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悪役令嬢とは失礼な!
勝手な理由
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後で聞いたことであるけど、橘花宮哲彦という男は有能な軍人で部下や上官からの信望も厚く、もし皇族でなければ将来的には参謀総長もしくは陸軍尚書に就けたかもしれなかったという人だったという。ここでは彼が実際にどんな人生を辿ったかは触れないけど、その時のわたしからすれば勝手な理由でわたしの身柄を拘束した酷い男でしかなかった。
哲彦は身長が190㎝ぐらいある大男で、玄武岩のような丈夫な体躯に猛烈な力が籠った気迫に満ち溢れ、立派な顎髭を生やしていた。正直な事をいうとわたしの好みの殿方ではなかった。なぜなら小柄な少女の私など、傍にいるだけで圧倒されそうだった。
だけど、10メートル以内に近づいてはならぬとは一体なんなのよ! その説明はなかったが、皇族という人種は身の回りのことをしてくれる使用人や家族以外の異性と接触するのは許されないようだ。ということはやっぱりわたしは家族でないということのようだった。そのことを問い詰めればよかったのかもしれなったけど、あんまりな事ばかりなので、そんな気はなかった。
「わかりました。それが殿下の指示でしたら、そのようにいたします」
感情をなんとか押さえつけてようやく返事をした。しかも意図的に顔の表情をみせないように深くお辞儀した。
「貴官にはすまないと思わないでもないが、この時節柄どこにも行く当てはなかったんだろ? 少なくともここは衣食住に困ることは無いし、必要な教育は貴官に施してやるつもりだ。そのかわり、もしかすると手伝ってもらう場合もあるからな」
なんて上から目線なのよコイツ! そう思ったけど、手伝ってもらう場合ってなんなのよ? その時は深く考えなかったけど、後々大変な事になった。わたしはさっきと同じように返事した。わたしはこんなことを考えていた、こんな勝手な男に抱かれないのは良かったのかもしれないと。結婚といっても書類上のことだし、あんな男と契りを結ぶだなんて想像しただけでも嫌だった。もっとも具体的に何をするものなのかは、その時のわたしは何も知らなかった。その時だった、哲彦は立ち上がってわたしの前に本の束を置いた。その本に見覚えがあった。
「貴官の事は我が軍の特務機関に調べさせてもらったぞ。言っては悪いが平民と大差ない少女だな。しかし、その小説にハマっているなんて・・・なんといえばいいんだろうか?」
目の前に置かれた本、それは悪役令嬢モノの小説だった。それにしても形だけの嫁の身辺を調査してなんで、そんな人の本の趣味が分かったというのだろうか? 恐ろしいことであった。
哲彦は身長が190㎝ぐらいある大男で、玄武岩のような丈夫な体躯に猛烈な力が籠った気迫に満ち溢れ、立派な顎髭を生やしていた。正直な事をいうとわたしの好みの殿方ではなかった。なぜなら小柄な少女の私など、傍にいるだけで圧倒されそうだった。
だけど、10メートル以内に近づいてはならぬとは一体なんなのよ! その説明はなかったが、皇族という人種は身の回りのことをしてくれる使用人や家族以外の異性と接触するのは許されないようだ。ということはやっぱりわたしは家族でないということのようだった。そのことを問い詰めればよかったのかもしれなったけど、あんまりな事ばかりなので、そんな気はなかった。
「わかりました。それが殿下の指示でしたら、そのようにいたします」
感情をなんとか押さえつけてようやく返事をした。しかも意図的に顔の表情をみせないように深くお辞儀した。
「貴官にはすまないと思わないでもないが、この時節柄どこにも行く当てはなかったんだろ? 少なくともここは衣食住に困ることは無いし、必要な教育は貴官に施してやるつもりだ。そのかわり、もしかすると手伝ってもらう場合もあるからな」
なんて上から目線なのよコイツ! そう思ったけど、手伝ってもらう場合ってなんなのよ? その時は深く考えなかったけど、後々大変な事になった。わたしはさっきと同じように返事した。わたしはこんなことを考えていた、こんな勝手な男に抱かれないのは良かったのかもしれないと。結婚といっても書類上のことだし、あんな男と契りを結ぶだなんて想像しただけでも嫌だった。もっとも具体的に何をするものなのかは、その時のわたしは何も知らなかった。その時だった、哲彦は立ち上がってわたしの前に本の束を置いた。その本に見覚えがあった。
「貴官の事は我が軍の特務機関に調べさせてもらったぞ。言っては悪いが平民と大差ない少女だな。しかし、その小説にハマっているなんて・・・なんといえばいいんだろうか?」
目の前に置かれた本、それは悪役令嬢モノの小説だった。それにしても形だけの嫁の身辺を調査してなんで、そんな人の本の趣味が分かったというのだろうか? 恐ろしいことであった。
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