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 俺はマリアンヌを追い出した王宮の部屋に早く愛しのジャンヌを入れたかった。そこで奴の部屋に入ってみると、あまりの殺風景に呆れてしまった。女らしさなどない装飾であった。しかもメイドによれば、元々荷物もあまりなく、あの晩出ていくときに数個のカバンで持ち出せるほどしかなかったという事だ。俺は侍従の一人に尋ねた。

 「マリアンヌはどうしている?」

 「わかりかねます殿下。彼女の実家があるのはノルディーですが、馬車は反対方向に向かったそうです。そのあとの事は・・・」

 「判らぬというのか?」

 「はい」

 それ以上聞くのはやめた。もう捨てた元婚約者のことなんか。とりあえず実家に戻っていなければ良いと思っていた。マリアンヌの実家のノルディー公爵の現在の領主はマリアンヌの弟であり、まだ12歳だ。そんな少年を押さえる事は簡単だと踏んでいた。まだ補佐が必要な領主が王家に反旗を翻すことなんかあり得ないはずだった。

 「それよりも、ジャンヌを早くどこかの公爵の養女にしろ。そして早く俺の婚約者にするように準備しろ! それと、この部屋。ジャンヌに要望を聞いて将来の王妃に相応しい部屋に改装しろ! いいな!」

 「御意! かしこまりました」

 侍従はそういって引き下がった。俺の頭の中にはジャンヌを婚約者にしたあとの未来を想像していた。もちろんバラ色の! でも、そんな未来は到来する事はないのを俺は知らなかった。

 それはともかく、俺はそのあとある事をした。俺は病気を理由に親父である国王陛下から権限移譲を受け、王太子兼摂政に就任した。事実上俺は国王になったわけだ。
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