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悪役令嬢とは失礼な!
結婚式だけど
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橘花宮家が宮邸として使っている宮殿は、先々代の皇帝の隠居場所として建設された。そのためそれなりの規模と豪華さを兼ね備えていたが、先々代皇帝の崩御後は長い間陸軍の使用していたので、現在では調度品の多くは取り外され、空き室には何もないというところが多かった。
哲彦と(人形の)啓子との結婚式が宮殿の大広間で開かれていた。本来、皇族の結婚式はそれなりの格式で開催されるものであったが、扶桑帝国が戦時下にあり国民に不自由をさせているとして、このような形式になった。だから参列者は宮内省と陸軍省の官吏や皇帝代理人など立会人ぐらいしかいなかった。これが貴族の結婚式なの? という状況であった。
その様子を大広間の後ろの方で啓子はただ眺めていた。特にやる事もない使用人たちの一人としていた。二人は幸せそうだった、そう結婚式の描写をするのが小説であるが、哲彦は仏頂面だし人形は表情は変わらないので、なんともいえない光景だった。これでは兵隊さんと花嫁さんの人形が結婚している光景であった。
「お嬢様っていっていいですか?」
多恵はふとこぼした、たしかに結婚前の女性なら令嬢だのお嬢様だのいうものであるけど、結婚したわけでない、わたし啓子はいったいなんなんだろうと思った。自分の結婚式なのに後ろにいるなんて前代未聞の事態だった。名義貸しだけの結婚だと、後々いわれた状態だった。
「そうよね、本当は奥様よね、簡単にいえば」
わたしは悪役令嬢のある作品を思い出した。主人公の娘が相思相愛になった王族の 結婚式会場に呼ばれると、そこで悪役令嬢の罪状が明らかになり、結婚が白紙になったので、改めて主人公と婚約するという場面があった。現実にそんなことは起きないよね、でも素敵だわと思っていたけど、自分の結婚式なのに外野に押し出されているなんて、想像も出来ない事であった。
こんな会話が出来るのも大広間は本当に広かったからだ。もともとここは宮廷と同じ広さがあるので、数百人が座れるほどの規模であったが、わずか二十人ぐらいしか参列しない結婚式なので、使用人との間は虚無といいたくなるほど距離がある様に思えた。
「それでは、橘花宮哲彦殿下の婚礼の議を執り行います。参列者は・・・」
結婚式は始まった。本当に形式的なものなので、とりたてて感想など起きなかった。簡単に言えばつまらないモノであった。もしこれが小説だったら美辞麗句で綴られる結婚式だが、わたしにはつまらないモノに思えた。本当にわたしは哲彦と結婚しなくて良かったと思えた。でも、それにしてもわたしってどうなっていくのだろうか?
哲彦と(人形の)啓子との結婚式が宮殿の大広間で開かれていた。本来、皇族の結婚式はそれなりの格式で開催されるものであったが、扶桑帝国が戦時下にあり国民に不自由をさせているとして、このような形式になった。だから参列者は宮内省と陸軍省の官吏や皇帝代理人など立会人ぐらいしかいなかった。これが貴族の結婚式なの? という状況であった。
その様子を大広間の後ろの方で啓子はただ眺めていた。特にやる事もない使用人たちの一人としていた。二人は幸せそうだった、そう結婚式の描写をするのが小説であるが、哲彦は仏頂面だし人形は表情は変わらないので、なんともいえない光景だった。これでは兵隊さんと花嫁さんの人形が結婚している光景であった。
「お嬢様っていっていいですか?」
多恵はふとこぼした、たしかに結婚前の女性なら令嬢だのお嬢様だのいうものであるけど、結婚したわけでない、わたし啓子はいったいなんなんだろうと思った。自分の結婚式なのに後ろにいるなんて前代未聞の事態だった。名義貸しだけの結婚だと、後々いわれた状態だった。
「そうよね、本当は奥様よね、簡単にいえば」
わたしは悪役令嬢のある作品を思い出した。主人公の娘が相思相愛になった王族の 結婚式会場に呼ばれると、そこで悪役令嬢の罪状が明らかになり、結婚が白紙になったので、改めて主人公と婚約するという場面があった。現実にそんなことは起きないよね、でも素敵だわと思っていたけど、自分の結婚式なのに外野に押し出されているなんて、想像も出来ない事であった。
こんな会話が出来るのも大広間は本当に広かったからだ。もともとここは宮廷と同じ広さがあるので、数百人が座れるほどの規模であったが、わずか二十人ぐらいしか参列しない結婚式なので、使用人との間は虚無といいたくなるほど距離がある様に思えた。
「それでは、橘花宮哲彦殿下の婚礼の議を執り行います。参列者は・・・」
結婚式は始まった。本当に形式的なものなので、とりたてて感想など起きなかった。簡単に言えばつまらないモノであった。もしこれが小説だったら美辞麗句で綴られる結婚式だが、わたしにはつまらないモノに思えた。本当にわたしは哲彦と結婚しなくて良かったと思えた。でも、それにしてもわたしってどうなっていくのだろうか?
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