人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田

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【1】アルバイト

(6)キャワイイ・パープル視点

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 私は今西由記で劇団員だ。劇団員といっても役者のタマゴ以下といってもいい。高校時代に演劇鑑賞で見たカルメンの舞台に憧れて、親の猛反対を押しのけて実家を飛び出してから苦労していた。バイトの傍ら殆ど無給で劇団員をしていた。

 そんな時、今回のバイトの話を受けた。ぬいぐるみを着てショーをやることに。現在では着ぐるみという方が正しいが。当時はそんな言い方をしていた。そこで私はキャワイイ・フォーというアニメに出てくるヒロインの一人をやるという話だった。

 「今日から四国地方に行きます。そこのスーパーチェーンのいくつかのお店の駐車場でします」

 そう、わたしは地方巡業に行けというものだった。主役の四人と怪人役一人は舞台経験者で、他は現地のバイトがやるという話だった。音声は録音されたものを使うので、パントマイムのように動けばいいという。セリフなどは覚えなくていいし、動作もそれらしくやればいいけど、辛いのは真夏の炎天下でぬいぐるみを着て演じる事だった。

 「ショーだけど、15分で終わるから。後は45分休憩で午前2回と、午後3回で終わりだから」

 バイト担当者はそういうけど、炎天下でアニメキャラのマスクを被ってステージを動き回るのは過酷だと思っていなかったので、私は死ぬほど後悔する事になった。
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