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僕は西に向かう

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 25年前の、想い出というか、夢から覚めたとき、外の風景は広々とした水田の間に住宅が点在している姿が見えた。どうやらここは岐阜羽島付近のようだった。この風景を見たのは何年ぶりなのか思い出せなかった。さっきの京香との約束の情景よりも。

 僕が京香との約束を思い出したのはカープに優勝マジックが点灯してからの事だ。それまで、約束の事も京香の事すら忘れていた。それもこれもあまりにも時間が経過していたからだ。カープが最後に優勝したのが1991年、次いで優勝したのは2016年の昨日の事だ。カープのファンを辞めていたわけでもないし、応援していたのだが、京香の事を思い出したのは最近というわけだ。

 京香は高校時代の同級生で憧れだったが結局、告白する勇気もなかったので知り合い以上の関係に発展することはなかった。それに翌年の春に僕は大学進学のために東京へと旅立って、以来広島で生活することはなかった。その後、京香がどうなったかという情報は入って来なくなった。広島との同級生とも殆ど没交渉になっていたためだ。

 それにしても25年は長すぎた。僕にとってその間の人生は良い事などあんまりなかった。大学を卒業した時は就職氷河期でまともに就職できず、いまに至っていたが、こうして広島に戻るのは恥ずかしいと思うような人生であった。
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