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第三章 

どうしよう?①

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 翌日「おはよー」と教室に入る。
 学校に来て、部室に寄らないなんて久しぶりだから、なんだかとてももの足りない。

 遥斗先輩、朝ごはんをちゃんと食べたかな……?

 菜摘ちゃんが寄ってきて「おはよー。もうお腹は大丈夫?」と言ってくれるから、「うん」と頷きながら、後ろめたい気持ちになる。

「あれ? 優、もしかして隠しごと?」

 あっさり菜摘ちゃんにバレる。

「ごめーん。あとで相談していい?」
「もちろんよ! どーんと来い!」

 そう言って胸を叩くので、私は吹き出した。

「ありがとー。頼りにしてるよ」

 菜摘ちゃんはにっこり微笑んだ。




「それで今度は遥斗先輩となにがあったの?」
 
 お昼休み、私の相談のために、菜摘ちゃん、さやちゃんと屋上でお弁当を広げていた。
 屋上にはチラホラと人影はあったけど、教室のように誰がなにを聞いているかわからない状態ではない。

 今の時期は、日差しもきつくないし、そよ風が吹いて、屋外でお弁当を食べるのに一番心地いい季節だった。

 遥斗先輩と初めて会ったときはまだ肌寒かったくらいだったなぁ。
 だいぶ昔のようだけど、まだ1ヶ月しか経っていないことに驚く。


 菜摘ちゃんの言葉に、「遥斗先輩のことって言ってないのに」と言うと、さやちゃんが「えっ、違うの?」と逆に驚いている。

「違わないけど……」
「やっぱりそうじゃん!」

 そんなに遥斗先輩のことばかり言ってるかな……? 言ってるね。考えたら、この1ヶ月、遥斗先輩で埋め尽くされているかも。今だって思い浮かべていたし。
 なんか恥ずかしい。

「で、どうしたの?」

 菜摘ちゃんが再度尋ねてきて、私は物思いから戻って、経緯を話した。

 部室から帰るところで、野球部員に絡まれたこと、森さんに助けられて噂になっていると注意されたこと、遥斗先輩からもう来るなと言われたこと、真奈美先輩が言っていたこと。

「えぇー、そんなことあったの!」
「野球部員こわーい!」
「でも、その森さんって人は助けてくれたんでしょ?」
「そっか。でも、なにもなくて、よかったね。優、そういうときは走って逃げるんだよ。それこそ、部室に戻ったら遥斗先輩がいるんだし」

 さやちゃんがお母さんみたいに言った。
 それに頷きながら、「本当に噂になってるのかな?」と聞くと、二人は首を傾げた。

「私は聞いたことがないなぁ」
「私もー。でも、そもそも1年には遥斗先輩の存在自体が知られてないからかも。2年では噂になっているのかな?」
「そういえば、森さんも2年だし、野球部員の人も同級生っぽかった」
「そっかぁ」

 まだそんなに噂は広まっていないみたいで、ホッとする。

「それで優はどうしたいの?」

 改めて菜摘ちゃんに聞かれて、キョトンとする。

「へっ?」

 思わず、間抜けな声が出てしまった。
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