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壱:少女からロボットウーマンへ

1-7・少女からロボットウーマンへ(後編)

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 18歳の誕生日前日、希美の意識は戻った。暗闇の中から生還はしたが、それはロボットウーマンとしてリバース(再生誕)した瞬間だった。

 希美の頭の中には数字が濁流のように入り込んでいた。その数字は全て機械と融合した生体組織に関するデータであった。彼女はこれから機械として生きて行かなければならないと思い知らされた。

 ロボットウーマンとは文字通り女性型二足走行機械であり、ガイノイド(女性型アンドロイド)であった。社会においては人間の労働を代行するロボットが数多く稼働していた。だが、割合は体制しか知らないが、相当数の「元人間」が入っていた。そのことは公然の秘密であり人類の多くが認識していたが、それに対し異議など主張することは行わないし出来なかった。

 現在の体制、支配階層に対し人類が出来る選択肢は服従か批判であったが、後者の場合は体制によってロボットの素材にされるわけだ。だから希美はロボットになった。

 希美は諦めの境地であった。全身が機械と融合させられ、脱げなくなっているのは電脳化された自我の中に刻み込まれていたから。不満や反抗心を持つことは人類の権利として認められても、それは電脳内の限られた領域だけであり、行動は全てロボットとして振る舞わないといけなかった。

 「おはよう、希美。取りあえずヒューマンモードでいいわよ。今はここに人類はいないからね」

 希美の生体組織であった眼球を除去され換装された視覚センサーが認知したのはオルガだった。彼女は顔は人形のようだった。その顔には様々なデータが重なって見えていた。それを感じると希美は自分はもう機械なんだなあと思い知らされた。

 「おはようございますオルガ様。希美は正常に起動しました! なんて言わないといけないのですか? あんたの時はどうだったのですか? こんなカナモノの身体にされて! あたいは悲しいですよ、機械による支配体制に異議を申し立てようとしたのに、機械の身体にされてしまって! これって木乃伊取りが木乃伊になる! というのを地で行っているようなものですよ! どうしてこんなことになったのか! あんたに言っても仕方ないけどね!」

 希美は思いの限り不満をぶちまけた。その時の声が人工音声になっているのが、さらに腹に立った。頭の中をぐちゃぐちゃかき回してしまったからのが嫌だった。目ん玉をとったり口の中に埋め込んだり気道や食道にチューブを突っ込んだりして、出来の悪いオブジェを作るんじゃあるまいにと、マグマのように不満が煮えたぎっていた。

 オルガはやれやれというようなしぐさをした。オルガは女性らしい体形をしていて人間の服を着ているのがうらやましいと希美は思った。ロボットウーマンは人間の服を着る事が許されないからだ。
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