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第234話 機動戦士ガンダム 第08MS小隊 その7 アプサラスは私ひとりの物だ編
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08小隊語りも7回目、ラスボスであるギニアス・サハリンとその忠実な部下でライバルキャラ格のノリス・パッカードについて語りたいと思います。ですので、サブタイトルはギニアスの狂気と妄執を表したセリフからいただきました。
前にも書きましたが、この人の変貌ぶりはすさまじいのですよ。序盤は病弱ながらサハリン家の再興のために努力している人で、実妹であるアイナにも優しいように見えたのですが、終盤になると狂気の本性を現すという。
旧友のユーリ・ケラーネ少将を謀殺したことは、まだわからなくもないのですよ。ユーリ自身が厚かましい性格だった上に、アプサラス計画を完全に妨害しようとしていたので。友人ではあっても、実の所はそんなに好きではないという描写も作中では見られましたし。謀殺の際にユーリの部下を巻き込んだのは、坑道を爆破するという手法上避けられず、また謀殺のことを追求されないためにも必要だったからでしょう。
問題は、アプサラス開発に従事していた自分のスタッフまで毒殺した上で証拠隠滅に爆破したことです。こっちについては、まったく正当化できる理由が無いのですよ。それこそ、サブタイにいただいたギニアス本人の妄執だけが原因という。
アイナに対しても、シローとの関係を疑った上に、そのシローの理想に感化された様子を見て不信感を抱いていたようです。勝手に休戦をもちかけたアイナの思いを無視して連邦軍を一方的に攻撃し、それを邪魔しようとしたアイナに対しても「嫌いではなかった」とか言いつつ自ら射殺しようとします。まあ、結果的には殺せていなかったのですが、完全に殺意はありました。
ただ、これはシスコンやマザコンの裏返しかなとも思ったり。セリフの中で、母親が自分たちを裏切って男に走ったことを罵り、「愛など粘膜の作り出す幻想」と吐き捨てています。アイナがシローとの恋愛を経験して自分の考えに従わなくなったことを、自分を裏切った母親に重ねていたのかなと思います。
このギニアスの妄執の影には、病弱で余命いくばくもないという本人の体の事情もあったとは思いますが、それにしても狂い方がひどいという。
もっとも、ガンダムシリーズのラスボスには、こういう狂った連中が意外に多いんですよねえ。『F91』の鉄仮面カロッゾとか、『Vガン』のカガチとか。そいつらに比べるとスケールは小さい方かなと思います。
最初に見たときは監督交代でキャラがブレたのかなとも思ったのですが、当エッセイを書いているうちに、初期段階から「実は最初から狂っていたのを上手く隠しているキャラ」として造形されていたのかなとも思えるようになりました。
不思議なのは、サハリン家って没落した割には力がありそうだということです。没落したので、その再興のためにジオン勝利の切り札となるアプサラス計画を推進しているという設定なのですが、それでアプサラス計画みたいなのを独断で全部切り回せるだけの開発拠点や戦力を持っているという。
何で東南アジア――あるいは最終回あたりの描写だと中央アジアに近いのかもしれませんが――なんかに開発拠点を設けていたのかというのは多少疑問があったりするのですが、それでも結構な開発拠点を持っていたり、その動力源としてザンジバル級巡洋艦「ケルゲレン」を使えたりと、なかなか優遇されているんじゃないかという感があるんですよ。
まあ、技術少将という階級を持っていますし、デギン公王の肝いりの計画ということで軍内部でも優遇されていた可能性はあるんですが。そういうデギン公王とのコネクションも含めて名家ということなのかもしれませんけど。それにしても「没落」という割には困窮している感じが無さそうなんですよねえ。
声優は速水奨で、あの渋めの美形ボイスで、理知的で物静かな青年から狂気の破壊者に変貌する役を見事に演じ切っています。マクロスのマックスはもとより、勇者シリーズとトランスフォーマーでの出番が多いのですが、意外にガンダムシリーズへの登場は少ないと思っていたら、前に書いた陸戦型ガンダムが元の「ブルーディスティニー」が出てくるゲームのライバルキャラであるニムバス・シュターゼンを演じていました。あれも狂気系のキャラだったなあ。あと『Seed』の外伝OVAと『鉄血のオルフェンズ』にも出演しているみたいですね。
