スレイブZ!

ジャン・幸田

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9・戸惑い

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 結城はクラスメイト達の雰囲気を感じていた。明らかに戸惑っていると。こんな選択の余地がない状況では当然だった。反抗すればクラスで「消滅」させられた男子生徒と同じ運命を辿るだろう。あの「消滅」させられたのは、クラスでは纏め役みたいなポジションにいたはずだが、何故か名前を思い出せなくなっていた。どうも、此処に来た事で記憶の改変が始まっているようであった。

 この地球が侵略された後、大人たちの様子は変わることはなかった。もしかすると洗脳は始まっていたのかもしれない。テレビでは報道というものはなくなり、新聞も三面記事という物はなくなり、どこで行われているのか分からないスポーツや生活の事ばかり掲載されていた。本当に知りたい地球がどうなっているのかという情報はなくなっていた。そんな隔絶されていても疑問すら思っていないのを思い出していた。そういうことは・・・

 「先生! はやく用意してください!」

 クラスでは目立たない存在だった石切瑛梨という女子生徒がハダカのまま連中の前に出てきた。そのとき、結城はある光景を思い出していた。それって修学旅行で大きな浴場で堂々としている奴がいた事を。普段は気弱なはずなのに・・・そんな関係のない事を思い出してしまった。でも、何人かがそれに続いていた。そして次々と人間らしい形そした赤黒半分の人影へと変貌していった。

 そのため、徐々に人間らしさが残っている者は減っていった。連中は強制するとはいっていたが、こうなることは分かっているようだった。ここは洗脳スーツを装着するための部屋、洗脳して着用させるなんて簡単に出来る、自分の「意志」でやるほうが良いんだと。

 ゼンタイ姿になったクラスメイトは誰が誰なのか分からなくなってしまった。身長差や体型は異なっていても、シルエットと一緒であり同じようにしか見えなかった。そして残るは結城ともう一人の女子だけになってしまった。画一化されてしまった世界で二人とも戸惑っていた。「個性」という差異が存在しない空間で。
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