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第三章 

私の魅力③

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 そんな存在と付き合ったり、まして抱いたりなんて気にならないよね。
 
 怒ったような先輩の声。
 
 知ってた。でも、聞きたくなかった。
 聞かなきゃよかった。

 私は踵を返して、トボトボと引き返した。



「………お前、またかよ。今度はどうしたんだ?」

 呆れたような声に引き止められた。
 目を上げると、森さんだった。

 タオルで頬を拭われた。

「森さん……」

 呆れた声の割には優しい目をした森さんがいた。

「どうせ、久住のことなんだろ? 言ってみろよ」

 そう言われて、つい、ぽろっと漏らしてしまう。

「私って魅力ないのかな?」

 想定外の問いだったのか、森さんが目を泳がせた。
 そんなこと言われても困るよね。

「ごめんなさい! 変な質問して。忘れてください」

 まるで魅力があるって言ってほしいような問いをして、恥ずかしい。
 なのに、森さんは視線を戻して言ってくれた。

「………お前はかわいいよ」

 優しいなぁ。
 いつもかわいいまでは言ってもらえるだよね。でも、それ止まり。
 はぁっと溜め息をついて、愚痴のようにこぼす。

「違うんです。女としての魅力がないのかなって思って」

 へにゃりとごまかし笑いをすると、森さんは突然ぐいっと腕を掴んで言った。

「言わせたいのか?」
「えっ?」
、言わせたいのか?」

 ふいに森さんがすごく近くにいるのに気がつく。
 急に見せられた熱い瞳に驚く。

 森さんは男の人だ。お兄ちゃんじゃない。
 当たり前のことに、いまさら気づく。

「お前、俺が女として惹かれてるって言ったら、どうするつもりだ?」

 重ねて問われて、息を呑む。

「ご、ごめんなさい………」

 うろたえて言うと、森さんは溜め息をついて、手を離した。

「もっと考えてからものを言え。それに無防備すぎる。気をつけろ」
「…………ごめんなさい」

 森さんはふっと表情を変えて、くしゃくしゃと私の頭をなでた。そして、いつものように、にやっと笑う。

「久住に疲れたら、俺のところに来い。ベタベタに甘えさせてやる」

 すごく甘い瞳で言われて、ばっと赤くなる。

 なんて答えていいのか、わからない。
 困っていると、森さんがまた笑って、「じゃあ、またな」と手をあげて去っていった。

 呆然として、その姿を見送った。




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