7 / 10
ゼンタイ病
07グリーン校長
しおりを挟む
ここ碧島町にいる女は大半がゼンタイ病に罹患するかキャリアであった。罹患したものは様々な色彩の皮膚に変化しているし、キャリアも数か月以内に変化するのは間違いなかった。そのため、この島に入った女は確実にゼンタイ病を克服できなければ外の世界に出れなかった。現状でゼンタイ病を克服する方法は、生殖機能を不全にするしかなかったが、ゼンタイ病患者はそんなことは望まないというのが当たり前だった。
また、この島にいる男は全てキャリアと認定された住民だった。男はゼンタイ病を発症することは無いが、ゼンタイ・ウイルスのキャリアであり、他の女に移す可能性があるので、同じように隔離されていた。もっとも、発病していない男はこの島では貴重な労働力だった。
その碧島に赴任してきたのが教師の高阪克也であった。彼が担当するのはこの島に特設されたゼンタイ病に罹患した生徒が通う特別学校であった。それまでキャリアになった教師が担当していたが、どうしても教科にばらつきがあったので、それまで担当がいなかった地学科であった。
克也が気密室から島に入ったのは夏になろうとしていた五月だった。新学期が始まって一ヶ月経っていたはずだが、この島では事実上学校は無学年制だった。ここでは学校を卒業しても外の世界に出れないので、その気になれば何年でも在籍してもよかったからだ。
「はじめまして、高阪先生。この島にようこそ」
出迎えてくれたのは碧島特別高校校長のグリーン088だった。彼女もゼンタイ病を発症していた。ちなみに発症すると個人名を奪われ、外観上の特徴から命名されるのが規則だった。彼女は、この島で職業についているのでキャリアウーマンのようなしゃきとしたスーツを纏っていた。
「こちらこそ、グリーン校長。あなたはいつからここに?」
克也はそう尋ねた。ゼンタイ病患者は体形が理想的なボディに変化するので、発病前の体形と違うし、また年齢を判断する材料がなくなってしまうので、本人に直接聞くしかなかった。
「私はこの閉鎖都市が開設された時からいます。元々は北海道で学年主任をしていたのですが、女子生徒全員がゼンタイ病を発症してしまいまして、私もこの島に来たら、この姿になったのですよ。そんなことよりも、高阪先生! 必要な書類を見せてください」
克也が渡したのは、この島に入るための膨大な書類の束だった。この島に入る男は厳しい検査を受けなければならなかったので、それらが守られているのかを確認していた。このときグリーン校長の緑に染まった掌が書類に緑の影を落としていた。
また、この島にいる男は全てキャリアと認定された住民だった。男はゼンタイ病を発症することは無いが、ゼンタイ・ウイルスのキャリアであり、他の女に移す可能性があるので、同じように隔離されていた。もっとも、発病していない男はこの島では貴重な労働力だった。
その碧島に赴任してきたのが教師の高阪克也であった。彼が担当するのはこの島に特設されたゼンタイ病に罹患した生徒が通う特別学校であった。それまでキャリアになった教師が担当していたが、どうしても教科にばらつきがあったので、それまで担当がいなかった地学科であった。
克也が気密室から島に入ったのは夏になろうとしていた五月だった。新学期が始まって一ヶ月経っていたはずだが、この島では事実上学校は無学年制だった。ここでは学校を卒業しても外の世界に出れないので、その気になれば何年でも在籍してもよかったからだ。
「はじめまして、高阪先生。この島にようこそ」
出迎えてくれたのは碧島特別高校校長のグリーン088だった。彼女もゼンタイ病を発症していた。ちなみに発症すると個人名を奪われ、外観上の特徴から命名されるのが規則だった。彼女は、この島で職業についているのでキャリアウーマンのようなしゃきとしたスーツを纏っていた。
「こちらこそ、グリーン校長。あなたはいつからここに?」
克也はそう尋ねた。ゼンタイ病患者は体形が理想的なボディに変化するので、発病前の体形と違うし、また年齢を判断する材料がなくなってしまうので、本人に直接聞くしかなかった。
「私はこの閉鎖都市が開設された時からいます。元々は北海道で学年主任をしていたのですが、女子生徒全員がゼンタイ病を発症してしまいまして、私もこの島に来たら、この姿になったのですよ。そんなことよりも、高阪先生! 必要な書類を見せてください」
克也が渡したのは、この島に入るための膨大な書類の束だった。この島に入る男は厳しい検査を受けなければならなかったので、それらが守られているのかを確認していた。このときグリーン校長の緑に染まった掌が書類に緑の影を落としていた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
彼女が ガイノイドスーツ に着替えたら
ジャン・幸田
SF
少女の玲和はコンパニオンのアルバイトを依頼されたが、それは機ぐるみの内臓となって最新型汎用ガイノイド ”レイナ”になることであった!
女性型アンドロイドに変身することによって、 彼女は人間を超えた存在になった快楽を体験することになった!
(妄想で考えてみた短編です)
機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる