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(1)拉致編!

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 素体に選ばれた私はそれからあれよあれよのうちに・・・という話は置いといてとりあえず思い当たる事をいわなくては。

 私は瀧本久美で16歳になったばっかりだった。ちなみに部活は帰宅部! 要はなんにもしていなかった。だって通学距離が長いので部活なんかしている間はなかった。だけど長い通学時間で暇にする事があった。電車を降りてバスを待つ時間だ。乗り継ぎが悪くていつも三十分ぐらい暇をしていた。駅前に商店はまばらであったけど目立つのがあった。それはゲームセンター「キャラメル・ママ」だった。

 「キャラメル・ママ」の意味は・・・ここでは特に関係ないけど、とにかく古い時代のゲームばっかり置かれていて、人によっては「昭和の博物館」なんて馬鹿にするのもいた。しかし一時期であるが最新ゲーム機が置かれたことがあった。それはVR(バーシャル・リアリティ)戦闘マシン・鋼夜叉だった。

 鋼夜叉はパワードスーツを装着して戦うという設定で、立体ゴーグルとグローブとブーツを装着して仮想現実の中でプレイするものだった。そのゲームは何故かワンプレイ20円という信じられない価格設定だったので、何度かしたことがあったけど結構ポイントは高かったと思うけど、私よりもうまいのはいた、いたはずだった、なのになぜ私だけが? 私は自分がハダカにされているのも忘れてその声の主に怒鳴った!

 「スカウトマシーンってあの鋼夜叉のことなの?私よりも上手い人なんていっぱいいたんじゃないのよ!」

 すると奥の方から声の主の影が近づいてきた。私は典型的な宇宙人、たとえば全身タイツを着たモジモジ君みたいなやつとか、目だけ異常に大きいグレイのような奴が出てくるかと思い身構えたけど、ハダカなのでアソコとオッパイだけは急いで手で隠した。すると目の前に現れたのは中年のおっさんだった。てっぺん近くまで禿げ頭を隠すように無理矢理くっつけたバーコード・ヘア。お腹がポッコリした太鼓腹でさえない容姿、あれは・・・キャラメル・ママの主人だった!

 「それはなあ、君がピッタリという事なんだよ! 憧れたことは無いか? レオタードのようにぴったりとしたスーツを纏ってヒロインのように活躍するのを! その願望を叶えてやろうという訳なのさ、君!」

 願望を叶えさせるといったって、だからといってハダカで拉致するのを正当化できるものじゃないじゃないのよ! だいたいあんたは何者よ! と怒鳴りたかったが、私の身体に何やらドキドキするものが芽生えていた。ピッタリとしたスーツを着たい! ではなく、恥ずかしいから何か着せてちょうだいよ!

 「その前に何か着せてちょうだい! 本当に変態なんだからあんたら!」

 「変態? まあ何とでもいいたまえ。どっちにしても君が地球人類の姿をしていられるのももうちょっとだけだからな。それまで自分の身体を見ておくんだな、実験体なんだから君は!」

 「じ、実験体ってなんなのよ? あたいを解剖でもするというのよ? それだけはやめて殺さないで!」

 「何も泣くことは無いさ。君はもうすぐ戦士に生まれ変わるんだから。そうしたら地球人類なんてつまらないものとおもうはずさ! そうだ、君が生まれ変わる姿を見たまえ!」

 そういうとキャラメル・ママの親父の後ろから影が近づいてきた。それはトカゲともワニとも修羅ともつかない異形の存在だった。それは・・・鋼武者の敵役たちに酷似していた!


 「な、なんなのよ、それって、化物!」

 「化物とは失礼な、彼女らはさっき生まれ変わったばっかりの地球人類を素体にした女戦士なんだぞ! 君にもその姿になるんだからな!」

 「なによ、それ、なんなのよ、それって、化物になれというの? それって?」

 「まあ、おいおいわかることだから言うが、彼女らは戦士に生まれ変わるために生体装甲に包まれているんだよ!」

 それが生体装甲というものを知ることになるきっかけであった。そしてそれが地球人女性として過ごした最後の時間であった。
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