12 / 57
悪役令嬢とは失礼な!
悪役令嬢好きなのよな!
しおりを挟む
哲彦、もう宮様だの旦那様など言ってあげないわ! その男が私の目の前に置いたのは悪役令嬢モノとして扶桑帝国の女学生の間で人気になっていた本だ。ただ最近は戦争だからということで、出版点数が少なくなっていた。しかし、わざわざわたしの本の趣味を軍の特務機関を動員して調べるなんて、どうかしていると思った。
「そうですが・・・」
わたしは言葉少なくしか返答できなかった。これから何を言おうとしているのか想像できなかった。まあ、軍人なんだから「帝国夫人の銃後の備え」だの「国防婦人」だの、読んだだけで嫌になりそうな堅苦しい本でも読めというのかとも考えられたが。
哲彦は反対方向を向いてこちらに表情がみえないようにしてから、こんなことをいいだした。
「貴官は悪役令嬢モノが好きなんだな。小官はてっきりフツーの甘い恋愛小説でも好きなんだと思っていたが、なんだか印象が違ったなあ」
そういったけど、いったいわたしをどんなふうにおもっていたのかしらん? まさか恋愛などしないのに恋愛に夢中というか、恋に恋い焦がれている乙女でも思っていたのかしらん? でも、生憎わたしは零落して貧乏でも貴族の子女、恋愛結婚なんていうものは出来るはずない身だと幼い頃から言い聞かされて育ってきたから、そんなこと考えた事もなかったというのに!
「そうですかあ。ひとつ聞いていいですか、宮様はその作品についてどう思われます?」
そう聞いてみたけど哲彦はしばし沈黙であった。でも背中からは何か動揺しているように感じられた。外の嵐がますます激しくなってきたので、強固な邸宅の中にいても危険を感じるほどの風雨だけが部屋に響いていた。そして永遠とも感じそうな時間が過ぎた後、こんなことをいった。
「そうだなあ、貴官の想像に任せる事にしよう。ただ一つだけ言っておくが否定も肯定もしないということだ。まあ、この戦争が終結したらゆっくり話をしよう」
それってどういう意味なのよ? わたしは聞きたいと思ったけど、その時外からドアをノックする音がした。その音は執務室の奥のドアだった。そういうことは秘書かお付きの武官か何かと思ったが、哲彦の合図で入って来た。それは違和感がある女だった。綺麗なんだけど、なんていったらいいのか分からなかった。
「丁度良かったな、紹介しよう。こちらが君の地位を借りる事になる女性で、私の配偶者だ!」
なんと、それは哲彦の本当の彼女だった! でも、それって人形じゃないのよ! 動いているんですけど、どうしてなのよ?
「そうですが・・・」
わたしは言葉少なくしか返答できなかった。これから何を言おうとしているのか想像できなかった。まあ、軍人なんだから「帝国夫人の銃後の備え」だの「国防婦人」だの、読んだだけで嫌になりそうな堅苦しい本でも読めというのかとも考えられたが。
哲彦は反対方向を向いてこちらに表情がみえないようにしてから、こんなことをいいだした。
「貴官は悪役令嬢モノが好きなんだな。小官はてっきりフツーの甘い恋愛小説でも好きなんだと思っていたが、なんだか印象が違ったなあ」
そういったけど、いったいわたしをどんなふうにおもっていたのかしらん? まさか恋愛などしないのに恋愛に夢中というか、恋に恋い焦がれている乙女でも思っていたのかしらん? でも、生憎わたしは零落して貧乏でも貴族の子女、恋愛結婚なんていうものは出来るはずない身だと幼い頃から言い聞かされて育ってきたから、そんなこと考えた事もなかったというのに!
「そうですかあ。ひとつ聞いていいですか、宮様はその作品についてどう思われます?」
そう聞いてみたけど哲彦はしばし沈黙であった。でも背中からは何か動揺しているように感じられた。外の嵐がますます激しくなってきたので、強固な邸宅の中にいても危険を感じるほどの風雨だけが部屋に響いていた。そして永遠とも感じそうな時間が過ぎた後、こんなことをいった。
「そうだなあ、貴官の想像に任せる事にしよう。ただ一つだけ言っておくが否定も肯定もしないということだ。まあ、この戦争が終結したらゆっくり話をしよう」
それってどういう意味なのよ? わたしは聞きたいと思ったけど、その時外からドアをノックする音がした。その音は執務室の奥のドアだった。そういうことは秘書かお付きの武官か何かと思ったが、哲彦の合図で入って来た。それは違和感がある女だった。綺麗なんだけど、なんていったらいいのか分からなかった。
「丁度良かったな、紹介しよう。こちらが君の地位を借りる事になる女性で、私の配偶者だ!」
なんと、それは哲彦の本当の彼女だった! でも、それって人形じゃないのよ! 動いているんですけど、どうしてなのよ?
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
[R18] 父にだまされ人形娘にされた娘! 奈緒美からナオミに
ジャン・幸田
SF
引きこもりの娘だった大桃奈緒美は、父と二人だけの生活に厭き厭きしていた。そんな時、父に頼まれ肉体を人形化する人体実験の被験者になることに同意してしまった!
目的もよくわからないまま人形になった彼女に起こる度重なる事とはいったいなに?
また父が次々と女達を人形や機械などに改造する目的はなに?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる