燃えよ、ロボ魂!!

結城藍人

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第22話 機動戦士ガンダム その3 めぐりあい宇宙編

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 さてさて、ガンダム語りも3回目に突入です。サブタイトルは前回と同じく3ならこうだろうというヤツなので、意味はありません(笑)。

 前回、ザクについて「量産型」の先駆者としての偉大さについて語りましたが、それだけではありません。ザクは「強力なライバル」でもあるのです。

 そう「シャア専用ザク」です。緑色のザクの中で、唯一「赤い」ザク。と言っても、実際にはメインの色はピンク色だったりするんですが(笑)。当時販売されていたガンプラ専用カラーでも「シャアピンク」なんて呼ばれてたりしました……ってググってみたら、いまだに現役販売中かい!(笑) グンゼっていつのまにかGSIクレオスなんて名前に変わってたのね……

 のちのMSVでは「ジョニー・ライデン専用」なんて赤いザクも出てきますが、本編当時「赤い」というのはシャア専用のみ。特別な色だったんです。

 そして、強かった! ほかのザクがガンダムに一撃で粉砕される中、全然攻撃が「当たらない」ほど速い!!

 ターゲットスコープの中心線にとらえた赤い機影が、瞬時に横にスライドして消える演出こそ、シャア専用ザクの、ひいては「赤い彗星」と呼ばれるエースパイロット「シャア・アズナブル」の強さを象徴していたと言っても過言ではないでしょう。

 母艦ホワイトベースのオペレーターであるマーカーが「通常のザクの三倍のスピード」と言っているのは有名な話です。このあたり、のちに設定的に無理があるとして色々と解釈やツッコみが入るところではあるのですが、再放送で見ていた当時はそんなことは気にしておらず、「とにかく速い!」という風に理解していました。

 そう、あのシャアの名言のひとつ「当たらなければどうということはない!」を象徴している機体と言えます。

 凡百の機体とほぼ同じ外見(色と、角がついているところのみ違う)でありながら、異常に強い。それが「シャア専用ザク」の特色でした。

 これには痺れました。量産型としてカッコ良い存在が、さらに強くてカッコ良くなるんですから。

 それゆえにか、未だに「赤ければ速さは三倍」「赤くて角がついたら三倍」はネタとして使ってしまいます(笑)。

 この「専用機」という演出は、これ以降のリアルロボットアニメにおいて強敵の演出に頻繁に利用されることになります。その元祖として、シャア専用ザクの偉大さは決して損なわれることはないでしょう。

 また、のちにプラモデルのMSVという形で独自に多数の「バリエーション」が作られるという進化をとげるザクですが、そのバリエーションの萌芽ほうがはすでにアニメ本編の作中において見られました。「旧型ザク」の存在です。今日の設定では「ザクワン」と呼ばれており、通常の「ザク」の正式名称は「ザクツー」となっています。これらは後付設定で、再放送当時の大百科などの二次資料では「旧ザク」と呼ばれていたほか、プラモデルの名称も「旧型ザク」でした。なお、この名称は二次資料などでしか見られず、本編内での呼称はただの「ザク」で、普通のザクと特に区別されていませんでした。

 このデザインがまた素晴らしい。通常の「ザク」を象徴する「動力パイプ」「右肩の盾」「左肩のスパイク(トゲトゲ)」を「引いた」上に、モノアイ(赤いひとつ目)のゲージの中心に支え棒を追加するという演出によって、「旧型」感を出しています。見た目から、ザクと同一系統でありながら「古い」ということが分かる。

 そして、演出もまた良かったんです。これが出てくるのは第3話「敵の補給艦を叩け!」で、この回は「戦争」を描いたことによって初めて「補給」が必要だということをロボットアニメとして描いたというガンダムの偉大さを象徴する回でもあるのですが、そこで「補給部隊の作業用」として武器を持たずに登場するんです。シャアの「貴様のザクでは無理だ」というセリフと相まって、「旧型だから補給部隊の作業用でしかない」ということを演出している。

 このとき旧ザクに乗っていたのがガデムという初老の将校なのですが、ガンダムと戦うときの「素人め、間合いが遠いわ!」という名セリフも含めて、「歴戦の古豪だが、もう年を取ったので補給部隊に回っている」なんて裏設定があるんじゃないかと感じさせる雰囲気を持っていました。こういう「裏設定」みたいなことを想像させる余白を大量に残している演出こそ、ガンダムという作品において、のちに巨大な二次創作(サンライズやバンダイによるオフィシャルなものも含めて)が作り出されていく元になっているのかな、と思えます。

 さて、ザクについてだけでも長々と語ってしまいましたが、これ以外のジオン軍のモビルスーツ(以下MSと略記)もカッコ良かった!

 まずは何と言っても「グフ」。基本的なデザインラインはザクを継承していながら、全般的に鋭角的になったほか、肩のスパイクが伸びているなど、前に書いた「マジンガーからグレートへ」と同じ系統の「同系統でパワーアップ」という演出の原則にのっとったデザインになっています。先に書いた旧ザクの演出と真逆ですね。プラモデルでも「強化新型」と銘打たれて、パワーアップしたということを強調しておりました。

 そして、色は青。赤いシャア専用と同じく、緑のザクの中でひときわ目立つ色。それを駆るのは、これはまさしく歴戦の古豪の風格を感じさせるおとこランバ・ラル!

 その武器のヒートロッドはガンダムの装甲を痛めつけることができ、「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」とうそぶく強さは衝撃的でした。シャアの「当たらない」スピードによる強さの演出は、その一方でザク・マシンガンによる攻撃が効かないというガンダムの強さの演出も相まって、お互いに決め手に欠ける感がありました。それに対して、このグフとランバ・ラルのコンビは、明確に「ガンダムを倒しる」という強敵感があったんです。

 結局、何度かの対戦ののちにガンダムが勝利するのですが、その際も「モビルスーツの性能のおかげだ」と言い捨てるランバ・ラル。カッコ良いのですが、このため「グフの性能自体は大したことがない」という風にダウングレードしてしまいました(笑)。

 もっとも、シャア専用ザクとは違って、グフはこのあと量産されてワラワラと出てきては倒される、ザク並みのやられ雑魚ロボに堕してしまいます。

 しかし、この「量産されて出てくる」こそ、まさに「兵器」としてのMSを象徴している演出と言えるでしょう。そして、のちに雑魚に堕してしまうからこそ逆説的に「同じMSを駆りながらガンダムと互角に戦ったランバ・ラルの実力は本物」という、パイロットとしての強さの評価にもつながっていくことになるのです。

 ああ、グフまで書いただけで、もう二千五百字になってしまいました。残りのMSについては、また次回。

 君は生き残るついてくることができるか?(笑)
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