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黒いポスト:俺もいるぞ!(後編)
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翌日。
普通に学校が始まる。
最初に、その女子生徒が倒れているのを見つけたのは、用務員だった。
女子生徒は頭から血を流して倒れており、すぐに救急車が呼ばれたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
どうやら飛び降りだったようだ。
学校が開けられてすぐに登校した女子生徒は、自分の所属する三階にある教室へ行き、遺書を使用していた机に遺して頭から落ちた。
そして、即死だった。
遺書は、担任が回収し警察へ届ける。
その内容は、公表されることは無かった。
しかし、この日からこの教室に所属するもの達。
そう、自殺した女子生徒たちのクラスメイトと担任の周りで不可解なことが起こり始める。
たとえば、誰かにつけられている。
たとえば、物が無くなった。
頭上から、誰もいないのにピンポイントでバケツでぶちまけたような水が降ってくる。
さらに、幻覚、幻聴が始まった者もいた。
そのクラスの生徒達は次第に校内で村八分とされていった。
担任も、他の教師陣から距離をとられ孤立していく。
そして、気づいた時には学校中から無視されるようになっていた。
その存在を無いものとして扱われるようになったのだ。
しかし、それは彼らの体感であって表向きのデータでは出席も授業もされており、そのクラスの生徒の一人が村八分になっている証拠を抑えようとしても、表面化しにくい対応、要するに証拠にならないものしか集められなかった。
もしくは、その証拠集めのための機械の調子が急に悪くなり、なにも記録されていない、なんてこともあった。
中には弁護士に相談して、カメラの設置を試みるものもやはり壊れてしまう。
だから、世間一般で言うところの客観的な、学校ぐるみの嫌がらせの証拠は集めることはできず、さらに一人、また一人と不登校になっていった。
しかし、学校に来なくなった生徒達の環境も悲惨なもので。
ほぼ、クラスに所属する生徒がそうであるように幻覚と幻聴に悩まされることになる。
幻覚では、自室の壁やさらに自分の手足に目がついているように見える。
監視されている。
監視されている。
監視されている。
ある生徒は気分転換に自室の窓から外を眺めていると、こちらを凝視している黒いセーラー服の少女に気づいた。
毎日、毎日。
いや、常にその少女はこちらを見ているのだ。
消えない。帰らない。居なくならない。
ただ、常にこちらを見ているのだ。
家族に訴えて、追い払ってもらおうと思ったのにその少女は家族には見えていなかった。
居るのに!
そこに居るのに!!
泣きわめいて訴えても、家族からは疲れたような、うんざりとした反応が返ってくるだけだった。
やがて、そのクラスメイトは行動に出る。
家から父が所有しているゴルフバットを持ち出して、その監視しているセーラー服の少女に襲いかかったのだ。
昼間の凶行だった。
きっと捕まるだろう。
しかし、構わない。
正しいのは自分なのだから、そんな大した罪にはきっとならない。
正常な判断が出来なかったその生徒は、セーラー服の少女に何度もゴルフバットを振り下ろして叩きつけた。
セーラー服の少女の頭がぐちゃぐちゃになっていく。
「あひゃひゃひゃ、見たことか!!
ざまぁみろ!!」
生徒が吐き捨てた時。
背後から、声が聞こえた。
可愛らしい、でも感情のまるで乗っていない淡々とした声だ。
「貴方は死を望まれている」
振り向く。
「え?」
そこには、今しがたその生徒が頭をかち割ってぐちゃぐちゃにしたセーラー服の少女が立っていた。
「あら、すごい。痛くないの?」
棒読み、ではない。
しかし、声音に感情は乗っていない。
セーラー服の少女の言葉に、生徒の頭に激痛が走った。
「自傷行為でも、行き過ぎれば死ぬのよ。知らなかった?」
ふらり、とその生徒が倒れる。
「貴方は、いいえ、あなた達はイジメをして人を殺した罪を犯した。
その罪は裁かれることはない。
裁かれないからこそ、死を望まれた」
なんの話だ。
いったい、なんの話だ。
「知らないって幸せね。
でも、あなた達は自分の罪で自殺するの。
苦しんで、痛みにもがいてあがいて、苦しみ抜いて絶望して死ぬことを望まれている。
だってそれだけのことをしたんだから」
この日から数日かけて、そのクラスの生徒達は不可解な死を遂げていくことになる。
別々の場所で同時多発的に、死は広がって。
やがて、おさまった。
そのニュースを人伝に聞いた、件の学校がある街の隣街の小学生の間ではこの噂でもちきりだった。
「やっぱり、復讐さんが来たんだよ!!」
年の離れた姉や兄がいる者は、こぞってこの話をしたがった。
全滅したその教室へ通う生徒達は、最初に自殺した生徒へ酷いイジメをしていて、全員がイジメに加担していたわけでは無かったが、関わりたくないと無関係を装って助けようとしなかった。
だから、自殺した女子生徒はクラスメイトと担任への仕返しを復讐さんに頼んだのだ、と。
そう、噂しあい、囁きあった。
普通に学校が始まる。
最初に、その女子生徒が倒れているのを見つけたのは、用務員だった。
女子生徒は頭から血を流して倒れており、すぐに救急車が呼ばれたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
どうやら飛び降りだったようだ。
学校が開けられてすぐに登校した女子生徒は、自分の所属する三階にある教室へ行き、遺書を使用していた机に遺して頭から落ちた。
そして、即死だった。
遺書は、担任が回収し警察へ届ける。
その内容は、公表されることは無かった。
しかし、この日からこの教室に所属するもの達。
そう、自殺した女子生徒たちのクラスメイトと担任の周りで不可解なことが起こり始める。
たとえば、誰かにつけられている。
たとえば、物が無くなった。
頭上から、誰もいないのにピンポイントでバケツでぶちまけたような水が降ってくる。
さらに、幻覚、幻聴が始まった者もいた。
そのクラスの生徒達は次第に校内で村八分とされていった。
担任も、他の教師陣から距離をとられ孤立していく。
そして、気づいた時には学校中から無視されるようになっていた。
その存在を無いものとして扱われるようになったのだ。
しかし、それは彼らの体感であって表向きのデータでは出席も授業もされており、そのクラスの生徒の一人が村八分になっている証拠を抑えようとしても、表面化しにくい対応、要するに証拠にならないものしか集められなかった。
もしくは、その証拠集めのための機械の調子が急に悪くなり、なにも記録されていない、なんてこともあった。
中には弁護士に相談して、カメラの設置を試みるものもやはり壊れてしまう。
だから、世間一般で言うところの客観的な、学校ぐるみの嫌がらせの証拠は集めることはできず、さらに一人、また一人と不登校になっていった。
しかし、学校に来なくなった生徒達の環境も悲惨なもので。
ほぼ、クラスに所属する生徒がそうであるように幻覚と幻聴に悩まされることになる。
幻覚では、自室の壁やさらに自分の手足に目がついているように見える。
監視されている。
監視されている。
監視されている。
ある生徒は気分転換に自室の窓から外を眺めていると、こちらを凝視している黒いセーラー服の少女に気づいた。
毎日、毎日。
いや、常にその少女はこちらを見ているのだ。
消えない。帰らない。居なくならない。
ただ、常にこちらを見ているのだ。
家族に訴えて、追い払ってもらおうと思ったのにその少女は家族には見えていなかった。
居るのに!
そこに居るのに!!
泣きわめいて訴えても、家族からは疲れたような、うんざりとした反応が返ってくるだけだった。
やがて、そのクラスメイトは行動に出る。
家から父が所有しているゴルフバットを持ち出して、その監視しているセーラー服の少女に襲いかかったのだ。
昼間の凶行だった。
きっと捕まるだろう。
しかし、構わない。
正しいのは自分なのだから、そんな大した罪にはきっとならない。
正常な判断が出来なかったその生徒は、セーラー服の少女に何度もゴルフバットを振り下ろして叩きつけた。
セーラー服の少女の頭がぐちゃぐちゃになっていく。
「あひゃひゃひゃ、見たことか!!
ざまぁみろ!!」
生徒が吐き捨てた時。
背後から、声が聞こえた。
可愛らしい、でも感情のまるで乗っていない淡々とした声だ。
「貴方は死を望まれている」
振り向く。
「え?」
そこには、今しがたその生徒が頭をかち割ってぐちゃぐちゃにしたセーラー服の少女が立っていた。
「あら、すごい。痛くないの?」
棒読み、ではない。
しかし、声音に感情は乗っていない。
セーラー服の少女の言葉に、生徒の頭に激痛が走った。
「自傷行為でも、行き過ぎれば死ぬのよ。知らなかった?」
ふらり、とその生徒が倒れる。
「貴方は、いいえ、あなた達はイジメをして人を殺した罪を犯した。
その罪は裁かれることはない。
裁かれないからこそ、死を望まれた」
なんの話だ。
いったい、なんの話だ。
「知らないって幸せね。
でも、あなた達は自分の罪で自殺するの。
苦しんで、痛みにもがいてあがいて、苦しみ抜いて絶望して死ぬことを望まれている。
だってそれだけのことをしたんだから」
この日から数日かけて、そのクラスの生徒達は不可解な死を遂げていくことになる。
別々の場所で同時多発的に、死は広がって。
やがて、おさまった。
そのニュースを人伝に聞いた、件の学校がある街の隣街の小学生の間ではこの噂でもちきりだった。
「やっぱり、復讐さんが来たんだよ!!」
年の離れた姉や兄がいる者は、こぞってこの話をしたがった。
全滅したその教室へ通う生徒達は、最初に自殺した生徒へ酷いイジメをしていて、全員がイジメに加担していたわけでは無かったが、関わりたくないと無関係を装って助けようとしなかった。
だから、自殺した女子生徒はクラスメイトと担任への仕返しを復讐さんに頼んだのだ、と。
そう、噂しあい、囁きあった。
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