さて、そのギニアスの忠実な部下……というよりは、事実上はサハリン家の私的な家臣と思えるのが、副司令官格のノリス・パッカード大佐です。
この人、かなりの苦労人です。何しろ上司のギニアスがアプサラス開発にしか興味がないので、ほかのことは全部この人がやっているという。
なので、部隊の指揮は当然なのですが、パイロットも足りないのか、はたまた本人が現場に出ることを好むタイプなのか、自らザクに乗って出撃するどころかドップに乗ってたことすらあります。
ザクやドップに乗って出撃したときは攻撃で損傷を受けて撤退もしていますが、逃げ切れているので本人の腕は悪くない……なんて思っていたら、最後の最後の出撃でグフ・カスタムに乗って出撃した戦いで大化けしました。
鬼神もかくやという大暴れで事実上の無双状態。前にも書いたように、ヒートロッドのワイヤーを上手くつかって空中戦を演じ、上手く対応できない連邦軍の航空機部隊に対して「重力に縛られおって」とうそぶく姿はムチャクチャカッコ良かったのですよ。
圧倒的に不利な状況でありながらも単機で勇戦し、作戦目的である「ケルゲレン脱出の援護」のための最優先事項である量産型ガンタンク撃破を最優先するという。そのためシローたちを圧倒しながらも最後は討ち取られますが、ガンタンクは全機撃破に成功し、本人的には作戦目的を達成した状態で「勝ったぞ!」と叫びながら散りました。
顔はゴツくて恐いのですが、民間人に対する物腰は丁寧で礼節を重んじており、プロの軍人かくあるべし、というような非常にカッコ良いオッサンでした。
それだけでなく、アイナの恋愛についても「私とて木の股から生まれたわけではない」などと言って理解を示すなど、本当に大人の男として魅力的なキャラなんですよ。
ライバル格のエースパイロットとして非常に印象に残るキャラだったからか、このあとのゲームでは大抵は非常に強力なパイロットとして登場することが多いようです。『ギレンの野望』でも随分お世話になったなあ(笑)。
声優は、「ミスター美形悪役」市川治です。おっさんキャラではありますが、顔以外は美形ライバル並みのカッコ良いキャラなので、非常に似つかわしい人選だったのではないかなと思ったり(笑)。
さて、次は08小隊の面々について語りたいと思います。
前にも書きましたが、この人の変貌ぶりはすさまじいのですよ。序盤は病弱ながらサハリン家の再興のために努力している人で、実妹であるアイナにも優しいように見えたのですが、終盤になると狂気の本性を現すという。
旧友のユーリ・ケラーネ少将を謀殺したことは、まだわからなくもないのですよ。ユーリ自身が厚かましい性格だった上に、アプサラス計画を完全に妨害しようとしていたので。友人ではあっても、実の所はそんなに好きではないという描写も作中では見られましたし。謀殺の際にユーリの部下を巻き込んだのは、坑道を爆破するという手法上避けられず、また謀殺のことを追求されないためにも必要だったからでしょう。
問題は、アプサラス開発に従事していた自分のスタッフまで毒殺した上で証拠隠滅に爆破したことです。こっちについては、まったく正当化できる理由が無いのですよ。それこそ、サブタイにいただいたギニアス本人の妄執だけが原因という。
アイナに対しても、シローとの関係を疑った上に、そのシローの理想に感化された様子を見て不信感を抱いていたようです。勝手に休戦をもちかけたアイナの思いを無視して連邦軍を一方的に攻撃し、それを邪魔しようとしたアイナに対しても「嫌いではなかった」とか言いつつ自ら射殺しようとします。まあ、結果的には殺せていなかったのですが、完全に殺意はありました。
ただ、これはシスコンやマザコンの裏返しかなとも思ったり。セリフの中で、母親が自分たちを裏切って男に走ったことを罵り、「愛など粘膜の作り出す幻想」と吐き捨てています。アイナがシローとの恋愛を経験して自分の考えに従わなくなったことを、自分を裏切った母親に重ねていたのかなと思います。
このギニアスの妄執の影には、病弱で余命いくばくもないという本人の体の事情もあったとは思いますが、それにしても狂い方がひどいという。
