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この世界にさよなら
彼女と話が出来た!
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憧れの彼女が僕の方に自分から来てくれた! それだけで僕は幸せだと思ったが、今は非常事態なんだというのを忘れそうだった。いまいちそれが何を意味するのか分からなかった。戦争というものは教科書かゲームの中だけのものに思っていたから、戦争なんて・・・
「そこの人! 手伝ってもらえない? 脱出準備を! あそこのおばあちゃんを!」
それが彼女が僕に言った初めての言葉だった。それが意味するのは・・・手伝えっていうことだとわかった。そのとき、車両には足が悪そうな高齢女性がいて、手押し車を車内に持ち込んでいた。そのとき、同じ車両には僕ら三人しか乗っていなかった。
「は、はい!」
僕は彼女に声をかけてもらった事が嬉しかった! もしかするとこれが何かの始まりなのかと心ときめいたが、この車両の外の世界は刻々と悪化していた。たしか、学校に行く前に見た朝のニュース番組は米中両国首脳の気難しい顔が映し出されまるで壊れたレコーダーのように同じような事を言っていたのを思い出した。なんでも、両国とも強気で一歩も引かないし、引いたら負けだといわんばかりとかだったようだ。そんなことなら、もっとよく見ておけばよかった。期末試験の方が重要だと思っていたからしかたないけど。
電車が最寄りの駅に到着した。その駅は無人駅で周囲になにもないようだったが、車掌はすぐさま駅前にある建物に案内してくれた。そのとき、電車の乗客は10人もいなかったとおもう。僕は足の悪いおばあさんを背負って、彼女は手押し車を持って避難した。そのとき彼女は意外に力持ちなんだとおもった。
「お客様にご迷惑をおかけします。Jアラートによれば米中両国が大陸間弾道ミサイルを無数に発射したそうです。自衛隊が中国のミサイルを破壊しようとしたそうですが、ミサイル本体が新潟県に着弾したそうです。また、同じようにアメリカのミサイルが故障したらしく北海道で大気圏突入したそうです。よくわからないのですが、どうやらミサイルが落下するかもしれないという事で、最寄りの頑丈な建物の地下室に避難するように指示されたのですが」
車掌はそう説明したが、ここは田舎町でも農村部で、そんな建物があるはずなかった。だから・・・ここに逃げても無理だといえた。
「避難といっても、ここから二駅行けば駅前に地下通路があるだろ、そこまでいけばよかったんじゃねえんか?」
そんなふうに言い寄る乗客もいたけど、どうも即座に停車すべしという指示だったようだ。こんなことなら早く帰ればよかったと僕は後悔した。そのとき、その場にいた人はスマホでなんとか状況を把握しようとしていたけど、情報の錯綜が激しくって訳が分からなかった。
「アメリカの巡航ミサイルが長江のダムを破壊した」
「中国の潜水艦がアメリカ西部の各都市に核攻撃した」
「巻き添えで日本でも多数の死傷者が出ている・・・」
「核の傘が守ってくれるなんて言っていたはずだろうに、首相は・・・」
そんな言葉が出ていたが、もうどうする事も出来なかった。僕の関心事はこれから家に無事に帰れるかという事だった。反抗的な態度をしていた両親や兄貴に会いたかった。でも、もうだめかもしれなかった。そのときだった、彼女が話しかけてきた。
「さっき手伝ってくれてありがとう。いつもみかけているというのに、こうして話すのは初めてね」
僕の方を見て彼女が初めて話しかけてくれた、最悪な状況の中で僕は幸せであった。でも、それは彼女との長い旅の始まりの一歩だった。
「そこの人! 手伝ってもらえない? 脱出準備を! あそこのおばあちゃんを!」
それが彼女が僕に言った初めての言葉だった。それが意味するのは・・・手伝えっていうことだとわかった。そのとき、車両には足が悪そうな高齢女性がいて、手押し車を車内に持ち込んでいた。そのとき、同じ車両には僕ら三人しか乗っていなかった。
「は、はい!」
僕は彼女に声をかけてもらった事が嬉しかった! もしかするとこれが何かの始まりなのかと心ときめいたが、この車両の外の世界は刻々と悪化していた。たしか、学校に行く前に見た朝のニュース番組は米中両国首脳の気難しい顔が映し出されまるで壊れたレコーダーのように同じような事を言っていたのを思い出した。なんでも、両国とも強気で一歩も引かないし、引いたら負けだといわんばかりとかだったようだ。そんなことなら、もっとよく見ておけばよかった。期末試験の方が重要だと思っていたからしかたないけど。
電車が最寄りの駅に到着した。その駅は無人駅で周囲になにもないようだったが、車掌はすぐさま駅前にある建物に案内してくれた。そのとき、電車の乗客は10人もいなかったとおもう。僕は足の悪いおばあさんを背負って、彼女は手押し車を持って避難した。そのとき彼女は意外に力持ちなんだとおもった。
「お客様にご迷惑をおかけします。Jアラートによれば米中両国が大陸間弾道ミサイルを無数に発射したそうです。自衛隊が中国のミサイルを破壊しようとしたそうですが、ミサイル本体が新潟県に着弾したそうです。また、同じようにアメリカのミサイルが故障したらしく北海道で大気圏突入したそうです。よくわからないのですが、どうやらミサイルが落下するかもしれないという事で、最寄りの頑丈な建物の地下室に避難するように指示されたのですが」
車掌はそう説明したが、ここは田舎町でも農村部で、そんな建物があるはずなかった。だから・・・ここに逃げても無理だといえた。
「避難といっても、ここから二駅行けば駅前に地下通路があるだろ、そこまでいけばよかったんじゃねえんか?」
そんなふうに言い寄る乗客もいたけど、どうも即座に停車すべしという指示だったようだ。こんなことなら早く帰ればよかったと僕は後悔した。そのとき、その場にいた人はスマホでなんとか状況を把握しようとしていたけど、情報の錯綜が激しくって訳が分からなかった。
「アメリカの巡航ミサイルが長江のダムを破壊した」
「中国の潜水艦がアメリカ西部の各都市に核攻撃した」
「巻き添えで日本でも多数の死傷者が出ている・・・」
「核の傘が守ってくれるなんて言っていたはずだろうに、首相は・・・」
そんな言葉が出ていたが、もうどうする事も出来なかった。僕の関心事はこれから家に無事に帰れるかという事だった。反抗的な態度をしていた両親や兄貴に会いたかった。でも、もうだめかもしれなかった。そのときだった、彼女が話しかけてきた。
「さっき手伝ってくれてありがとう。いつもみかけているというのに、こうして話すのは初めてね」
僕の方を見て彼女が初めて話しかけてくれた、最悪な状況の中で僕は幸せであった。でも、それは彼女との長い旅の始まりの一歩だった。
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