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学園に人間は?

06.港を抜けたら

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 青い穏やかな海に囲まれた何もない離島。今まで住んでいたどこまでも住宅やビルが続き線路は縦横無尽に走り電車や駅に人が溢れ、夥しい人々が行き交う都会と同じ国にあるとは思えないところだ。僕からすればまさに異世界だった。

 港の岸壁には小さな漁船がいくつかあって網が干されていて、そこに飼い猫か野良猫か分からないけど数多くの猫が暇そうにしているのどかな光景が広がっていた。そのそばには日本家屋がいくつも並んでいてレトロな雰囲気を醸し出していたけど、その多くは空き家のようだった。あとで聞いた話では昔から島に住んでいる住民はそこで暮らしているけど僅か18人ということだった。生徒と教師、そして事務員やその家族を含め600人ほどは全員学校で暮らしているとのことだった。

 港から学校までは狭い路地を歩いていった。後で知った事であるけど、学校専用の桟橋が別の所にあるのだが、生徒が島を出入りするのは原則として昔からの港と決められているとのことだ。その理由は・・・そのうち。

 ともかく僕とクララ先生とアンドリューの三人で狭い路地を上へと向かった。学校の施設群は全て丘の上にあるからだ。

 「もうすぐだから安野君。そうそうサプライズがあるかもしれないわよ」

 クララ先生はそう言っていたけど、その声は何かを企んでいるようにも聞こえた。実は僕が人間不信になって登校拒否に陥ったのは、自分の陰口を言われているのではないかと考え込むようになったことがきっかけだった。担任に訴えても被害妄想だろうといって相手にしてもらえなかったけど、実際に聞いてしまったのだ。僕を妬んでいるような陰口を言う奴を! だから人が話す調子を常に気にするようになっていたのだ。

 だからクララ先生のその声は気になっていたけど、その時は路地を登るのに夢中でそんなに深く考えていなかった。

 港から日本家屋が立ち並ぶ集落を抜け、斜面に石垣が築かれた段々畑が見えてきた。ただ段々畑といっても殆どが耕作放棄地になっていて、いくつかの畑には菜の花やいろんな花が植えられていた。菜の花畑の前まで来た時、後ろを振り返ってみた。眼下に先ほどまでの集落がミニチュアのように見え、遠い海の先には四国山地と思われる山並みが見え、さらに別の方角に瀬戸大橋がみえていた。そう、ここは隔絶された世界だった。

 「安野君、君は横溝正史の”獄門島”という作品の映画か小説を見たことあるかな?」

 クララ先生は不意にそんなことを聞いて来た。

 「いいえ、それがどうしたというのですか?」

 「その作品はね、この島の近くにある島という設定なのよ、もっとも架空の島なんだけどね」

 なんでいきなりそんな話をしたんだろうと思っていると、再び学校に向おうとして坂の上を見た。そこには三体の日本人形がいた!
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