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第21話 機動戦士ガンダム その2 哀・戦士編
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さてさて、ガンダムの続きです。サブタイトルは単にガンダムで2だったらこれだろうって付けただけなので、特に意味はありません(笑)。
前回はガンダムはダサロボットだったという点について書きましたが、そこで魅力的なのは敵雑魚ロボの「ザク」だったと書きました。これについて異存がある方は少ないと思います(「いない」とは言いません)。
これが、巨大ロボアニメ史において燦然と輝くのは、「量産型」という概念をアニメに導入したことによるものです。それまでも、敵軍の雑魚戦闘機などはワラワラ出てきては、防衛軍の戦闘機部隊を圧倒するものの、主人公ロボが出撃すると今度は逆にバタバタ叩き落とされるというのが一種様式美のようになってはいました。
しかし、同じ型のロボが大量に出てきて、主人公ロボにバッタバッタとやられまくる、というのはありませんでした。この点だけをもってしても、ザクというのがいかに革新的だったか、ということが分かります。
なおことさら「アニメに」と書いたのは、グレートマジンガーの項で書いたように、既に漫画版グレートマジンガーにおいては量産型グレートというのが出てきていたからです。主人公ロボの量産というのは、アニメにおいては、このあとマクロス(あるいは二機だけという限定でも複数登場でよいなら同年のザブングルや一機だけ量産型が出てきたバクシンガー)に至るまで待たねばならないことを考えると、漫画版グレートマジンガーの革新性も際立つのですが、残念ながらそこまで有名じゃなかったという(笑)。復刻版が出るまで知りませんでしたから。
そして、ザクのデザインがまた、えらくカッコ良かった! これ、最初に見てたときは、全然その良さが分かりませんでしたが、ある程度大きくなったあとで見ると、めっさカッコ良い。
そして、それを支えたのがケレン味あふれる演出です。例えば、第1話でのザク・マシンガンの発射シーン。ドラム缶のように巨大な薬莢がマシンガンの側面から排莢されて飛び出し、主人公アムロのすぐ近くに落ちる。これが、めちゃくちゃ「リアリティ」があった。
さて、ここで注意すべきは「リアリティ」は「リアル」とは違うということです。設定上ザク・マシンガンの口径は百二十ミリ。その砲口径は自衛隊の九〇式戦車や一〇式戦車の主砲と同じです。そして、現在の大砲の薬莢は発射と同時に燃えて無くなり、底の部分しか残りません。あんな風にドラム缶サイズの薬莢が飛びだしてくる必要性は無いのです。「リアル」に考えるなら、あのシーンは変だということになります。
しかし、巨大ロボットアニメの演出として見るなら、あのシーンには「リアリティ」=「本当らしさ」があったんです。それまでの、原理不明でミサイルやビーム(というよりは破壊光線)を連発してくる怪獣ロボではなく、火薬の燃焼によって推進される運動エネルギーを持った砲弾を発射してくる「兵器」。
そして、それを象徴するキーワード「モビルスーツ」!
