燃えよ、ロボ魂!!

結城藍人

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第248話 機動新世紀ガンダムX その10 月はいつもそこにある編

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 さて、『X』語りも10回目になってしまいました。ロボとキャラについて語り終わったので、グッズや主題歌について語ったあとで、総評を行って締めたいと思います。今回のサブタイトルは、予告通り最終回のサブタイからいただきました。

 本作のプラモですが、弟がガンダムXとDXを買っていました。出来の方はなかなか良かったと思います。しかし、結局それ以外は買ってないというところが、本作のプラモの売り上げが悪かった原因じゃないかなとは思ったり(笑)。

 そして、本作の主題歌はオープニングが前期、後期とも非常に作風にマッチしていて、秀逸でした。その反面、エンディングの印象が薄いという。特に前期エンディングは初期は英語歌詞だったのが途中で日本語に切り替わっています。それで印象が薄い……のとは、ちょっと違う原因があるんですね。

 本作のエンディングは非常に凝っていまして、次回予告の映像が挿入されているんですよ。それで、最後に次回の一番印象的なセリフが言われて、それが次回のサブタイトルにもなっているというスタイルなんですね。

 これ、ムチャクチャカッコ良かったんですよ。だから、この『X』語りでも、そのスタイルを踏襲して最後に次回サブタイトルのセリフを入れているという(笑)。

 ただ、このせいで、映像見る方に気を取られて、エンディングの歌には余り気が回せないんですよ。だから、何か印象が薄いという。

 しかし、最初は英語歌詞だったのは、前年の『新世紀』の影響じゃなかろうかとか思ったり(笑)。

 そう、本作のタイトルに冠されているのは「機動新世紀」なんですよ。これは一応ガンダムブームの最中である1981年の「アニメ新世紀宣言」を受けているとされ、それから十五年後であるので、作中の年代も「アフターウォー15年」ということになっているんですね。

 ただ、どう考えても前年大ヒットの『新世紀』を意識してるだろうと(笑)。いや、スタッフの方は絶対に認めないでしょうから根拠なんか無い推測でしかないのですが。

 といったところで、本作の総評に入りたいと思います。上記のように「アニメ新世紀宣言を受けてAW15年」みたいな部分があるので、本作は非常にメタネタを盛り込んだ作品と評されているようです。また、Wikiによると、高松監督をはじめとするスタッフも、それを認めているという。最終的には「ガンダムを考えるガンダム」というメタフィクションの方向に落ち着かせることが自然の流れになったと。

 だから、本作で描かれた「神格化されたニュータイプ」というのは「神格化された初代『ガンダム』」のメタ的な表現であって、最終回において「ニュータイプは人類の革新ではない」という表現で、その神格化を否定したことによって、初代『ガンダム』の呪縛からこれ以降のガンダムシリーズを解き放ったというのは、大きな意味を持っているとは思うのですよ。

 ただ、それだけではないと思うのですよね。

 なぜなら、物語の骨格が『機動戦士ガンダム』じゃないからなんですよ。ボーイ・ミーツ・ガール。偶然出会って恋した少女のために戦う少年の物語。

 実は、あらすじをそぎ落として、そぎ落として、そぎ落とすと、『X』のストーリーって『機動戦士ガンダム』じゃなくて『未来少年コナン』に酷似するという(笑)。

 最初にも書きましたが、本作は「健全」で「真っ当」な少年少女の成長物語なんですよ。そして、その骨格ストーリーは正に「王道」という。

 ただ、それが実は『機動戦士ガンダム』を始祖とする「ガンダムシリーズ」に期待されるものとは違ったということなのかもしれません。

 また、私はストーリー面は高く評価しているものの、演出的な面で言うと、前半は少し冗長だった感はあります。四つの話でひとつのエピソードを描く構成になっており、非常に丁寧に描かれているのですが、ストーリーの進展は遅いんですよ。それに対して、後半は放送短縮の影響でストーリー進展が逆に早すぎるという。放送短縮の影響なので仕方がないのですが、ストーリーの進度は前半と後半を平均するぐらいがちょうどいいのかなと思ったりはしました。

 本作の監督をつとめた高松監督は、実は『W』の後期も引き継いでいたと当エッセイ執筆時に知って驚愕したのですが、むしろ私にとっては『マイトガイン』『ジェイデッカー』の監督としての方がなじみ深かったんですね。

 『マイトガイン』こそ、まさにメタネタ的な要素が多く、それは「勇者シリーズ」としてはどうよ? とこそ思ったものの、その次の『ジェイデッカー』では見事に「勇者シリーズ」らしさあふれる作品を作り出しています。『ゴルドラン』こそ見なかったものの、手腕の方は前記二作で充分にわかっていました。

 『W』後期の迷走ぶりは、あれは初期構想がおかしかったので、誰が引き継いでも同じ結果になったのではないかと思えます。第10話くらいまでには前期監督だった池田監督が初期構想を無視して暴走気味になっていたとWikiには書いてありましたが、そうしないと面白くできなかったんじゃないかと思えるのですよ。実際、その第10話あたりまでは死ぬほど面白かったわけで。その初期構想に戻すように動いた高松監督の責任ではないのではないかなと思ったり。

 そして、本作が「放送短縮」という事態に追い込まれながらも、尺を短縮しながらきちんとストーリーを完結させ、その中で王道のストーリーで少年少女の成長をきちんと描き、その上で、それまでの「ガンダム」諸作品を呪縛していた初代『ガンダム』の幻影を「ニュータイプ」に仮託して解き放つということまでメタ的にやってのけた高松監督の手腕は、決して低いものではないと思えるのです。

 本作は、最初の『機動戦士ガンダム』が「名古屋テレビ」制作であった頃から長らく続いてきた「テレビ朝日」系列のテレビ局で作られた最後の「ガンダム」になります。

 色々な意味で、それまでの「ガンダム」を総決算する作品だったと言えるかなと思います。

 さて、『X』語りは今回で終わりまして、次回は『機動戦艦ナデシコ』に行ってみたいと思います。
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