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序章・準備

01・研修

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 学校を卒業して就職できなかったり、はたまた解雇されて失業したりすることは人生の中ではよくあることかもしれない。でも、そうなったら人生では負け組、人生の敗北者、挫折した。などといわれるであろう。そんな人たちを救済する制度の一つに通称「中の人勤務」という制度があった。簡単に言えば機械で出来た服を着てする仕事を斡旋してもらえるわけだ。

 本来なら、機械というかロボットは自立型なので人間が操作することはないが、そんな自律型を製造するには問題があった。製造コストがかかるのだ。制御用のAIや駆動用のシステムなどはそれなりに高価になってしまう。ましてAIが暴走してモノを壊したりヒトを傷つけたりする事態はあってはならないので、安全性を求められている。

 そこで、とある巨大企業が政府に提案したのが、ロボットの中に失業者を入れるというシステムだった。失業者の身体を駆動系となり補助AIによって働くというわけだ。それも一度入ったら数週間は脱げないのだ! そんな制度を使うのはいないと思われたが、なぜか機械の身体になりたいというフェチな人たちがいたのだ。

 わたし、蒲原真理は就職に失敗したわけでもフェチではなかったが、そんな機械の「中の人」になろうとしていた。なぜなら、その巨大企業ピジョン・サイバーテク社に就職したので「新入社員研修」の名のもとに義務付けられてしまったわけだ。

 高校を卒業して手っ取り早くお金が要ったので就職した会社では、最初のうちは多分フツーの研修だったはずなのに、わたしを含む何人かは多目的ガイノイドになる課題を与えられてしまった。それなりに研修手当は支給されるといっても三か月も人間でなくなるなんて聞いていなかった!

 一応、説明を聞いたうえで研修を受ける同意を求められたけど、拒絶するリスクを考えると受けるしかなかった。一応は不可逆的に改造されるわけでないといっても、嫌だった。実際、何人かは拒絶したけど後で聞いた話では海外の支社へ配属されたということだった。

 そんなロボットに入る研修初日に指定された施設にわたしが持ってきたものは何もなかった。人間として必要な着替えもいらなくなるからだ。機械にはお金も着るものも必要ないから。研修を受けるために身体を機械の中に埋め込まなければならなかった。わたしはこれから三か月機械扱いされるわけだ。研修のなのもとに。
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