【短編ホラー集】迷い込んだ者たちは・・・

機械娘の憂鬱・涙

機械娘の涙

　他の恒星系からやってきた探検隊の目的は新たな文明社会を築く拠点を探す事であった。この宇宙には無限に候補地があるが、条件もあった。現在もしくは将来、文明を持つ可能性がある知的生命体が存在すれば対象から外される決まりがあった。でも、この惑星の場合はどうか？　微妙なところである。

　予備調査によれば、人世紀すなわち文明社会によって改変されてしまったこの惑星は、文明の崩壊の際に深刻なダメージを受けており、資源はほぼ枯渇し環境も悪化していた。もっともこの惑星が公転している恒星からの熱量は増大する一方なので、大規模に気候を改良してもそれほど長い間、生物が生存できる環境は維持できないと結論されていた。だから、調査隊の目的は何故この惑星の文明が崩壊したか究明することであった。

　少女の頭部に残されていたメモリーを復元することになった。どれほどの年数が経過しているのか分からないが、他の文明の記憶を持つメモリーは損傷が激しかったので、とりあえず彼女のメモリーを使う事にした。

　調査隊は、この惑星の知的生命体だと想像される姿の人工生命体を作成し、その頭脳部分にメモリーを移植した。ちなみに調査隊は地球上にいるところのネコに似た種族から進化したものだ。

　「なんだか、これってサルのようだな？　本当に合っているのか？」

　調査隊長は科学主任に尋ねていたが、主任は自信満々であった。人工生命体の姿は辛うじて残っていた石像などのデータから人工知能で考察させたものだった。


　「さあ、目覚めなさい！」

　科学主任が電気信号を送ると少女は目覚めた。

　「ここは、どこ？　わたしって死んだんだよね？　それにしても、生身に生まれ変わったの？　機械にされたはずよ！」

　そういって少女は涙を流し始めた。そのあと、彼女はこの惑星の文明が愚かな事によって滅びた事を語り始めた。