人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
3 / 16
【1】アルバイト

(2)

しおりを挟む
 当時、俺が住んでいたのは地方都市だった。一応は県庁所在地であったが都会とは言い難いところであった。なんでこんな町の大学に進学したのかといえば、そこしか合格出来なかったからだ。今でいうならF ランクというところだ。

 ともかく、そのバイトの面接が行われたのはイベントを主催する会社の古びた事務所だった。そこでは簡単な面接が行われたが、基準は明確だった。夏の暑さに強いか、時間を守るか、そして人前で恥ずかしい事をしても構わないかであった。要は来てくれて時間までいてくれるかのようだった。

 「とりあえず、明日大丈夫ですか? 急遽足らなくなったもので、急ぎなので助かります」

 面接をしてくれた男によれば、主役クラスはとある劇団員が務めるが、やられ役の戦闘員は旅費がかかるので「現地調達」にするしかなかったのだという。やられ役なので演技経験なくても構わないとの事だった。

 「こちらこそよろしくお願いします。ところで、なんというショーですか?」

 俺は何をやるのか聞いていない事に少し不安になっていた。

 「まあ、実はこの県では日曜早朝に遅れネットしているアニメ作品で、まあヒーローものみたいなものです」

 ヒーローもの? 俺の頭の中ではナントカ戦隊何々ジャーという想像が浮かんでいた。それなら、子供の頃に見た事があったかもしれない。どこかのスーパーの敷地内であったかもしれない。その時の光景がよみがえっていた。たしか、そこには戦闘員もいたような気がした。

 その時、男はパンフレットを見せてくれた。そこには大きなぬいぐるみの人形の写真が載っていたが、それに俺は一瞬で目を奪われてしまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

転校先は着ぐるみ美少女学級? 楽しい全寮制高校生活ダイアリー

ジャン・幸田
キャラ文芸
 いじめられ引きこもりになっていた高校生・安野徹治。誰かよくわからない教育カウンセラーの勧めで全寮制の高校に転校した。しかし、そこの生徒はみんなコスプレをしていた?  徹治は卒業まで一般生徒でいられるのか? それにしてもなんで普通のかっこうしないのだろう、みんな!

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

恥ずかしい 変身ヒロインになりました、なぜならゼンタイを着ただけのようにしか見えないから!

ジャン・幸田
ファンタジー
ヒーローは、 憧れ かもしれない しかし実際になったのは恥ずかしい格好であった! もしかすると 悪役にしか見えない? 私、越智美佳はゼットダンのメンバーに適性があるという理由で選ばれてしまった。でも、恰好といえばゼンタイ(全身タイツ)を着ているだけにしかみえないわ! 友人の長谷部恵に言わせると「ボディラインが露わだしいやらしいわ! それにゼンタイってボディスーツだけど下着よね。法律違反ではないの?」 そんなこと言われるから誰にも言えないわ! でも、街にいれば出動要請があれば変身しなくてはならないわ! 恥ずかしい!

引きこもりアラフォーはポツンと一軒家でイモつくりをはじめます

ジャン・幸田
キャラ文芸
 アラフォー世代で引きこもりの村瀬は住まいを奪われホームレスになるところを救われた! それは山奥のポツンと一軒家で生活するという依頼だった。条件はヘンテコなイモの栽培!  そのイモ自体はなんの変哲もないものだったが、なぜか村瀬の一軒家には物の怪たちが集まるようになった! 一体全体なんなんだ?

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

転校してきてクラスメイトになったのが着ぐるみ美少女だった件について

ジャン・幸田
恋愛
 転校生は着ぐるみ美少女? 新しいクラスメイト・雛乃は着ぐるみ美少女のマスクを被り一切しゃべることがなかった!  そんな彼女に恋をした新荘剛の恋の行方は? そもそも彼女は男それとも人間なのか? 謎は深まるばかり! *奇数章では剛の、偶数章では雛乃の心情を描写していきます。 *着ぐるみは苦手という方は閲覧を回避してください。予定では原稿用紙150枚程度の中編になります。

ゼンタイフェチ女ですが受け入れてくれといいませんけど

ジャン・幸田
キャラ文芸
 私はミチル。どこにでもいるような女の子だけど、家族に絶対言えない秘密があるの。ゼンタイフェチなのよ! 毎晩、家族が寝静まった後はゼンタイに着替えてお楽しみしているのフェチに目覚めたのよ。しかもフェチ友達がいっぱいいるのよ。変態? そんなことお構いなしよ! 今日も楽しんじゃうわ、ゼンタイでいろんなことを! *いわゆるゼンタイ(全身タイツ)好きな主人公とその仲間との物語です。そのようなものが嗜好に合わない方は閲覧をお控えください。なお、特定のモデルはいない空想の物語ですので、どこかの誰かに似ていても気のせいです。

処理中です...