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第三章 

不満があります!②

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 付き合い出してから気がついたんだけど、先輩は意外と自己評価が低い。今ももしかしたら別れ話を切り出されると思ったのかもしれない。
 もう、そんなはずないのに。

 こんな顔をさせてしまったあとに言うのはとても気まずいんだけど、私は思い切って言ってみた。

「もっとイチャイチャしたいです!」
「はあ?」

 完全に想定外だったようで、先輩は目を丸くした。
 びっくり目の先輩もかわいい。

「今しているのはイチャイチャじゃないのか?」

 しがみついたままの私を見下ろして、先輩が真顔で聞いてくる。

「だって、いっつも私が抱きつくだけで、先輩はなにもしてくれないじゃないですか!」

 拗ねたように言ってから、さすがに恥ずかしくなって、先輩の胸に顔をうずめた。

 先輩は最初にキスしてくれただけで、あとは手を繋ぐ以外は自ら私にふれてくることはほとんどなかった。
 私が抱きつくと受け止めてはくれるけど、頬や頭にキスを落とすだけで、すぐ離そうとする。

 そんなに私が好きじゃないのかなとも思ったけど、甘い瞳に見つめられると、ちゃんと好きでいてくれているのは伝わってくる。
 でも、好きで好きで仕方がなくて、先輩にふれたい、くっつきたいと思っているのは私だけなのかなって、ちょっとさみしくなってきたのだ。

 それに、私より深く先輩を知っている人がいる……。
 考えないようにしているけど、ふとした拍子に切なくなる。
 私が色気がないからその気にならないのかな、なんて思ってしまう。

「お前な……、俺が手を出すっていうのはどうなるのかわかってて言ってるのか?」

 呆れた声の遥斗先輩が、またやんわりと私の身体を引き剥がそうとする。それに逆らってギュッとしがみつく。

「どうなるんですか?」

 身体を離すのをあきらめて、先輩は、ハァーッと溜め息をついた。そして、私の髪を弄びながら、言った。

「鍵のかかった部屋に男と二人きりで密着して、なにされても文句言えないんだぞ? わかっているのか?」
「先輩ならなにされてもいいですよ?」
「また、そういう無防備なことを言う……」

 先輩はおもむろに私の顎を持ち上げ、口づけた。角度を変えて何度も何度もキスをして、そのうち口を合わせて吸いついた。
 息が苦しくなって、唇を開くと、先輩の舌が入り込んできて、ビクリと身体が反応する。
 
「んんっ……、んっ、んっ……」

 甘ったるい声が漏れて、自分でびっくりする。
 口の中に溜まってきた唾液をごくんと呑み込むと、先輩が褒めるように指で頬をなでてくれる。

 ガクッ

 膝が崩れ落ちそうになって、先輩が抱きとめてくれた。
 たっぷり吸いつかれて、酸欠でクラクラして、もう限界と思ったとき、ようやく唇が解放された。
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