人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田

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【1】アルバイト

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 俺は恵吾、大学生の時の事だ。夏休みだからといって実家に帰る事が出来なかった。なぜなら金がないからだ。本当なら親が旅費ぐらい仕送りしてくれそうであるが、今年はなかった。ゴールデンウィークの時に親父と大ケンカしかためだ。お袋から今年の夏は色々と問題があるから戻ってこないように言われていた。まだ、親父は怒っているし忙しいからダメだと。そんな状況で帰っても居心地が悪いのは間違いなかった。

 ではアルバイトをしようということにした。何故普段アルバイトしていないかというと、通っているのが理系で授業にずっと通っていないと単位を落としてしまうのだ! だからコンビニでアルバイトなんかしていなかった。そこで、俺は夏の間だけアルバイトをすることにした。

 大学生の頃、今のようにスマホでサイトを探すなんて時代ではなかったので、大学の掲示板にあるアルバイト求人票を探した。今のようにネットではなく紙媒体しかなかった。その時、一枚の求人票に目が留まった。

 「ぬいぐるみショー、ぬいぐるみ役者! 時給1000円! 未経験者でもOK!」

 当時としては時給が高かったので大して考えもせずに話を聞きに行く事にした。それが沼に入ってしまう事になるともしらずに。
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