴン。
あのドラゴンに遭遇した時に、刺激させず逃げるのが本来の正解だったのだ。
だけど彼らは魔法や武器で応戦してしまった。
きっと、教師達もそうなのだろう。
まぁ、いいや。それはもう終わったことだ。
さて、新しく現れたあのドラゴンは生徒達の怯えを理解しているようにも見えた。
理解した上で楽しんでいるように見えた。
猫が生け捕りにしたネズミや虫をジャレ殺す時のような、そんな感じである。
それでいて、俺の存在にも気づいているだろうに、まるでこちらの反応を窺っているようだ。
仲間を殺された怒りか、挑発しているのか。
少なくとも、すぐ殺せるのに生徒達を殺さないのは人質としての価値を理解している可能性がある。
人もドラゴンと同じく群れの仲間を助けに行く存在と理解しているのかもしれない。
現場に到着する。
生徒達があのドラゴンを倒そうと躍起になっていた。
「おい! お前らあっちに走れ!!」
俺は叫ぶ。
近くにいた名前も知らない生徒達の肩を掴んで、声をかける。
でも、
「うるさい!! さわるな!!」
「底辺が何しに来た?!」
「役立たずは引っ込んでろ!!」
「逃げるならお前だけで逃げろ!」
と、取り付く島もない。
誰も彼もが、恐怖を覚えつつもこのドラゴンを倒せば一躍英雄の仲間入りができる、とでも信じている顔をしていた。
そうこうしているうちに、ドラゴンが少し距離を置いてタメの姿勢になる。
まずい!!
俺は、近くにいた生徒二人を片手で引っ掴んでその場を飛び退く。
一瞬遅れて、今までいた場所。
生徒達が集まってドラゴンへ攻撃魔法を仕掛けていた場所に、炎が吐かれる。
ドラゴンの攻撃でも、最もポピュラーな吐息攻撃だ。
あっという間に、生徒達が火達磨になりバタバタと倒れ動かなくなる。
「うそ、うそ、いやぁ!!」
俺が引っ掴んでいた生徒の一人、女子生徒がそんな声をあげる。
もう一人は、今気づいたがあのモヒカンだった。
二人は、目の前の光景が受け入れがたいようで、固まっている。
俺は二人から手を離すと、言い聞かせる。
「おい!出口まで走れ!!そっちが近い!
早く!!」
「でも、でも!!」
「他の生徒達に伝えろ!ヤバいって!!
学園に連絡できるなら連絡とれ!
助けに来てもらわないと全滅する!!」
女子生徒は、それでもなんとか走り出した。
続いてモヒカンが走り出そうとして、体の向きを変えた。
見れば別の生徒が果敢にもドラゴンへ武器を手に突っ込んで行く姿があった。
あの生徒を助けに行ったようだ。
「どいつもこいつも!!」
俺は、吐き捨ててその背を追う。
モヒカンが、無謀な挑戦者に追いついた。
止めに入る。
言い争いが始まる。
その向こうでは暴れているドラゴン。
と、そのドラゴンの尻尾が二人へと襲いかかってきた。
「くぉんの!!」
俺は二人へ飛び蹴りをかます。
二人は吹っ飛び、なんとかドラゴンの尻尾からは逃れられた。
しかし、俺は逃げ遅れ尻尾の直撃を食らってしまう。
そこそこの大木に体が打ち付けられる。
くっそ痛てぇ!!
やっべ、ガチで骨折れたかも。
早めにケリつけるか。
ここまでドラゴンが暴れたなら多少他の生徒が巻き添えくっても、もう知らん。
よし、背骨と首は大丈夫だ。まだ体が動く。
俺はなんとか手放さないでおいた鉈を強く握り、なんとか地面に立つ。
そして、痛みを無視して走り出した。
足は幸い折れていないようで助かった。
思いっきり跳んで、ドラゴンの頭上を取る。
そして、鉈を振るう。
首が輪切りになって、ドラゴンの体が地に落ちた。
「毒餌、無駄になったか」
ま、仕方ない。
俺も落ちた。
しかし運良く木の枝に引っかかったので、二度目の全身打ち付けは回避出来た。
「あー、くっそ痛てぇ」
呟いた直後、下から声が届いた。
「おい!! いるか?! 無事か!!??」
見ると、あのモヒカンが叫んでいた。
「なんとかー」
俺は短く答えた。
それだけなのに、体へ激痛が走った。
そして、この直後学園から助けがやってきたのだった。
どうでもいいけど内臓やられてなけりゃいいな。
練度が低い上、誰も戦い方を知らないのだ。
そりゃそうだ、と改めて思い直すしかなかった。
そんな日に何度も作物や家畜を狙って現れるドラゴンを退治する、なんてことは普通の家庭だとやらないのだ。
そもそも普通の家庭には愛玩動物はいても、家畜はいない。
プランターか、少し広めのレンタルできる土地での家庭菜園はあっても、農園のような広さで作物を育てる、なんてこともない。
だから、害獣に襲われることもその対処も知らないのだろう。