「機械獣」だの「円盤獣」だのという、それこそ名前からして「怪獣」の一種でしかなかった敵ロボに対して、人間が作った兵器であるということを主張するこの言葉こそ、巨大なパラダイムシフトを巨大ロボにもたらしたのでした。
これはまた、主人公ロボに対しても同じ効果がありました。兵器である以上「必殺技」は無い。だから、ガンダムは「ビームライフル」や「ハイパーバズーカ」という遠距離射撃武器や、「ビームサーベル」という近接格闘武器を持つだけで、「○○剣××斬り」のような必殺技はありません。
もっとも、実のところマジンガーやゲッターの武器はそれぞれ強力なだけで、特に必殺武器ではなかったのが、グレートやゲッターGになって「必殺技」を持つように変わっていったので先祖返りと言えないこともないのですが。
ともあれ、敵も味方もモビルスーツという兵器で戦う「戦争」。それがガンダムのもたらした新しい巨大ロボの世界であり、だからこそ、ガンダムはこれ以降雨後の筍のごとく搭乗するリアルロボットの嚆矢だと言えるでしょう。それが、一般的な見解かと思います。
しかし、ここで「ガンダム」については、あえて異を唱えたいところです。ガンダムは確かにリアルロボットの先駆けですが、のちに言われる「リアルロボット」かというと、実のところ多分にスーパーロボットとしての存在感を持っているのです。特にTVアニメ版においては、それが顕著です。
第一に、敵ロボ「ザク」の攻撃(ザク・マシンガン)を跳ね返す強靱な装甲。ルナ・チタニウム合金(のちにガンダリウム合金と改称される)という「超合金」製なんです。
第二に、強力な武装。敵ロボ「ザク」を一撃で撃破する「戦艦並みのビーム砲」。確かに先に「ビームライフル」は「武器」「兵器」であって「必殺技」ではない、と書いたのですが、実質的には敵を一撃必殺で倒す「必殺武器」でもあったんです。
そして第三に、ガンダムは「主人公の父親の博士が開発したロボ」だったりもするんです。スーパーロボットのフォーマットの上にあったりするんです。
以下余談。このことをプロレスに例えるなら「ガンダムはアントニオ猪木である」と言えるかなあ、なんて思ったりします。猪木というのは異種格闘技戦などで、のちの総合格闘技につながるファイトを行ったんですが、本質的には従来型のプロレスラーでした。猪木のファイトに魅せられた弟子たちが、リアルファイト志向に進んでUWFを作り、さらに総合格闘技へと進んで行きます。私は「リアルロボ」はUWFに例えられると思っています。そういう意味で、アントニオ猪木はU系レスラーではなく、あくまで在来型のレスラーだった。同様に、ガンダムはリアルロボではなく、在来型のスーパーロボの中でリアル志向の強い存在だった、と。閑話休題。
なお、こうした「ガンダムはスーパーロボ」説は別に私の独創ではなく、以前からネット上で同じ説は唱えられています。で、こういう「ガンダムはスーパーロボ」論者は大抵『機動武闘伝Gガンダム』が好きだったりします(笑)。
さて、ガンダムとザクについて語っただけで二千五百字を超えてしまいましたので、今回はここまで。まだまだ続きますよ。
君は生き残ることができるか?(笑)
前回はガンダムはダサロボットだったという点について書きましたが、そこで魅力的なのは敵雑魚ロボの「ザク」だったと書きました。これについて異存がある方は少ないと思います(「いない」とは言いません)。
これが、巨大ロボアニメ史において燦然と輝くのは、「量産型」という概念をアニメに導入したことによるものです。それまでも、敵軍の雑魚戦闘機などはワラワラ出てきては、防衛軍の戦闘機部隊を圧倒するものの、主人公ロボが出撃すると今度は逆にバタバタ叩き落とされるというのが一種様式美のようになってはいました。
しかし、同じ型のロボが大量に出てきて、主人公ロボにバッタバッタとやられまくる、というのはありませんでした。この点だけをもってしても、ザクというのがいかに革新的だったか、ということが分かります。
なおことさら「アニメに」と書いたのは、グレートマジンガーの項で書いたように、既に漫画版グレートマジンガーにおいては量産型グレートというのが出てきていたからです。主人公ロボの量産というのは、アニメにおいては、このあとマクロス(あるいは二機だけという限定でも複数登場でよいなら同年のザブングルや一機だけ量産型が出てきたバクシンガー)に至るまで待たねばならないことを考えると、漫画版グレートマジンガーの革新性も際立つのですが、残念ながらそこまで有名じゃなかったという(笑)。復刻版が出るまで知りませんでしたから。
そして、ザクのデザインがまた、えらくカッコ良かった! これ、最初に見てたときは、全然その良さが分かりませんでしたが、ある程度大きくなったあとで見ると、めっさカッコ良い。
そして、それを支えたのがケレン味あふれる演出です。例えば、第1話でのザク・マシンガンの発射シーン。ドラム缶のように巨大な薬莢がマシンガンの側面から排莢されて飛び出し、主人公アムロのすぐ近くに落ちる。これが、めちゃくちゃ「リアリティ」があった。
さて、ここで注意すべきは「リアリティ」は「リアル」とは違うということです。設定上ザク・マシンガンの口径は百二十ミリ。その砲口径は自衛隊の九〇式戦車や一〇式戦車の主砲と同じです。そして、現在の大砲の薬莢は発射と同時に燃えて無くなり、底の部分しか残りません。あんな風にドラム缶サイズの薬莢が飛びだしてくる必要性は無いのです。「リアル」に考えるなら、あのシーンは変だということになります。
しかし、巨大ロボットアニメの演出として見るなら、あのシーンには「リアリティ」=「本当らしさ」があったんです。それまでの、原理不明でミサイルやビーム(というよりは破壊光線)を連発してくる怪獣ロボではなく、火薬の燃焼によって推進される運動エネルギーを持った砲弾を発射してくる「兵器」。
そして、それを象徴するキーワード「モビルスーツ」!
