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結婚式!
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アルベルトの父でもある前国王マリウス2世は国民に慕われていたが、長男の教育に失敗したといえる。恋に溺れ婚約者と同じように追放される憂き目にあってしまった。アルベルトは国王として結婚するので「大婚礼式」などと大仰な言い方をしていた。
大聖堂いっぱいに入った参列者は動員されたため数の割には熱気はなく、むしろ冷めていたといえる。親不孝の息子と反逆者の娘が自己満足で結婚式をやっていると大半の者が感じていた。表立って言わないのは不敬罪に問われかねないし、恐怖主義が蔓延していたからだ。
アルベルトはカルメンが登場するのを待っていた。彼は厳かな式だと思っていたが、聖歌隊の歌唱はひどいものだった。婚礼で歌われるはずの讃美歌がまるでなっていなかった。聖歌隊がわざとやっているのかといえばそうではなく、宰相が粛清したため真面に歌えるのがいなくなっていた。それで音痴ばかりになっていた。
また演奏もひどかった。園遊会の時に招かれていた演奏家は逃げ出していたからだ。それで国立音楽院の学生も集めようとしたがボイコットされてしまい下手糞な演奏しかできない素人を集めてやるしかなかった。それには宰相も慌て隣国から金で集めようとしたが、美しいサンドラなら応じるけど他の娘の結婚式ではできないねといわれ断念するほかなかった。
「なんか、おかしいなあ。まあ飾りだからいいか」
そんな酷い状態なのに、音楽に疎すぎるアルベルトは気にも留めていなかった。わずかな現国王派の支持者は天を仰いで落胆しているというのに。讃美歌のあとカルメンが父である宰相に付き添われて入場する際、出席者の反応は無きに等しかった。カルメンを見てため息していた。なんであんな娘の為にクーデターを起こしたのか? やっぱ無能だからと感じている様であった。あれほど素晴らしい婚約者がいたのに要らないといって追放するのは、無能だからだと。しかも婚約者は事故死したというではないか! 事故死して日数が経たないうちに結婚する神経をしている愚者は国王なんて!
「それでは、二人に神の前で宣誓してもらいます」
大司教は厳かにしようとしていたが、噂によれば義務でやっただけで適当にやったとのことだった。二人と宰相を除けばこの結婚は祝福されていなかった。大半の参列者はこんな二人が国王夫婦なんて認めたくなかった。このままでは国が滅んでしまう、だれかどうにかしてほしいいと。
「そちらのアルベルトは二人が死で別れるまで添い遂げると誓うか?」
大司教の言葉に参列者は驚いていた。従来の王族の結婚式にはないテキトーな言い方だったのだ。そんな事は貧乏人同士の結婚式でもしない言い方だった。その場で大司教は罰せられる! そう思ったがアルベルトもカルメンも気が付いていない様子だった。その様子に呆れるほかなかった。ああ、やっぱりこの二人は気付かないほど無能なんだと。
式はそのまま進行し、二人による宣誓の最中だった。突如屋根で大きな音がした。それは尖塔から鐘が落下した音だった。鐘自体は屋根を転がって、誰もいない中庭の池に落下したので怪我人はでなかったが、ゴロゴロといった音が鳴り響いた。それに驚いた参列者はアルベルトとカルメンが宣誓しているのもお構いなく逃げ始めた。大半の参列者はツマラナイ退屈しかないテキトーな式から解放されるのでよかったといった様子だった。そして、こう思った。やっぱり神もこの結婚は祝福しないと。
参列者の大半が逃げてしまった後も式は続行され、参列者にとって拷問でしかなかった式が終わり大聖堂の外に出ようとした二人の前に穢れたものが落ちていた。それは首を切断された銅像だった。
大聖堂いっぱいに入った参列者は動員されたため数の割には熱気はなく、むしろ冷めていたといえる。親不孝の息子と反逆者の娘が自己満足で結婚式をやっていると大半の者が感じていた。表立って言わないのは不敬罪に問われかねないし、恐怖主義が蔓延していたからだ。
アルベルトはカルメンが登場するのを待っていた。彼は厳かな式だと思っていたが、聖歌隊の歌唱はひどいものだった。婚礼で歌われるはずの讃美歌がまるでなっていなかった。聖歌隊がわざとやっているのかといえばそうではなく、宰相が粛清したため真面に歌えるのがいなくなっていた。それで音痴ばかりになっていた。
また演奏もひどかった。園遊会の時に招かれていた演奏家は逃げ出していたからだ。それで国立音楽院の学生も集めようとしたがボイコットされてしまい下手糞な演奏しかできない素人を集めてやるしかなかった。それには宰相も慌て隣国から金で集めようとしたが、美しいサンドラなら応じるけど他の娘の結婚式ではできないねといわれ断念するほかなかった。
「なんか、おかしいなあ。まあ飾りだからいいか」
そんな酷い状態なのに、音楽に疎すぎるアルベルトは気にも留めていなかった。わずかな現国王派の支持者は天を仰いで落胆しているというのに。讃美歌のあとカルメンが父である宰相に付き添われて入場する際、出席者の反応は無きに等しかった。カルメンを見てため息していた。なんであんな娘の為にクーデターを起こしたのか? やっぱ無能だからと感じている様であった。あれほど素晴らしい婚約者がいたのに要らないといって追放するのは、無能だからだと。しかも婚約者は事故死したというではないか! 事故死して日数が経たないうちに結婚する神経をしている愚者は国王なんて!
「それでは、二人に神の前で宣誓してもらいます」
大司教は厳かにしようとしていたが、噂によれば義務でやっただけで適当にやったとのことだった。二人と宰相を除けばこの結婚は祝福されていなかった。大半の参列者はこんな二人が国王夫婦なんて認めたくなかった。このままでは国が滅んでしまう、だれかどうにかしてほしいいと。
「そちらのアルベルトは二人が死で別れるまで添い遂げると誓うか?」
大司教の言葉に参列者は驚いていた。従来の王族の結婚式にはないテキトーな言い方だったのだ。そんな事は貧乏人同士の結婚式でもしない言い方だった。その場で大司教は罰せられる! そう思ったがアルベルトもカルメンも気が付いていない様子だった。その様子に呆れるほかなかった。ああ、やっぱりこの二人は気付かないほど無能なんだと。
式はそのまま進行し、二人による宣誓の最中だった。突如屋根で大きな音がした。それは尖塔から鐘が落下した音だった。鐘自体は屋根を転がって、誰もいない中庭の池に落下したので怪我人はでなかったが、ゴロゴロといった音が鳴り響いた。それに驚いた参列者はアルベルトとカルメンが宣誓しているのもお構いなく逃げ始めた。大半の参列者はツマラナイ退屈しかないテキトーな式から解放されるのでよかったといった様子だった。そして、こう思った。やっぱり神もこの結婚は祝福しないと。
参列者の大半が逃げてしまった後も式は続行され、参列者にとって拷問でしかなかった式が終わり大聖堂の外に出ようとした二人の前に穢れたものが落ちていた。それは首を切断された銅像だった。
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