結婚したのに！ 悪役令嬢ってこんな話なの？ メイドにされた処女妻は健気にいくしかない！

啓子が啓子を着る！

わすれられない感覚（１）

　わたしが殿下たちから解放されたのは深夜になっていた。取りあえず元の人間に戻してもらったが、それでも人形の中に閉じ込められているような気がしていた。

　使用人の住居は各所にあったけど、わたしがいたのは中庭の一角にある長屋のようなところだった。ここは、もと兵舎だったというところで、先ほどまでいた人形たちが暮らしているところと雲泥の差があった。とりあえず雨露はしのげるといったものだった。

　「遅いじゃないですか、奥様。何をされたのですか、まさか殿下たちに？」

　多恵は心配してくれたらしく寝ずに待っていてくれたようだ。ちなみに多恵とはここに来てからずっと一緒の部屋で生活していた。一応、彼女はわたしの世話かがりであり教育係だった。でも、実態は同僚みたいなものだった。

　「大丈夫わよ、あなたが思っているようなひどい目にされていないわよ。でも、何をされたかは話してはいけないって口止めされているから、察して！」

　そこまで言って多恵はなんとなく空気を読んでくれた。この時、わたしの身体は人形から解放されたときの衝撃であまり力が入らなかった。おかげで、そのあと三日間仕事を休む羽目になった。

　「そうですか・・・あまり深入りしない方がよろしいですか。それにしても、この屋敷の旦那はどうなっているのですか？　ここじゃあ、あんまり情報が入ってきませんから」

　多恵が言うとおり、ここは世間から隔離され、この扶桑帝国がどうなっているかが分からなかった。でも、それは他の国民と同じだったかもしれなかった。、国全体が情報遮断されていたのだ。