もっとも、ガンダムシリーズのラスボスには、こういう狂った連中が意外に多いんですよねえ。『F91』の鉄仮面カロッゾとか、『Vガン』のカガチとか。そいつらに比べるとスケールは小さい方かなと思います。
最初に見たときは監督交代でキャラがブレたのかなとも思ったのですが、当エッセイを書いているうちに、初期段階から「実は最初から狂っていたのを上手く隠しているキャラ」として造形されていたのかなとも思えるようになりました。
不思議なのは、サハリン家って没落した割には力がありそうだということです。没落したので、その再興のためにジオン勝利の切り札となるアプサラス計画を推進しているという設定なのですが、それでアプサラス計画みたいなのを独断で全部切り回せるだけの開発拠点や戦力を持っているという。
何で東南アジア――あるいは最終回あたりの描写だと中央アジアに近いのかもしれませんが――なんかに開発拠点を設けていたのかというのは多少疑問があったりするのですが、それでも結構な開発拠点を持っていたり、その動力源としてザンジバル級巡洋艦「ケルゲレン」を使えたりと、なかなか優遇されているんじゃないかという感があるんですよ。
まあ、技術少将という階級を持っていますし、デギン公王の肝いりの計画ということで軍内部でも優遇されていた可能性はあるんですが。そういうデギン公王とのコネクションも含めて名家ということなのかもしれませんけど。それにしても「没落」という割には困窮している感じが無さそうなんですよねえ。
声優は速水奨で、あの渋めの美形ボイスで、理知的で物静かな青年から狂気の破壊者に変貌する役を見事に演じ切っています。マクロスのマックスはもとより、勇者シリーズとトランスフォーマーでの出番が多いのですが、意外にガンダムシリーズへの登場は少ないと思っていたら、前に書いた陸戦型ガンダムが元の「ブルーディスティニー」が出てくるゲームのライバルキャラであるニムバス・シュターゼンを演じていました。あれも狂気系のキャラだったなあ。あと『Seed』の外伝OVAと『鉄血のオルフェンズ』にも出演しているみたいですね。
さて、そのギニアスの忠実な部下……というよりは、事実上はサハリン家の私的な家臣と思えるのが、副司令官格のノリス・パッカード大佐です。
この人、かなりの苦労人です。何しろ上司のギニアスがアプサラス開発にしか興味がないので、ほかのことは全部この人がやっているという。
なので、部隊の指揮は当然なのですが、パイロットも足りないのか、はたまた本人が現場に出ることを好むタイプなのか、自らザクに乗って出撃するどころかドップに乗ってたことすらあります。
ザクやドップに乗って出撃したときは攻撃で損傷を受けて撤退もしていますが、逃げ切れているので本人の腕は悪くない……なんて思っていたら、最後の最後の出撃でグフ・カスタムに乗って出撃した戦いで大化けしました。
鬼神もかくやという大暴れで事実上の無双状態。前にも書いたように、ヒートロッドのワイヤーを上手くつかって空中戦を演じ、上手く対応できない連邦軍の航空機部隊に対して「重力に縛られおって」とうそぶく姿はムチャクチャカッコ良かったのですよ。
圧倒的に不利な状況でありながらも単機で勇戦し、作戦目的である「ケルゲレン脱出の援護」のための最優先事項である量産型ガンタンク撃破を最優先するという。そのためシローたちを圧倒しながらも最後は討ち取られますが、ガンタンクは全機撃破に成功し、本人的には作戦目的を達成した状態で「勝ったぞ!」と叫びながら散りました。
顔はゴツくて恐いのですが、民間人に対する物腰は丁寧で礼節を重んじており、プロの軍人かくあるべし、というような非常にカッコ良いオッサンでした。
それだけでなく、アイナの恋愛についても「私とて木の股から生まれたわけではない」などと言って理解を示すなど、本当に大人の男として魅力的なキャラなんですよ。
ライバル格のエースパイロットとして非常に印象に残るキャラだったからか、このあとのゲームでは大抵は非常に強力なパイロットとして登場することが多いようです。『ギレンの野望』でも随分お世話になったなあ(笑)。
声優は、「ミスター美形悪役」市川治です。おっさんキャラではありますが、顔以外は美形ライバル並みのカッコ良いキャラなので、非常に似つかわしい人選だったのではないかなと思ったり(笑)。
さて、次は08小隊の面々について語りたいと思います。
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