上 下
32 / 166
第二章:ひとりといっぴきから二人の旅立ち

032.教育実習生だった時!

しおりを挟む
 次の夢は教育実習の時に実習先の生徒とデートのような事をしたときだった。それは生徒のアサミの自宅近くの駅前商店街だった。

  「先生、一緒にプリクラ撮りましょ!」そういってアサミはタクヤの手を無理矢理引っ張ってプリクラのボックスに入っていた。タクヤは満更でもないというか、アサミの勢いに負けていた。

  しばらくしてプリントされてきたシールを見てアサミは驚いた。これは高校一年の時のわたしだと。プリクラのシールに写る自分の姿が三つ編みのお下げ髪をしていたからだ。着ていたのは懐かしい高校の夏の制服だった。青いスカートにブルーのラインが入った白いブラウス、そして赤いネクタイだった。当然ネコ耳ではなかった。

  「さあ、次はどこに行きますか、付いてきてくださいね」そういってアサミはまたタクヤの腕を引っ張っていた。その頃の自分はまだ世間知らずで怖いもの知らず、無鉄砲までに行動していたことを思い出した。

  でも、これって回想じゃないのかなと思った。だって夢だったら途中で変えられるはずだし思い切った行動をすることも出来るはずなのに、出来なかった。逐一、記憶にあるのと一緒だった。たしか、この時写したぷリクラはずっと財布に入れていて、空から墜ちて死んだ時も肌身外さず持っていたと。

  「永川さん、そんなにはしゃがなくてもいいじゃない! 僕はネコを連れてきただけだから」タクヤは少し困った顔をしていた。無理もないことだった。七つも年下の女の子に主導権を取られていたからだ。

  その時、アサミは次に起きた事を思い出した。たしかお父さんとばったり会ってしまったのだと。

 あの時の事を思い出した。たしかゲームセンターを出て、カラオケボックスにでもタクヤに連れて行ってもらいたいなあと、駅前広場を歩いていた時、いつもなら帰ってくるはずのな時間にもかかわらず、帰宅途中のアサミの父の永川広之進とばったり遭遇してしまったのだ。

  あの時、本当はアサミが引っ張り出したのに、タクヤが庇ってくれて娘さんを連れ出したのは僕ですと謝罪してくれたこと。その後、広之進が専門の刑事訴訟法の話を持ち出してきて、未成年者を連れまわすと場合によっては犯罪になる場合もあるのだと説教したことを思い出していた。

  しかし、分かっているはずなのに夢の中の二人は、あの時をリプレーするかのような行動を続けてしまった。アサミはタクヤの腕を引っ張るようにしてゲームセンターを出てしまった。そういえば、生前の永川亜佐美がこんなに男の人と積極的に付き合おうとしたのは、やっぱり最初で最後だったんだと思った。

  「永川さん。そんなに急いでどこに行くつもりなんだ? 君はまだ高一じゃないの!」

  タクヤはあの時と同じ台詞を言ったが、本当ならこの時が永遠に続けば良かったのにと思った。もし年齢差を超えてタクヤと付き合っていたら、若くしてアサミは死ぬことはなかったかもしれないし、タクヤもホームレスになることもなかったかもしれない。

  だから、高校生だったこの時代が幸せ絶頂だったかもしれない。そういえば、アサミの母も人生で最も輝いているのは、もしかすると高校生の時かもしれないと話していたことを思い出した。
  たしかに、そうかもしれなかった。高校生のとき、無限に可能性があるのだと少し信じていたのかもしれない。だからこそ、こうして大学生のタクヤを連れまわせることが出来たんだと。でも、この夢はただの回想なの、それとも・・・

 そう夢で思っていたところ、ばったりと父と遭遇してしまった。父の永川広之進教授はいつも大量の書籍と書類を入れたキャリーバックを持っていたので、すぐに分かった。それは相手も一緒だった。

  「アサミ! お前いったい何をしようとウロウロしているんじゃ! それに男と一緒とは。いくらなんでも・・・」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...