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20(悪夢 ケネス回想)
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カリンとローザがケネスに対するある作戦を相談している頃、ケネスは夢に落ちていた。その夢は過去に飛んでいた。ケネスからすればそれは悪夢であった。
オストラスの狂犬、それが若い時の少年騎士ケネスのあだ名だった。戦場で数多くの騎士を葬っていたからだ。オストラス帝国は大陸有数の超大国で周辺諸国を侵略し続けていた。その侵略行為は
”奪い尽くし、焼き尽くし、殺し尽くし”という残虐なものであり、恐れられていた。
だが、そんな悪魔のような行為は永遠に続けられなかった。国力無視の侵略戦争と、それを維持するための重税で国民だけでなく貴族さえも逃げ出すようになり、衰えていった。そして、最後の悪あがきとしてファスマティア王国へ侵略したことが運の尽きになった。主力が王国で苦戦している間に帝都で大規模な暴動から革命が勃発してしまった。
「ケネス! お前そこで踏ん張れ!」
もはや真面な判断が出来なくなっていた皇帝の指示でケネスは宮殿のエントランスで戦っていた。革命軍だけでなく周辺諸国からの派遣軍に完全に包囲されていた。帝国軍の大半は戦意を喪失し次々に降伏していった。その際、帝国を支えていた上流貴族や皇族たちは復讐に燃えた者たちによって粛清されていた。
それでも、ケネスは戦っていた。もう自分には戦いしかなかったから。生き残る意味なんてない、あるのは此処で死ぬだけだ! なぜなら多くの者を殺したし、その中には女子供もいた。そんな残虐行為をしても疑問もおもってもいなかった。でも、今は違っていた。戦場で討死するしか罪は償えないと。間違っているかもしれなかったが。
宮殿は炎上しはじめた。どうも、皇帝自らが火を放ったようだ。敵に打ち取られる前に自死を選んだようだ。もはや戦う理由はなくなっていた。それでもケネスは投降という事をしなかった。投降する事をしらなかったから・・・・
その時だった。目の前に現れた騎士が槍で激しく殴ってきた。その時、周囲で戦っていた者はケネス以外には誰も居なくなっていた。帝国軍最期の一人になっていたのに気づいていなかった。
「やめろ! 命を粗末にするな! 貴様がやめなければこの戦は終わらねえぞ!」
ケネスは覚悟していた、殺されると。でも騎士は馬から降りてきて手を取った。
「もう終わった、帝国は滅びた。犠牲になる必要はない! まだ若いからやり直せる!」
それがツーゼとの出会いであった。その後は彼の元で競技としての騎士として働くことになったが、その時はまだ抵抗した。すると、ツーゼは槍で押さえつけた。
「狂犬よ! 貴様を殺すのはたやすいが、生きて償ってもらうぞ! わかったか!」
その時、気を失っていったところで夢から覚めてしまった。
「なんでなんだ! なぜ見るのだ昔を!」
ケネスはものすごく汗をかいていた。外を見ると朝になったようだ。ケネスはぼんやりとしていた。なんで、そんな夢を見たのだろうかと。あれから二十年も生きているけど、これほど鮮明に思い出す事はなかった。
「俺って・・・やっぱり所帯を持ってはいけないよな? あれほど殺してしまったから・・・」
ケネスは改めて自分が過去に犯した蛮行を恥じていた。それなのに、まさか求愛されるとは思ってもいなかった。まさに青天の霹靂な事が起きようとしていた。
オストラスの狂犬、それが若い時の少年騎士ケネスのあだ名だった。戦場で数多くの騎士を葬っていたからだ。オストラス帝国は大陸有数の超大国で周辺諸国を侵略し続けていた。その侵略行為は
”奪い尽くし、焼き尽くし、殺し尽くし”という残虐なものであり、恐れられていた。
だが、そんな悪魔のような行為は永遠に続けられなかった。国力無視の侵略戦争と、それを維持するための重税で国民だけでなく貴族さえも逃げ出すようになり、衰えていった。そして、最後の悪あがきとしてファスマティア王国へ侵略したことが運の尽きになった。主力が王国で苦戦している間に帝都で大規模な暴動から革命が勃発してしまった。
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それでも、ケネスは戦っていた。もう自分には戦いしかなかったから。生き残る意味なんてない、あるのは此処で死ぬだけだ! なぜなら多くの者を殺したし、その中には女子供もいた。そんな残虐行為をしても疑問もおもってもいなかった。でも、今は違っていた。戦場で討死するしか罪は償えないと。間違っているかもしれなかったが。
宮殿は炎上しはじめた。どうも、皇帝自らが火を放ったようだ。敵に打ち取られる前に自死を選んだようだ。もはや戦う理由はなくなっていた。それでもケネスは投降という事をしなかった。投降する事をしらなかったから・・・・
その時だった。目の前に現れた騎士が槍で激しく殴ってきた。その時、周囲で戦っていた者はケネス以外には誰も居なくなっていた。帝国軍最期の一人になっていたのに気づいていなかった。
「やめろ! 命を粗末にするな! 貴様がやめなければこの戦は終わらねえぞ!」
ケネスは覚悟していた、殺されると。でも騎士は馬から降りてきて手を取った。
「もう終わった、帝国は滅びた。犠牲になる必要はない! まだ若いからやり直せる!」
それがツーゼとの出会いであった。その後は彼の元で競技としての騎士として働くことになったが、その時はまだ抵抗した。すると、ツーゼは槍で押さえつけた。
「狂犬よ! 貴様を殺すのはたやすいが、生きて償ってもらうぞ! わかったか!」
その時、気を失っていったところで夢から覚めてしまった。
「なんでなんだ! なぜ見るのだ昔を!」
ケネスはものすごく汗をかいていた。外を見ると朝になったようだ。ケネスはぼんやりとしていた。なんで、そんな夢を見たのだろうかと。あれから二十年も生きているけど、これほど鮮明に思い出す事はなかった。
「俺って・・・やっぱり所帯を持ってはいけないよな? あれほど殺してしまったから・・・」
ケネスは改めて自分が過去に犯した蛮行を恥じていた。それなのに、まさか求愛されるとは思ってもいなかった。まさに青天の霹靂な事が起きようとしていた。
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