俺は走りつつ携帯端末を確認する。
ギリ圏内だ。
学園へ救援要請のメールを送る。
俺の事を信じて来てくれることを祈るしかない。
そもそも、である。
山で熊と遭遇したら刺激させないようにして逃げる、これが鉄則であり常識だ。
そして、これはドラゴンにも言える。
俺がさっき、鉈で倒したドラゴン。
あのドラゴンに遭遇した時に、刺激させず逃げるのが本来の正解だったのだ。
だけど彼らは魔法や武器で応戦してしまった。
きっと、教師達もそうなのだろう。
まぁ、いいや。それはもう終わったことだ。
さて、新しく現れたあのドラゴンは生徒達の怯えを理解しているようにも見えた。
理解した上で楽しんでいるように見えた。
猫が生け捕りにしたネズミや虫をジャレ殺す時のような、そんな感じである。
それでいて、俺の存在にも気づいているだろうに、まるでこちらの反応を窺っているようだ。
仲間を殺された怒りか、挑発しているのか。
少なくとも、すぐ殺せるのに生徒達を殺さないのは人質としての価値を理解している可能性がある。
人もドラゴンと同じく群れの仲間を助けに行く存在と理解しているのかもしれない。
現場に到着する。
生徒達があのドラゴンを倒そうと躍起になっていた。
「おい! お前らあっちに走れ!!」
俺は叫ぶ。
近くにいた名前も知らない生徒達の肩を掴んで、声をかける。
でも、
「うるさい!! さわるな!!」
「底辺が何しに来た?!」
「役立たずは引っ込んでろ!!」
「逃げるならお前だけで逃げろ!」
と、取り付く島もない。
誰も彼もが、恐怖を覚えつつもこのドラゴンを倒せば一躍英雄の仲間入りができる、とでも信じている顔をしていた。
そうこうしているうちに、ドラゴンが少し距離を置いてタメの姿勢になる。
まずい!!
俺は、近くにいた生徒二人を片手で引っ掴んでその場を飛び退く。
一瞬遅れて、今までいた場所。
生徒達が集まってドラゴンへ攻撃魔法を仕掛けていた場所に、炎が吐かれる。
ドラゴンの攻撃でも、最もポピュラーな吐息攻撃だ。
あっという間に、生徒達が火達磨になりバタバタと倒れ動かなくなる。
「うそ、うそ、いやぁ!!」
俺が引っ掴んでいた生徒の一人、女子生徒がそんな声をあげる。
もう一人は、今気づいたがあのモヒカンだった。
二人は、目の前の光景が受け入れがたいようで、固まっている。
俺は二人から手を離すと、言い聞かせる。
「おい!出口まで走れ!!そっちが近い!
早く!!」
「でも、でも!!」
「他の生徒達に伝えろ!ヤバいって!!
学園に連絡できるなら連絡とれ!
助けに来てもらわないと全滅する!!」
女子生徒は、それでもなんとか走り出した。
続いてモヒカンが走り出そうとして、体の向きを変えた。
見れば別の生徒が果敢にもドラゴンへ武器を手に突っ込んで行く姿があった。
あの生徒を助けに行ったようだ。
「どいつもこいつも!!」
俺は、吐き捨ててその背を追う。
モヒカンが、無謀な挑戦者に追いついた。
止めに入る。
言い争いが始まる。
その向こうでは暴れているドラゴン。
と、そのドラゴンの尻尾が二人へと襲いかかってきた。
「くぉんの!!」
俺は二人へ飛び蹴りをかます。
二人は吹っ飛び、なんとかドラゴンの尻尾からは逃れられた。
しかし、俺は逃げ遅れ尻尾の直撃を食らってしまう。
そこそこの大木に体が打ち付けられる。
くっそ痛てぇ!!
やっべ、ガチで骨折れたかも。
早めにケリつけるか。
ここまでドラゴンが暴れたなら多少他の生徒が巻き添えくっても、もう知らん。
よし、背骨と首は大丈夫だ。まだ体が動く。
俺はなんとか手放さないでおいた鉈を強く握り、なんとか地面に立つ。
そして、痛みを無視して走り出した。
足は幸い折れていないようで助かった。
思いっきり跳んで、ドラゴンの頭上を取る。
そして、鉈を振るう。
首が輪切りになって、ドラゴンの体が地に落ちた。
「毒餌、無駄になったか」
ま、仕方ない。
俺も落ちた。
しかし運良く木の枝に引っかかったので、二度目の全身打ち付けは回避出来た。
「あー、くっそ痛てぇ」
呟いた直後、下から声が届いた。
「おい!! いるか?! 無事か!!??」
見ると、あのモヒカンが叫んでいた。
「なんとかー」
俺は短く答えた。
それだけなのに、体へ激痛が走った。
そして、この直後学園から助けがやってきたのだった。
どうでもいいけど内臓やられてなけりゃいいな。
4
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる