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第三章 

誤解しちゃうよ?③

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「大した話じゃないんだよ?」

 しぶしぶ一昨日のことを話す。

「だから、遥斗先輩は庇ってくれただけなの」
「えー! なにそれ、ときめくー! 本当に庇っただけなのかな?」
「うん、それだけだよ。遥斗先輩も付き合うとかあり得ないって言ってたし」

 また自分で言って、ショックを受ける。

「えぇー! そんな話までしてるの?」
「違う違う! 先輩が付き合ってるフリをしたら、この騒動が収まるかなって言うから、私が先輩と付き合ってるなんてあり得ないって言って、先輩もそうだよなって……」
「もう、なんであり得ないとか言うの?」
「だって、先輩と釣り合うわけないもん」
「なんで?」
「だって、あんな素敵すぎる人が私なんて……」

 言っててむなしい。この頃、散々言われている。
 かわいくない。ちび。ブス。ちんくしゃ。

 その通りだもん。
 遥斗先輩にも色気がまったくないって言われたし。

「どうしたの、優? 前向きで元気が取り柄なのに」
「逆にそれしかないし」
「最近言われてる悪口を気にしてるの? あんなの無視したらいいのに。優は十分かわいいよ? 遥斗先輩だって、きっとそう思ってるよ。だから、庇ってくれてるんだろうし」

 さやちゃんが頭をなでて慰めてくれる。

「う……ん、そういえば、先輩にもかわいいとは言われたけど、それは子どもみたいとか、そういう感じだし」
「えぇー、かわいいとか言われてるの!? 男の人がそんな理由でかわいいとか言わないでしょ?」
「でも、遥斗先輩はなんか常人とは感性が違うというか……」
「そうなのかなぁ」
「だって、色気がないって爆笑されるぐらいなんだよ?」
「うーん、なんとも言えないね。でも、脈なしではないと思うよ? 頑張ってみたら?」
「先輩はそういうの嫌いだと思うし、どう頑張ればいいか、わかんないよ」

 途方に暮れてさやちゃんを見上げると、「かわいいっ」と抱きしめられた。

「優は今のままでかわいいから、やっぱりなにもしなくていいよ。女の私でもこうしたくなるぐらいだから」
「もう、なにそれ」

 さやちゃんが笑って、つられて私も笑った。なんか元気をもらった。



 それから、遥斗先輩のあまりの塩対応が話題になった。
 私も居合わせたことがあるけど、氷点下の眼差しで見下され、「迷惑だ。来るな」バタンッとドアを閉められる。取り付く島もないとはこのことだと思った。
 あれをやられると、私だったら心が折れる。

 憤慨している子もいたけど、それすらだんだん語られなくなって、なにごともなかったかのような日常が戻ってきた。

 先輩の塩対応すごい……。


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