【完結】纏い女!

ジャン・幸田

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ゼンタイ病

07グリーン校長

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 ここ碧島町にいる女は大半がゼンタイ病に罹患するかキャリアであった。罹患したものは様々な色彩の皮膚に変化しているし、キャリアも数か月以内に変化するのは間違いなかった。そのため、この島に入った女は確実にゼンタイ病を克服できなければ外の世界に出れなかった。現状でゼンタイ病を克服する方法は、生殖機能を不全にするしかなかったが、ゼンタイ病患者はそんなことは望まないというのが当たり前だった。

 また、この島にいる男は全てキャリアと認定された住民だった。男はゼンタイ病を発症することは無いが、ゼンタイ・ウイルスのキャリアであり、他の女に移す可能性があるので、同じように隔離されていた。もっとも、発病していない男はこの島では貴重な労働力だった。

 その碧島に赴任してきたのが教師の高阪克也であった。彼が担当するのはこの島に特設されたゼンタイ病に罹患した生徒が通う特別学校であった。それまでキャリアになった教師が担当していたが、どうしても教科にばらつきがあったので、それまで担当がいなかった地学科であった。

 克也が気密室から島に入ったのは夏になろうとしていた五月だった。新学期が始まって一ヶ月経っていたはずだが、この島では事実上学校は無学年制だった。ここでは学校を卒業しても外の世界に出れないので、その気になれば何年でも在籍してもよかったからだ。


 「はじめまして、高阪先生。この島にようこそ」

 出迎えてくれたのは碧島特別高校校長のグリーン088だった。彼女もゼンタイ病を発症していた。ちなみに発症すると個人名を奪われ、外観上の特徴から命名されるのが規則だった。彼女は、この島で職業についているのでキャリアウーマンのようなしゃきとしたスーツを纏っていた。

 「こちらこそ、グリーン校長。あなたはいつからここに?」

 克也はそう尋ねた。ゼンタイ病患者は体形が理想的なボディに変化するので、発病前の体形と違うし、また年齢を判断する材料がなくなってしまうので、本人に直接聞くしかなかった。

 「私はこの閉鎖都市が開設された時からいます。元々は北海道で学年主任をしていたのですが、女子生徒全員がゼンタイ病を発症してしまいまして、私もこの島に来たら、この姿になったのですよ。そんなことよりも、高阪先生! 必要な書類を見せてください」

 克也が渡したのは、この島に入るための膨大な書類の束だった。この島に入る男は厳しい検査を受けなければならなかったので、それらが守られているのかを確認していた。このときグリーン校長の緑に染まった掌が書類に緑の影を落としていた。
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