結婚したのに！ 悪役令嬢ってこんな話なの？ メイドにされた処女妻は健気にいくしかない！

宮廷パーティーにて

処女妻は令嬢のまま（３）

　本当ならこれが普通の姿だというのに！　愛人に人形服を着せる変態帝国軍人でも夫は夫だった。啓子は自分が本当の奥さんなのにほったらかしにして、今日はなぜ本物の啓子のわたしを影武者するなんて？　本当に変態だわ。

　宮廷のパーティーは時節柄、軍部の色が強かった。若い貴族は軍籍を持っているので軍服を着ていたからだ。一緒に来ている女性もそれなりのドレスを着用しているのに、なぜわたしだけ人形なの？　啓子は何度も聞きたかったがしゃべることが出来なかった。耳元に顔を近づけないと聞き取れない声しかだせないから。

　「橘花宮殿下。それが噂の特殊装甲戦闘服ですか？　なかなかすばらしい」

　そうやって近寄ってきたのは多分陸軍の高級士官のようだった。

　「そうでしょ！　いまは可愛らしい通常形態ですが、いざとなれば重装装甲歩兵になればすよ！　妻はこれを着ても問題ないですよ！」

　そうかと啓子は思った。夫の哲彦は人形服を自慢するために連れて来たんだとわかった。愛人がいやらしい軍人たちの目に触れるのがいやだったから。今日は連れて来られたんだと。

　「たしかに！　この人形の下には奥方が入っているのですよね？」

　「そうです！　我が軍の研究に自ら入ってくれているのですから、健気ですよ！」

　哲彦はそういったが、啓子はウソばっかりと呆れていた。愛人が大事で妻に白い結婚を強制している男は嫌でしかなかった。