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(5)人魚といえば

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 人魚、子供の時にお伽話なんかに出てきたキャラクターの一つだ。もちろんそれは日本の人魚ではなくアンデルセン童話などに出てくる人魚の方だ。上半身がうら若き乙女で、下半身が魚になっている方の。まあ、年老いた人魚という想像などしたら、それは妖怪じみていると言ったらお年寄りが怒ってくるかもしれないけど。

 それはともかく、そんな人魚になる事を夢見たことは子供の時に一度ぐらいあるかもしれなかった。そんなことを思ったのがスズでありアスカであった。そのうちスズは本当に人魚の作品を撮影しようとしていた。

 「私はねえ人魚をこの手で作ってみたかったのよ。もちろん生きているのを! でも魔法を使う事は出来ないし、どこかのマッドな科学者のように人魚のサイボーグを作る事なんて出来ないし! だから、私はこうしてあなたを内臓にして人魚を作ろうとしているのよ。ただ、いままでの人魚のコスプレで不満だったのは、明らかに人間の足が入っているのよって分かることを! だってそうでしょう、膝や踵の所で”不自然”に曲がるんだから!
 それで私は思ったのよ! 人魚らしくするにはやっぱ魚かアザラシのような海洋生物らしい胴体にすべきなのよ! それであなたの下半身はこうなっているのよ!」

 スズは少し高揚感を帯びた演説でもしている感じで、アスカの下半身に頬を寄せていた。その時アスカの下半身は細身のトドのような胴体になっていた。その中でアスカの両足は棒状のようにまとめられ、ウレタンのような物質で圧迫されていた。そう、アスカの足は使えなくなっていたのだ。曲げる事ができないので、匍匐前進は出来そうもなかった。しかし変な機能があることに気付いた。

 「そうそう、その姿で動けなければ陸揚げされたマグロ、マグロ女だから寂しいので、多少は動けるわよ。でもこんな風になるけど、前に進んでみて!」

 そういわれアスカは力を入れてみると、下半身が動いていたのだ。その動きは怪しかった。簡単に言えば芋虫のようだった。

 「これって、なんか気持ち悪いよ!」

 「気持ち悪い? でも、此処の方がもっと気持ち悪いわよ、きっと」

 そういってスズはアスカに下腹部を見るようにといった。そこには魚のような肛門があった。

 「なによこれ?」

 「決まっているじゃないの、人魚なんだから! 人魚といえば魚なんでしょ! だから人間の肛門ではなく下腹部になるのよ。そうそうあなたの内臓の肛門もそこにつながっているから、排泄するとそこから出すことも出来るわよ! まあ、用はあんまり足さないでね。折角の衣装が汚れるからね」

 アスカは私よりも人魚の衣装の方が大切なんかと、怒りたかった。
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