「機械獣」だの「円盤獣」だのという、それこそ名前からして「怪獣」の一種でしかなかった敵ロボに対して、人間が作った兵器であるということを主張するこの言葉こそ、巨大なパラダイムシフトを巨大ロボにもたらしたのでした。
これはまた、主人公ロボに対しても同じ効果がありました。兵器である以上「必殺技」は無い。だから、ガンダムは「ビームライフル」や「ハイパーバズーカ」という遠距離射撃武器や、「ビームサーベル」という近接格闘武器を持つだけで、「○○剣××斬り」のような必殺技はありません。
もっとも、実のところマジンガーやゲッターの武器はそれぞれ強力なだけで、特に必殺武器ではなかったのが、グレートやゲッターGになって「必殺技」を持つように変わっていったので先祖返りと言えないこともないのですが。
ともあれ、敵も味方もモビルスーツという兵器で戦う「戦争」。それがガンダムのもたらした新しい巨大ロボの世界であり、だからこそ、ガンダムはこれ以降雨後の筍のごとく搭乗するリアルロボットの嚆矢だと言えるでしょう。それが、一般的な見解かと思います。
しかし、ここで「ガンダム」については、あえて異を唱えたいところです。ガンダムは確かにリアルロボットの先駆けですが、のちに言われる「リアルロボット」かというと、実のところ多分にスーパーロボットとしての存在感を持っているのです。特にTVアニメ版においては、それが顕著です。
第一に、敵ロボ「ザク」の攻撃(ザク・マシンガン)を跳ね返す強靱な装甲。ルナ・チタニウム合金(のちにガンダリウム合金と改称される)という「超合金」製なんです。
第二に、強力な武装。敵ロボ「ザク」を一撃で撃破する「戦艦並みのビーム砲」。確かに先に「ビームライフル」は「武器」「兵器」であって「必殺技」ではない、と書いたのですが、実質的には敵を一撃必殺で倒す「必殺武器」でもあったんです。
そして第三に、ガンダムは「主人公の父親の博士が開発したロボ」だったりもするんです。スーパーロボットのフォーマットの上にあったりするんです。
以下余談。このことをプロレスに例えるなら「ガンダムはアントニオ猪木である」と言えるかなあ、なんて思ったりします。猪木というのは異種格闘技戦などで、のちの総合格闘技につながるファイトを行ったんですが、本質的には従来型のプロレスラーでした。猪木のファイトに魅せられた弟子たちが、リアルファイト志向に進んでUWFを作り、さらに総合格闘技へと進んで行きます。私は「リアルロボ」はUWFに例えられると思っています。そういう意味で、アントニオ猪木はU系レスラーではなく、あくまで在来型のレスラーだった。同様に、ガンダムはリアルロボではなく、在来型のスーパーロボの中でリアル志向の強い存在だった、と。閑話休題。
なお、こうした「ガンダムはスーパーロボ」説は別に私の独創ではなく、以前からネット上で同じ説は唱えられています。で、こういう「ガンダムはスーパーロボ」論者は大抵『機動武闘伝Gガンダム』が好きだったりします(笑)。
さて、ガンダムとザクについて語っただけで二千五百字を超えてしまいましたので、今回はここまで。まだまだ続きますよ。
君は生き残ることができるか?(笑)
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